39 / 105
39話 いつの間にか王都
しおりを挟む
「うわあっ―――ッ?!!!!!」
驚いたアスカルが、さけび声をあげた時には、まわりの景色が変わっていた。
アスカルのさけび声に反応し、ギョッ…! と目をむいて振り返った、漆黒の騎士服を着た、数人の黒騎士たち。
「ああ?! えええええぇ―――っ?! 何で?!」
<何が起こったの?! 僕は夢を見ているの?! 何がどうなっているの?! なんか黒い人たちが集団でいるし…?! あの人たちは亡霊か何かなの?! んんんん~?!>
自分の目の前の光景が信じられず… アスカルは淡い藤色の瞳を大きく見開き、ぱちぱち…! ぱちぱち…! と何度もまばたきをした。
「今のは黒騎士団の騎士団長にだけ、使用を許可されている緊急時用の転移魔法だ」
茫然とするアスカルの手から、ぽろりと転げ落ちそうになっていた、転移魔法専用の魔道具(国宝級)をつかみ…
クエジョから受け取った2人(4人)分の昼食が入った籠の上にポイッ…! と置く。
ついでに愛馬の手綱もポイッ…! と放すと、苦笑した黒騎士の1人が受け取り…
グランデはあいた両手で、ここぞとばかりにアスカルの細い腰を抱きよせた。
「転… 転移魔法?! そんな魔法があるのですか?!」
<聞いたことないよ!! 僕の知識は神官様から学んだ、必要最小限のことばかりだから?!>
神官カスカダが浄化魔法以外は、あまり得意ではないため、アスカルの得た知識は、どうしても偏りが出てしまうのだ。
「ああ、今使った魔道具にこの場所… 王都にある黒騎士団の本部の、正確な位置を記憶させてあるから、真っ直ぐここに転移した」
「で… でしたら、グランデ様のお手伝いが終われば… この魔法を使って、僕は田舎の本邸に戻れる………? ですよね?!」
<だってさっき、グランデ様は僕に、何かを手伝えと言っていたし…? 僕はグランデ様のお手伝いで、少しの間だけ王都に連れて来られたんだよね…?!>
「いや… だから、急いでこちらに転移したから、向こうの位置を正確に記憶させるのを忘れていた… だから転移魔法は使えない(←嘘)」
悪戯が見つかった子どものように、グランデはアスカルの顔から視線を動かし、あちら… こちら… へと宙を彷徨わせながら答えた。
「そ… そ… そんなぁ…っ! 僕… 僕は… どうなるのですか?! グランデ様?!」
しがみつくように、グランデの漆黒の騎士服をにぎりしめ、口をぱくぱくとしながら、アスカルはたずねた。
「お前はここで、オレの妻になれば良いだけだろう?」
「なっ!! そ… それはお断りしました! 僕では伯爵夫人の大役は務まらないと!! グランデ様も納得してくれたでしょう?!」
腕の中で激しく動揺するアスカルが、“旦那様” ではなく、自分の名前を呼び続けることに気を良くしたグランデは、怖い顔がデレデレとゆるむ。
「いや、オレは全然納得してなかったが… と言うよりも、増々お前以外にオレの妻はありえないと、確信したぐらいだぞ?」
「なっ… そっ… そんな…だって… グランデ様?!」
<もしかして… 僕はお手伝いで王都に連れて来られたのではなくて… 最初から妻にするつもりで連れて来たの? 僕はグランデ様に、だまされたの?!>
アスカルは傷ついた表情で、瞳に涙を浮かべる。
デレデレとゆるんだ顔を、キュッ…と引き締め、グランデは厳しい表情でアスカルをにらんだ。
「お前… 武器庫でオレのことが好きだと言っただろう? あれは嘘なのか?!」
「嘘ではありません!」
「ならアスカルはオレが好きだけど… 愛してないのか?!」
「いいえ、違います!! 僕は本気でグランデ様が大好きでっ… 心からグランデ様を愛しています!! だから、結婚はダメなのです!!」
<やっぱり僕が弟だと、はっきり言わなかったから… こんな大ごとになるなんて… こんな…! 僕がいけなかった! 僕がはっきり言わないから… グランデ様を惑わせてしまった!!>
「ごめんなさい… グランデ様… 僕は… 僕は…」
<今度こそ、弟だと言わなければ!>
アスカルの瞳から、ぼろぼろと涙があふれだした。
驚いたアスカルが、さけび声をあげた時には、まわりの景色が変わっていた。
アスカルのさけび声に反応し、ギョッ…! と目をむいて振り返った、漆黒の騎士服を着た、数人の黒騎士たち。
「ああ?! えええええぇ―――っ?! 何で?!」
<何が起こったの?! 僕は夢を見ているの?! 何がどうなっているの?! なんか黒い人たちが集団でいるし…?! あの人たちは亡霊か何かなの?! んんんん~?!>
自分の目の前の光景が信じられず… アスカルは淡い藤色の瞳を大きく見開き、ぱちぱち…! ぱちぱち…! と何度もまばたきをした。
「今のは黒騎士団の騎士団長にだけ、使用を許可されている緊急時用の転移魔法だ」
茫然とするアスカルの手から、ぽろりと転げ落ちそうになっていた、転移魔法専用の魔道具(国宝級)をつかみ…
クエジョから受け取った2人(4人)分の昼食が入った籠の上にポイッ…! と置く。
ついでに愛馬の手綱もポイッ…! と放すと、苦笑した黒騎士の1人が受け取り…
グランデはあいた両手で、ここぞとばかりにアスカルの細い腰を抱きよせた。
「転… 転移魔法?! そんな魔法があるのですか?!」
<聞いたことないよ!! 僕の知識は神官様から学んだ、必要最小限のことばかりだから?!>
神官カスカダが浄化魔法以外は、あまり得意ではないため、アスカルの得た知識は、どうしても偏りが出てしまうのだ。
「ああ、今使った魔道具にこの場所… 王都にある黒騎士団の本部の、正確な位置を記憶させてあるから、真っ直ぐここに転移した」
