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77話 大型魔道武器 

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 大砲の形をした、レガロ伯爵家の大いなる遺産、大型の魔道武器をながめ…

「ふむ… なるほどなぁ… 魔法の開発が進む前に、武器の主流だった火薬を使って、球を打ち出す武器の応用か… 面白い!」 

「殿下… 魔石にためた魔力を、砲弾ほうだんにして打ち出すようですね…? 砲身後部にこぶしだいの魔石が12個もはめられている! 魔石を同時にいくつも使えば、魔石の純度の差が出て魔力の流れが乱れて不安定になり暴発しそうだが… この武器はその問題を解決したというのか?」 

 王太子アニマシオンとグランデは、大砲の周囲をぐるりとまわり2人で意見を交わしていた。

 付いて来た護衛の白騎士と、黒騎士たちも壁際に立ち、興味津々きょうみしんしんでながめている。



「何て大きいのだろう?」
 武器の存在を見つけた功労者こうろうしゃのアスカルは、石壁の封印が解け、大砲があらわれたとたん、その大きさに驚き… そして畏怖いふを感じていた。

<恐ろしくて… 大砲に近づくことが出来ないよ…>
 先祖の手記をすみから隅まで読み、アスカルは武器がどのようなものか、実物を見つける前から、だいたいのことを知っていた。

 武器を封印して隠した、5代目レガロ伯爵ハルディンが、200年後の当主… つまりグランデにあてて残した魔法文字…

『直系の血をひくレガロ伯爵が、責任を持って、使用を許可する』

 という… 石壁の封印に込められた警告の真の意味を、アスカルは実物を見て理解する。

<4代目伯爵のカベサ様は、魔獣と魔王への憎悪と復讐心からこの武器を開発したけど… 5代目のハルディン様は、完成した武器があまりにも強力過ぎて… 脅威きょういを感じていた>

 厳しい表情のグランデが砲身ほうしんを見つめているのに対して、王太子アニマシオンは瞳を輝かせて、笑みを浮かべていた。

 2人の対照的な表情を見つめている内に、アスカルは背筋が寒くなる。 

<5代目のハルディン様は、この武器が魔王討伐以外に使用されるのではないかと恐れていた… 例えば隣国の民に向けてだとか… 他国を侵略しんりゃくする戦争に使われるのではないかと… 手記でその危険を指摘していた>


 大砲の下部から、魔石がはめこまれた楕円だえん形の金板をグランデが外し魔力を流すと… 封印の石壁にあったものと同じ形の魔法陣が空中で輝き、ふわりと魔法文字へと変化した。

 大砲の取り扱い説明書である。


 渋い顔で見つめるグランデの横から、王太子アニマシオンと騎士たちは、はしゃいだ様子でながめている。

 アスカルの養父ペスカドでさえ、珍しいものを見つけた子どものように、瞳を輝かせていた。


 緊張で顔を強張らせたアスカルだけが、目の前の魔道武器ではなく… 武器を見てはしゃぐ者たちの顔を、1人1人冷静に観察した。

 愛する夫グランデは、5代目のハルディンの意志を尊重し、人に向けることは無いだろうと… アスカルは信頼している。


 …だが、夫グランデ以外の者たちに対しては… アスカルは、警戒を解くことが出来ずにいた。






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