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49話 頭痛
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カチャッ… コトンッ… 小さな物音がして、アスカルは目覚めた。
顔を傾け視線を天井から、音がした方へと向けようとするが…
頭の芯が急にズキズキと痛みだし、アスカルは目を閉じ痛みが去るまでしばらく我慢した。
<うう~んんっ… 嫌だなぁ… 何でこんなに頭痛がするのかなぁ?>
目を開くと、今度は頭が痛まないよう… アスカルはそろそろと慎重に頭を回し、音がした方を見る。
テーブルの上に積み重ねた書類に目を通しながら、グランデが忙しなくペンを動かす姿がアスカルの視界に入り、ぼんやりと見つめた。
<あれ…? グランデ様いたんだ? でも、何で寝室でお仕事をしているの? ああ… それにしても、グランデ様は何をしていても、素敵だなぁ… 剣を持って魔獣と戦う姿は、雄々しくて見惚れてしまうほど格好良かったし… 僕を抱いている時は、まぶしいほど綺麗で、やっぱり僕はいつも見惚れてしまうんだよね…>
グランデが書類にペンを走らせる、カシッ… カシッ… という音以外は、静まり返った寝室に…
「はぁ―――っ…」
うっとりとアスカルがため息をつく音が、やけに大きく響いた。
パッ… と顔を上げたグランデと、ベッドに寝転がったアスカルの目が合う。
「起きたのか、アスカル!」
ニコッ! と嬉しそうに笑ったグランデが、椅子から腰をあげながら手に持っていた書類とペンを、ポイッ…! と放り出す。
急いでアスカルの元へ来て、グランデはベッドに屈みこみ頬にキスを落とした。
「身体は大丈夫か? どこか辛くはないか?」
病人に対するように、グランデは低い声で静かにたずねる。
「頭痛がします…」
「うん… それは昨夜、先代リコルにそっくりのボラーチョに会って、お前は先代と間違えて動揺し、魔力を暴走させたから、たぶんそのせいだろう」
「・・・・っ」
<そうだ! 昨夜… 僕の記憶が正しければ、僕はあの男を、もう一度殺そうとして… でもグランデ様に止められて…>
酒臭い息をまき散らしながら、アスカルの胸をやらしく撫でまわした男のことを思い出し、アスカルは青ざめた。
<ああ嫌だ… 今は何も考えたくないし… 考えられないよ! もう嫌だ…>
「アスカル、その話はまた後にして、食事はとれそうか?」
「うううっ…! いえ… 食べたら吐きそうです…」
身体を起こした時に、ズキズキと頭が痛みだし、アスカルは吐き気がした。
「そうか、なら薬だけでも飲めるか?」
「はい…それなら、たぶん…」
「飲んだらもう少し休むと良い、オレはここにいるから…」
ベッド脇の小さなテーブルに用意してあった、水差しからカップに水を注ぎ、粉薬と一緒にグランデに手渡され、薬を飲むとアスカルは再び眠りについた。
次にアスカルが目覚めた時には、薬が効いたせいか頭痛は消えていたが、お腹が減ってグゥ~… とひもじそうに鳴った。
「ははははっ…! 仕方ないさ、ずっと食わずに眠っていたのだから、いますぐ食事を用意させよう!」
「ううっ… お願いします」
顔を赤くして窓の外を見ると、すでに日が暮れかけていて… アスカルは自分が一日じゅう眠っていたのだと気づく。
<どうりでお腹が空くはずだよね…>
軽い食事を終えて、食後の紅茶を飲み終えると…
「さてとアスカル、昨夜のことで少し面倒な話をしようか…」
「・・・・・・」
ドクンッ… ドクンッ… とアスカルの心臓が跳ねた。
顔を傾け視線を天井から、音がした方へと向けようとするが…
頭の芯が急にズキズキと痛みだし、アスカルは目を閉じ痛みが去るまでしばらく我慢した。
<うう~んんっ… 嫌だなぁ… 何でこんなに頭痛がするのかなぁ?>
目を開くと、今度は頭が痛まないよう… アスカルはそろそろと慎重に頭を回し、音がした方を見る。
テーブルの上に積み重ねた書類に目を通しながら、グランデが忙しなくペンを動かす姿がアスカルの視界に入り、ぼんやりと見つめた。
<あれ…? グランデ様いたんだ? でも、何で寝室でお仕事をしているの? ああ… それにしても、グランデ様は何をしていても、素敵だなぁ… 剣を持って魔獣と戦う姿は、雄々しくて見惚れてしまうほど格好良かったし… 僕を抱いている時は、まぶしいほど綺麗で、やっぱり僕はいつも見惚れてしまうんだよね…>
グランデが書類にペンを走らせる、カシッ… カシッ… という音以外は、静まり返った寝室に…
「はぁ―――っ…」
うっとりとアスカルがため息をつく音が、やけに大きく響いた。
パッ… と顔を上げたグランデと、ベッドに寝転がったアスカルの目が合う。
「起きたのか、アスカル!」
ニコッ! と嬉しそうに笑ったグランデが、椅子から腰をあげながら手に持っていた書類とペンを、ポイッ…! と放り出す。
急いでアスカルの元へ来て、グランデはベッドに屈みこみ頬にキスを落とした。
「身体は大丈夫か? どこか辛くはないか?」
病人に対するように、グランデは低い声で静かにたずねる。
「頭痛がします…」
「うん… それは昨夜、先代リコルにそっくりのボラーチョに会って、お前は先代と間違えて動揺し、魔力を暴走させたから、たぶんそのせいだろう」
「・・・・っ」
<そうだ! 昨夜… 僕の記憶が正しければ、僕はあの男を、もう一度殺そうとして… でもグランデ様に止められて…>
酒臭い息をまき散らしながら、アスカルの胸をやらしく撫でまわした男のことを思い出し、アスカルは青ざめた。
<ああ嫌だ… 今は何も考えたくないし… 考えられないよ! もう嫌だ…>
「アスカル、その話はまた後にして、食事はとれそうか?」
「うううっ…! いえ… 食べたら吐きそうです…」
身体を起こした時に、ズキズキと頭が痛みだし、アスカルは吐き気がした。
「そうか、なら薬だけでも飲めるか?」
「はい…それなら、たぶん…」
「飲んだらもう少し休むと良い、オレはここにいるから…」
ベッド脇の小さなテーブルに用意してあった、水差しからカップに水を注ぎ、粉薬と一緒にグランデに手渡され、薬を飲むとアスカルは再び眠りについた。
次にアスカルが目覚めた時には、薬が効いたせいか頭痛は消えていたが、お腹が減ってグゥ~… とひもじそうに鳴った。
「ははははっ…! 仕方ないさ、ずっと食わずに眠っていたのだから、いますぐ食事を用意させよう!」
「ううっ… お願いします」
顔を赤くして窓の外を見ると、すでに日が暮れかけていて… アスカルは自分が一日じゅう眠っていたのだと気づく。
<どうりでお腹が空くはずだよね…>
軽い食事を終えて、食後の紅茶を飲み終えると…
「さてとアスカル、昨夜のことで少し面倒な話をしようか…」
「・・・・・・」
ドクンッ… ドクンッ… とアスカルの心臓が跳ねた。
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