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41話 漆黒の人だかり2 グランデside

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 グランデはバクバクと食べながら… 疲れ果てた様子で、モグモグと無言で食べるアスカルの手に、次々とローストビーフ・サンドを手渡した。

「・・・・・・」
<アスカルの目の下が黒ずんでいる… 疲れているな? 昨日の昼間は寝かせてやったが、夕方から明け方までずっとオレが抱いていたし… そろそろ寝かせてやらないと、アスカルが壊れてしまいそうだ!>
 
 かごの中に食後のお茶の代わりに入っていた、ワインのボトルのせんを抜き、グランデはふたつのゴブレットに注ぎ、片方をアスカルに手渡す。 

 アスカルは黙って、コクッ… コクッ… とゆっくりワインを飲み干した。

 グランデが注意深く見守っていると、アスカルの頬はピンクに染まり… ワインのせいか? 心と身体の緊張がほぐれたのか? フッ… と瞳を閉じ、ふぅー… ふぅー… と胸を大きくふくらませて、荒い息をはく。 

 太ももをギュッ… と閉じて前屈みになり、アスカルの指先が微かに震えているのに気づき、グランデはハッと息をのむ。


「しまった!! もしかして…?!」
 試しにグランデは、腕にはめたアルファ用の抑制リングを外してみると…
 つがいの契りを交わしたおかげで、グランデにしか感知できない、アスカルから放たれた危険を感じるほど濃厚な、オメガのフェロモンが周囲にもうもうと漂っている。

 目の前がぐらぐらとぼやけ、アスカルのフェロモンに溺れそうになるのを、グランデは頭を振って払い、抑制リングを手首にはめ直す。


「クソッ!!」 
<今のアスカルは発情期の真っ最中だった!! なんでこんな大事なことを、オレは忘れていたんだ?!> 
 

「おい!! 誰か馬車を用意しろ―――っ!!」
 あわててアスカルを抱き上げ、グランデは部下たちに怒鳴った。

「団長…?」

「急げ―――っ!!!」
<なんてオレはバカなんだ!! 発情期の番を、血気盛んなアルファの集団の前に連れて来るなんて!! オレの部下たちはアスカルのフェロモンを感じ取れないと、安心し過ぎていた!!>

 グランデが信頼する有能な部下たちは、他の者たちに比べて、アルファの能力が極めて高い者たちが集まっている。

 国中から集められた精鋭せいえいで構成された、黒騎士団の騎士ならば、能力が高くて当然だった。

 番のグランデ以外の、アルファ・フェロモンをアスカルが感知できなくても… 本能で脅威きょういを感じ身体が敏感に反応しているのだ。  


「悪かったアスカル! すぐに休める場所へ連れて行ってやるからな?」

<オメガのアスカルが、能力の高いアルファたちに囲まれ、プレッシャーを感じないはずが無いのに… 気付いてやれなかった!! アスカルを無事に王都まで連れ帰れて、オレの気が緩んでいたからだ!! ああ、クソッ!!>






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