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39話 いつの間にか王都
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「うわあっ―――ッ?!!!!!」
驚いたアスカルが、さけび声をあげた時には、まわりの景色が変わっていた。
アスカルのさけび声に反応し、ギョッ…! と目をむいて振り返った、漆黒の騎士服を着た、数人の黒騎士たち。
「ああ?! えええええぇ―――っ?! 何で?!」
<何が起こったの?! 僕は夢を見ているの?! 何がどうなっているの?! なんか黒い人たちが集団でいるし…?! あの人たちは亡霊か何かなの?! んんんん~?!>
自分の目の前の光景が信じられず… アスカルは淡い藤色の瞳を大きく見開き、ぱちぱち…! ぱちぱち…! と何度もまばたきをした。
「今のは黒騎士団の騎士団長にだけ、使用を許可されている緊急時用の転移魔法だ」
茫然とするアスカルの手から、ぽろりと転げ落ちそうになっていた、転移魔法専用の魔道具(国宝級)をつかみ…
クエジョから受け取った2人(4人)分の昼食が入った籠の上にポイッ…! と置く。
ついでに愛馬の手綱もポイッ…! と放すと、苦笑した黒騎士の1人が受け取り…
グランデはあいた両手で、ここぞとばかりにアスカルの細い腰を抱きよせた。
「転… 転移魔法?! そんな魔法があるのですか?!」
<聞いたことないよ!! 僕の知識は神官様から学んだ、必要最小限のことばかりだから?!>
神官カスカダが浄化魔法以外は、あまり得意ではないため、アスカルの得た知識は、どうしても偏りが出てしまうのだ。
「ああ、今使った魔道具にこの場所… 王都にある黒騎士団の本部の、正確な位置を記憶させてあるから、真っ直ぐここに転移した」
「で… でしたら、グランデ様のお手伝いが終われば… この魔法を使って、僕は田舎の本邸に戻れる………? ですよね?!」
<だってさっき、グランデ様は僕に、何かを手伝えと言っていたし…? 僕はグランデ様のお手伝いで、少しの間だけ王都に連れて来られたんだよね…?!>
「いや… だから、急いでこちらに転移したから、向こうの位置を正確に記憶させるのを忘れていた… だから転移魔法は使えない(←嘘)」
悪戯が見つかった子どものように、グランデはアスカルの顔から視線を動かし、あちら… こちら… へと宙を彷徨わせながら答えた。
「そ… そ… そんなぁ…っ! 僕… 僕は… どうなるのですか?! グランデ様?!」
しがみつくように、グランデの漆黒の騎士服をにぎりしめ、口をぱくぱくとしながら、アスカルはたずねた。
「お前はここで、オレの妻になれば良いだけだろう?」
「なっ!! そ… それはお断りしました! 僕では伯爵夫人の大役は務まらないと!! グランデ様も納得してくれたでしょう?!」
腕の中で激しく動揺するアスカルが、“旦那様” ではなく、自分の名前を呼び続けることに気を良くしたグランデは、怖い顔がデレデレとゆるむ。
「いや、オレは全然納得してなかったが… と言うよりも、増々お前以外にオレの妻はありえないと、確信したぐらいだぞ?」
「なっ… そっ… そんな…だって… グランデ様?!」
<もしかして… 僕はお手伝いで王都に連れて来られたのではなくて… 最初から妻にするつもりで連れて来たの? 僕はグランデ様に、だまされたの?!>
アスカルは傷ついた表情で、瞳に涙を浮かべる。
デレデレとゆるんだ顔を、キュッ…と引き締め、グランデは厳しい表情でアスカルをにらんだ。
「お前… 武器庫でオレのことが好きだと言っただろう? あれは嘘なのか?!」
「嘘ではありません!」
「ならアスカルはオレが好きだけど… 愛してないのか?!」
「いいえ、違います!! 僕は本気でグランデ様が大好きでっ… 心からグランデ様を愛しています!! だから、結婚はダメなのです!!」
<やっぱり僕が弟だと、はっきり言わなかったから… こんな大ごとになるなんて… こんな…! 僕がいけなかった! 僕がはっきり言わないから… グランデ様を惑わせてしまった!!>
「ごめんなさい… グランデ様… 僕は… 僕は…」
