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67話 跡継ぎ問題
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当主の部屋のベッドにそっと下ろされ、アスカルは来ている服を全て脱ぐと、手首のオメガ用抑制リングを外して、ベッド脇のテーブルに置き…
素早く上掛けの下に潜り込み、アスカルはベッドの中から寝支度を整えるグランデを、うっとりとながめた。
部屋のすみのいつもの場所に、剣を立て掛けて置き、騎士服を脱ぐ。
水差しから洗面器に水を注ぎ顔を洗い、布を濡らして身体を綺麗に清め、魔獣の匂いをぬぐい去る。
<先に幻鳥で連絡をくれていたら、僕が湯あみの用意をしておいたのになぁ… 僕が眠っていると思って、グランデ様はそうしなかったんだね? 今から湯を用意していたら、眠る時間が無くなってしまうしなぁ… >
昼間のうちに湯あみをすませていたアスカルは、惚れ惚れとするグランデの逞しい裸体を熱心にながめながら、効率的な湯あみの方法について考えた。
<ああ、そうだ! 少し高くつくけど、お湯を湧かす魔道具を買おう! グランデ様の貴重な時間を無駄にするよりは、ずっと良いしね! 前もって風呂桶に水を入れて寝室に用意しておき、使う時にグランデ様か僕が魔道具で湯を沸かして使う! それならグランデ様も好きな時に湯あみができるし!>
使用人たちは魔法が使えないベータで、魔道具を扱えないため…
普段は湯を沸かすのに、火を使っている。
「うん、そうしよう!!」
<いっぱいグランデ様に抱かれた後も、どろどろになった身体を、真夜中でも2人で洗いっこしたら、楽しそうだしね! ふふふっ…>
全裸のままベッドに入ったグランデに、ニコニコと上機嫌でアスカルはペタリとくっ付こうとするが… なぜかまた腰をつかまれ、グランデにグイィーッ… と押し返された。
「グランデ様…?」
「ああ、いや! アスカル… お前はその… そろそろ、止めた方が良くないか?」
「何をですか?!」
「つまりオレが… お前を抱くことをだな…」
「…っあ! 今夜はもう、休みたいのですね? すみません… 魔獣討伐の後だから、いつものようにグランデ様は気が立っていて、心の昂ぶりを抑えるのに、僕を抱きたがるかと思っていたので…」
アスカルの本格的な発情期は、まだ先だが…
番のアルファ・フェロモンで誘惑されれば、オメガは一時的に発情してしまうのだ。
アルファは気に入った相手がいれば、何時でも発情できるため、グランデは魔獣討伐を終えて帰宅すると、必ずアスカルを熱烈に求めて誘惑し、ベッドへ連れ込むのだった。
「オレは休みたいわけではなくて… だな… ええ~とぉ…」
頬を赤らめグランデはアスカルから、スッ… と視線をそらす。
「お疲れなのに… 浮かれてしまって、すみませんグランデ様! 僕に構わず眠って下さい!」
<ううっ… 恥ずかしい! 僕のバカ、バカ! そうだよ、グランデ様は5日ぶりに帰宅したのに、ゆっくりと休みたいに決まっているよ! それなのに僕ってば… 疲れているのなら、今すぐ眠らないと… もうすぐ朝になってしまうし!>
顔どころか胸まで真っ赤に染めて、アスカルはしょんぼりと顔を伏せた。
「いや違う! オレは昼間、仮眠をとったから大丈夫だ! それよりもアスカル、お前の身体の方が… その、色々と問題があるのでは… 無いかと?」
「僕の身体…?!」
「んんん~っ… つまりだな…」
困った顔で唸りながら、グランデはアスカルの平らな下腹をなでた。
「グランデ様?」
「いや… この前の発情期で、オレはその… お前を何が何でも手に入れる気だったから… 子どもを孕ませようとだな… あふれるほどオレの種をお前の中に注いで… ああ、その… 避妊をしなかったから… うう~ん… すまない!」
「…あれ?! 言ってませんでしたか? 魔獣に襲われ、僕の抑制リングが壊れた時、神官様の奥方様に打撲傷の治療を受けたついでに、僕が望まない妊娠をしないようにと、避妊の魔法をかけてもらいました」
「・・・・・・」
パカリッ… とグランデは口を開けた。
「あ……」
<うわっ!! 避妊してること、僕はグランデ様に話してなかった?!>
「そうか、それなら妊娠の心配は無いな…」
フゥ―――ッ… と長いため息をつき、グランデは顔をゴシゴシとこすった。
「す… すみません、グランデ様! すっかり忘れてました! 結婚したら、とても忙しくなったので… 僕は跡継ぎの問題についても、何も考えていませんでしたし… そろそろ考えないと、いけませんね!」
「うん… わかっているアスカル、跡継ぎについてはオレもまだ考えてないから、気にするな… 昨日、部下にお前の自慢話をしたら揶揄われて、子供の話になって… その時オレは、お前の子ならきっと美しくて可愛い子が産まれるだろうなぁ… と少し想像しただけだ…」
虚空を見あげ苦笑いを浮かべたグランデに、罪悪感がわくアスカル。
「うわわっ~ あああ~… 本当にすみません、グランデ様! 今すぐ子作りしましょう?! ね? いっぱい子供、作りましょう?!」
<うわあぁ―――んっ!! 僕がグランデ様の先回りをして、気づかうと決めたばかりなのに… 思いっきりやらかしたぁ―――っ…!!>
ガバッ… と飛び起き、アスカルはあわてて上掛けをはねのけると、グランデの腰をまたいで、チュッ… チュッ… チュッ… と寂し気な顔にキスの雨を落とした。
