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37話 武器庫で
しおりを挟むレガロ伯爵家の武器庫に入ると、グランデは新しい物から順番に一つずつ手に取り魔力を流して、その武器の能力を簡単に調べた。
「とんでもないお宝だらけだな! 見ているだけで涎が垂れそうだ!!」
武器庫に納めてあった武器のほとんどが、魔石を装着して魔法が組み込まれた魔道武器だと、グランデに教えられてアスカルは初めて知った。
「旦那様、この武器をどうされるのですか?」
アスカルも一緒に武器庫へ入り、グランデを手伝いほこりを払いながらたずねると…
「騎士団の部下たちに貸すのさ! あいつらは魔法も剣技も、良い腕があるのに、下級貴族出身のうえ跡継ぎではないから、金が無くて良い武器を手に入れられずにいるんだ」
「旦那さまはお優しいですね」
「いや、オレが優しいから貸すのではなくて、せっかく育てた部下を簡単に死なせるよりは、良い武器を持たせて、長く働かせたいのさ!」
「そうですか…」
<それを優しいと言うのでは… ないのかなぁ?>
グランデが選別した武器を、アスカルが順番に整理していると…
「なぁアスカル、お前オレのこと好きか?」
「え?!」
「正直に答えろ… オレはお前に、無理強いをしていたのか?!」
「あ… いいえ! 最初は驚きましたが… でも… 僕は旦那様のことが好きです」
突然、グランデに問いかけられて、アスカルは虚を衝かれ、深く考えることなく自分の気持ちを素直に答えた。
「オレの番になったことを、後悔しているか?」
「いいえ、少しも後悔などしていません! 僕は執事になると決めた時、誰かと愛し合うことをずっと前にあきらめていましたから、だからとても嬉しかったです!」
「そうか…? それなら安心した」
「旦… 旦那様の求婚は、とても光栄でした! ですがやはり僕には荷が重すぎます… なので僕は使用人として、旦那様に一生お仕えするつもりです! もちろん旦那様の奥様にも、誠心誠意お仕えします!」
<グランデ様の奥様は、僕にとっても、義理の姉か兄になるし…>
「お前の気持ちは、良くわかった!」
グランデは珍しく、嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「・・・・・・」
アスカルの目に涙がにじみ、グランデに気づかれないよう背中を向け、こっそり涙をぬぐう。
騎士団に持ち帰る分の武器を、木箱に入れて運び出し、再び武器庫に鍵をかけた。
「アスカル、お前はティエンポに、馬を玄関前に用意するよう言ってくれ… オレは武器を運ぶから」
「はい、旦那様」
<ああ… これでお別れなんだ? でも、旦那様に兄弟だと言わなくて済みそうだな…>
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