<今度こそ、弟だと言わなければ!>
アスカルの瞳から、ぼろぼろと涙があふれだした。
驚いたアスカルが、さけび声をあげた時には、まわりの景色が変わっていた。
アスカルのさけび声に反応し、ギョッ…! と目をむいて振り返った、漆黒の騎士服を着た、数人の黒騎士たち。
「ああ?! えええええぇ―――っ?! 何で?!」
<何が起こったの?! 僕は夢を見ているの?! 何がどうなっているの?! なんか黒い人たちが集団でいるし…?! あの人たちは亡霊か何かなの?! んんんん~?!>
自分の目の前の光景が信じられず… アスカルは淡い藤色の瞳を大きく見開き、ぱちぱち…! ぱちぱち…! と何度もまばたきをした。
「今のは黒騎士団の騎士団長にだけ、使用を許可されている緊急時用の転移魔法だ」
茫然とするアスカルの手から、ぽろりと転げ落ちそうになっていた、転移魔法専用の魔道具(国宝級)をつかみ…
クエジョから受け取った2人(4人)分の昼食が入った籠の上にポイッ…! と置く。
ついでに愛馬の手綱もポイッ…! と放すと、苦笑した黒騎士の1人が受け取り…
グランデはあいた両手で、ここぞとばかりにアスカルの細い腰を抱きよせた。
「転… 転移魔法?! そんな魔法があるのですか?!」
<聞いたことないよ!! 僕の知識は神官様から学んだ、必要最小限のことばかりだから?!>
神官カスカダが浄化魔法以外は、あまり得意ではないため、アスカルの得た知識は、どうしても偏りが出てしまうのだ。
「ああ、今使った魔道具にこの場所… 王都にある黒騎士団の本部の、正確な位置を記憶させてあるから、真っ直ぐここに転移した」
「で… でしたら、グランデ様のお手伝いが終われば… この魔法を使って、僕は田舎の本邸に戻れる………? ですよね?!」
<だってさっき、グランデ様は僕に、何かを手伝えと言っていたし…? 僕はグランデ様のお手伝いで、少しの間だけ王都に連れて来られたんだよね…?!>
「いや… だから、急いでこちらに転移したから、向こうの位置を正確に記憶させるのを忘れていた… だから転移魔法は使えない(←嘘)」
悪戯が見つかった子どものように、グランデはアスカルの顔から視線を動かし、あちら… こちら… へと宙を彷徨わせながら答えた。
「そ… そ… そんなぁ…っ! 僕… 僕は… どうなるのですか?! グランデ様?!」
しがみつくように、グランデの漆黒の騎士服をにぎりしめ、口をぱくぱくとしながら、アスカルはたずねた。
「お前はここで、オレの妻になれば良いだけだろう?」
「なっ!! そ… それはお断りしました! 僕では伯爵夫人の大役は務まらないと!! グランデ様も納得してくれたでしょう?!」
腕の中で激しく動揺するアスカルが、“旦那様” ではなく、自分の名前を呼び続けることに気を良くしたグランデは、怖い顔がデレデレとゆるむ。
「いや、オレは全然納得してなかったが… と言うよりも、増々お前以外にオレの妻はありえないと、確信したぐらいだぞ?」
「なっ… そっ… そんな…だって… グランデ様?!」
<もしかして… 僕はお手伝いで王都に連れて来られたのではなくて… 最初から妻にするつもりで連れて来たの? 僕はグランデ様に、だまされたの?!>
アスカルは傷ついた表情で、瞳に涙を浮かべる。
デレデレとゆるんだ顔を、キュッ…と引き締め、グランデは厳しい表情でアスカルをにらんだ。
「お前… 武器庫でオレのことが好きだと言っただろう? あれは嘘なのか?!」
「嘘ではありません!」
「ならアスカルはオレが好きだけど… 愛してないのか?!」
「いいえ、違います!! 僕は本気でグランデ様が大好きでっ… 心からグランデ様を愛しています!! だから、結婚はダメなのです!!」
<やっぱり僕が弟だと、はっきり言わなかったから… こんな大ごとになるなんて… こんな…! 僕がいけなかった! 僕がはっきり言わないから… グランデ様を惑わせてしまった!!>
「ごめんなさい… グランデ様… 僕は… 僕は…」
<今度こそ、弟だと言わなければ!>
アスカルの瞳から、ぼろぼろと涙があふれだした。
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