「いや… 避妊の魔法を治療師に解いてもらうまでは、子作りは出来ないだろう? アスカル、無理をしなくても良いから…」
見るからにグランデは、がっかりとしていた。
素早く上掛けの下に潜り込み、アスカルはベッドの中から寝支度を整えるグランデを、うっとりとながめた。
部屋のすみのいつもの場所に、剣を立て掛けて置き、騎士服を脱ぐ。
水差しから洗面器に水を注ぎ顔を洗い、布を濡らして身体を綺麗に清め、魔獣の匂いをぬぐい去る。
<先に幻鳥で連絡をくれていたら、僕が湯あみの用意をしておいたのになぁ… 僕が眠っていると思って、グランデ様はそうしなかったんだね? 今から湯を用意していたら、眠る時間が無くなってしまうしなぁ… >
昼間のうちに湯あみをすませていたアスカルは、惚れ惚れとするグランデの逞しい裸体を熱心にながめながら、効率的な湯あみの方法について考えた。
<ああ、そうだ! 少し高くつくけど、お湯を湧かす魔道具を買おう! グランデ様の貴重な時間を無駄にするよりは、ずっと良いしね! 前もって風呂桶に水を入れて寝室に用意しておき、使う時にグランデ様か僕が魔道具で湯を沸かして使う! それならグランデ様も好きな時に湯あみができるし!>
使用人たちは魔法が使えないベータで、魔道具を扱えないため…
普段は湯を沸かすのに、火を使っている。
「うん、そうしよう!!」
<いっぱいグランデ様に抱かれた後も、どろどろになった身体を、真夜中でも2人で洗いっこしたら、楽しそうだしね! ふふふっ…>
全裸のままベッドに入ったグランデに、ニコニコと上機嫌でアスカルはペタリとくっ付こうとするが… なぜかまた腰をつかまれ、グランデにグイィーッ… と押し返された。
「グランデ様…?」
「ああ、いや! アスカル… お前はその… そろそろ、止めた方が良くないか?」
「何をですか?!」
「つまりオレが… お前を抱くことをだな…」
「…っあ! 今夜はもう、休みたいのですね? すみません… 魔獣討伐の後だから、いつものようにグランデ様は気が立っていて、心の昂ぶりを抑えるのに、僕を抱きたがるかと思っていたので…」
アスカルの本格的な発情期は、まだ先だが…
番のアルファ・フェロモンで誘惑されれば、オメガは一時的に発情してしまうのだ。
アルファは気に入った相手がいれば、何時でも発情できるため、グランデは魔獣討伐を終えて帰宅すると、必ずアスカルを熱烈に求めて誘惑し、ベッドへ連れ込むのだった。
「オレは休みたいわけではなくて… だな… ええ~とぉ…」
頬を赤らめグランデはアスカルから、スッ… と視線をそらす。
「お疲れなのに… 浮かれてしまって、すみませんグランデ様! 僕に構わず眠って下さい!」
<ううっ… 恥ずかしい! 僕のバカ、バカ! そうだよ、グランデ様は5日ぶりに帰宅したのに、ゆっくりと休みたいに決まっているよ! それなのに僕ってば… 疲れているのなら、今すぐ眠らないと… もうすぐ朝になってしまうし!>
顔どころか胸まで真っ赤に染めて、アスカルはしょんぼりと顔を伏せた。
「いや違う! オレは昼間、仮眠をとったから大丈夫だ! それよりもアスカル、お前の身体の方が… その、色々と問題があるのでは… 無いかと?」
「僕の身体…?!」
「んんん~っ… つまりだな…」
困った顔で唸りながら、グランデはアスカルの平らな下腹をなでた。
「グランデ様?」
「いや… この前の発情期で、オレはその… お前を何が何でも手に入れる気だったから… 子どもを孕ませようとだな… あふれるほどオレの種をお前の中に注いで… ああ、その… 避妊をしなかったから… うう~ん… すまない!」
「…あれ?! 言ってませんでしたか? 魔獣に襲われ、僕の抑制リングが壊れた時、神官様の奥方様に打撲傷の治療を受けたついでに、僕が望まない妊娠をしないようにと、避妊の魔法をかけてもらいました」
「・・・・・・」
パカリッ… とグランデは口を開けた。
「あ……」
<うわっ!! 避妊してること、僕はグランデ様に話してなかった?!>
「そうか、それなら妊娠の心配は無いな…」
フゥ―――ッ… と長いため息をつき、グランデは顔をゴシゴシとこすった。
「す… すみません、グランデ様! すっかり忘れてました! 結婚したら、とても忙しくなったので… 僕は跡継ぎの問題についても、何も考えていませんでしたし… そろそろ考えないと、いけませんね!」
「うん… わかっているアスカル、跡継ぎについてはオレもまだ考えてないから、気にするな… 昨日、部下にお前の自慢話をしたら揶揄われて、子供の話になって… その時オレは、お前の子ならきっと美しくて可愛い子が産まれるだろうなぁ… と少し想像しただけだ…」
虚空を見あげ苦笑いを浮かべたグランデに、罪悪感がわくアスカル。
「うわわっ~ あああ~… 本当にすみません、グランデ様! 今すぐ子作りしましょう?! ね? いっぱい子供、作りましょう?!」
<うわあぁ―――んっ!! 僕がグランデ様の先回りをして、気づかうと決めたばかりなのに… 思いっきりやらかしたぁ―――っ…!!>
ガバッ… と飛び起き、アスカルはあわてて上掛けをはねのけると、グランデの腰をまたいで、チュッ… チュッ… チュッ… と寂し気な顔にキスの雨を落とした。
「いや… 避妊の魔法を治療師に解いてもらうまでは、子作りは出来ないだろう? アスカル、無理をしなくても良いから…」
見るからにグランデは、がっかりとしていた。
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