「で… でしたら、グランデ様のお手伝いが終われば… この魔法を使って、僕は田舎の本邸に戻れる………? ですよね?!」
<だってさっき、グランデ様は僕に、何かを手伝えと言っていたし…? 僕はグランデ様のお手伝いで、少しの間だけ王都に連れて来られたんだよね…?!>
「いや… だから、急いでこちらに転移したから、向こうの位置を正確に記憶させるのを忘れていた… だから転移魔法は使えない(←嘘)」
悪戯が見つかった子どものように、グランデはアスカルの顔から視線を動かし、あちら… こちら… へと宙を彷徨わせながら答えた。
「そ… そ… そんなぁ…っ! 僕… 僕は… どうなるのですか?! グランデ様?!」
しがみつくように、グランデの漆黒の騎士服をにぎりしめ、口をぱくぱくとしながら、アスカルはたずねた。
「お前はここで、オレの妻になれば良いだけだろう?」
「なっ!! そ… それはお断りしました! 僕では伯爵夫人の大役は務まらないと!! グランデ様も納得してくれたでしょう?!」
腕の中で激しく動揺するアスカルが、“旦那様” ではなく、自分の名前を呼び続けることに気を良くしたグランデは、怖い顔がデレデレとゆるむ。
「いや、オレは全然納得してなかったが… と言うよりも、増々お前以外にオレの妻はありえないと、確信したぐらいだぞ?」
「なっ… そっ… そんな…だって… グランデ様?!」
<もしかして… 僕はお手伝いで王都に連れて来られたのではなくて… 最初から妻にするつもりで連れて来たの? 僕はグランデ様に、だまされたの?!>
アスカルは傷ついた表情で、瞳に涙を浮かべる。
デレデレとゆるんだ顔を、キュッ…と引き締め、グランデは厳しい表情でアスカルをにらんだ。
「お前… 武器庫でオレのことが好きだと言っただろう? あれは嘘なのか?!」
「嘘ではありません!」
「ならアスカルはオレが好きだけど… 愛してないのか?!」
「いいえ、違います!! 僕は本気でグランデ様が大好きでっ… 心からグランデ様を愛しています!! だから、結婚はダメなのです!!」
<やっぱり僕が弟だと、はっきり言わなかったから… こんな大ごとになるなんて… こんな…! 僕がいけなかった! 僕がはっきり言わないから… グランデ様を惑わせてしまった!!>
「ごめんなさい… グランデ様… 僕は… 僕は…」
<今度こそ、弟だと言わなければ!>
アスカルの瞳から、ぼろぼろと涙があふれだした。
11
お気に入りに追加
669
あなたにおすすめの小説
恋なし、風呂付き、2LDK
蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。
面接落ちたっぽい。
彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。
占い通りワーストワンな一日の終わり。
「恋人のフリをして欲しい」
と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。
「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
出来損ないΩの猫獣人、スパダリαの愛に溺れる
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
旧題:オメガの猫獣人
「後1年、か……」
レオンの口から漏れたのは大きなため息だった。手の中には家族から送られてきた一通の手紙。家族とはもう8年近く顔を合わせていない。決して仲が悪いとかではない。むしろレオンは両親や兄弟を大事にしており、部屋にはいくつもの家族写真を置いているほど。けれど村の風習によって強制的に村を出された村人は『とあること』を成し遂げるか期限を過ぎるまでは村の敷地に足を踏み入れてはならないのである。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
死に戻り騎士は、今こそ駆け落ち王子を護ります!
時雨
BL
「駆け落ちの供をしてほしい」
すべては真面目な王子エリアスの、この一言から始まった。
王子に”国を捨てても一緒になりたい人がいる”と打ち明けられた、護衛騎士ランベルト。
発表されたばかりの公爵家令嬢との婚約はなんだったのか!?混乱する騎士の気持ちなど関係ない。
国境へ向かう二人を追う影……騎士ランベルトは追手の剣に倒れた。
後悔と共に途切れた騎士の意識は、死亡した時から三年も前の騎士団の寮で目覚める。
――二人に追手を放った犯人は、一体誰だったのか?
容疑者が浮かんでは消える。そもそも犯人が三年先まで何もしてこない保証はない。
怪しいのは、王位を争う第一王子?裏切られた公爵令嬢?…正体不明の駆け落ち相手?
今度こそ王子エリアスを護るため、過去の記憶よりも積極的に王子に関わるランベルト。
急に距離を縮める騎士を、はじめは警戒するエリアス。ランベルトの昔と変わらぬ態度に、徐々にその警戒も解けていって…?
過去にない行動で変わっていく事象。動き出す影。
ランベルトは今度こそエリアスを護りきれるのか!?
負けず嫌いで頑固で堅実、第二王子(年下) × 面倒見の良い、気の長い一途騎士(年上)のお話です。
-------------------------------------------------------------------
主人公は頑な、王子も頑固なので、ゆるい気持ちで見守っていただけると幸いです。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる