黒騎士はオメガの執事を溺愛する

金剛@キット

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27話 目が覚めて

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 レガロ伯爵家当主の寝室で、アスカルは明け方までグランデに抱かれ… ぐっすりと熟睡しているところを、父ペスカドに肩をゆすられ起こされた。


「起きなさいアスカル! アスカル!」

「ん…んん…?」 

「起きなさい!」

「あ… うん… わかった…から…」
<ああ、お父さん…だ… 早く起きないと… 執事失格だと… 怒られちゃうよ…> 

 ショボショボする目を開くと… 自分が眠っていた場所がいつもと違うことに気付くが、寝不足と疲労で頭がぼんやりとしたままのアスカルは、しばらくの間状況が理解出来ず固まってしまう。

「昨夜は何があったのか、説明しなさい」
 顔を強張らせた父ペスカドは、寝室の壁際に寄せてあった椅子を、ベッドの脇に運んで来て腰を下ろした。

「昨夜は…」
 不意に… 発情した身体でグランデに抱かれ、“つがいちぎり” を結んだことを思い出し、アスカルの顔にうっすらと笑みが浮かんだ。

『グ… グランデ様… 大好き!』

『アスカル… お前はオレの特別なオメガだ!』

 裸の身体を上掛けで隠しながら、だるい手足を動かし、アスカルはゆっくり身体を起こした。

 いくら隠そうとしても、アスカルのうなじや肩に残る、無数の赤い噛み痕が… グランデとの熱烈な情交を物語っていた。

「今朝、私はタルデ夫人の治療を受けに、神殿へ行ったら… お前が発情期に入ったと聞き、お前に会いにあわてて伯爵邸こちらに来たら… 伯爵様がお前はまだ眠っているからと、会うのを止められた」

「グランデ様が? あ…! グランデ様は今どこに?!」

「伯爵様は執務室で帳簿を見ておられる… だから私はそのすきに、お前に会いに来た」

「グランデ様はとても勤勉な方だから」

「アスカルお前… 伯爵様に無理やり、抱かれたのか?! 先代のように… また乱暴されたのか?!」
 父ペスカドはアスカルの首まわりに残る情交の痕や、キスでれた赤い唇を見つめ厳しい表情を浮かべる。

「違う! 違うよ! グランデ様はそんな人ではないよ…」
<確かに初めは抵抗したけど… でも僕が何度もグランデ様に見惚れていたのを知られていたし… いけないことだと、わかっているのに心がひかれてしまう… どうしてもグランデ様が僕の兄さんだとは思えないんだ!>

「だったらお前は… 自分から進んで抱かれたと、言うのか?」

「それは…」


『まるで運命に導かれるように、お前はオレの腕の中で発情し、オレの理性を粉々にした! だから、もう逆らうなアスカル! オレと一緒にあきらめろ!』

<僕もグランデ様の言う通り、運命に導かれたように感じたから…>


「アスカル!」

「僕はグランデ様が好きなんだ!」
 父と目が合わせられず、アスカルはうつむいたまま、告白した。

「お前は… 好きだからと、血の繋がった兄弟が抱き合うなんて、神様から罰を受けるぞ! 伯爵様はお前が腹違いの弟だと知っていて抱いたのか?!」

「神様の罰を受けるのは僕だけだよ… グランデ様は何も知らないから」

「何だと?! 弟だと言わなかったのか?!」 

「何度も言おうとしたけど、言えなかった… 本当に言おうとしたんだよ… でも!」

「・・・っ」
 ペスカドは椅子から腰をあげ、真っ直ぐ寝室の扉に向かう。

「あっ…!」
<お父さん… お父さんはグランデ様に、僕が弟だと言いに行くつもりだ!!>

 アスカルは裸のままベッドから飛びおり、扉の前で父を捕まえしがみつく。

「やめて、お父さん! お願いだから止めて下さい!! お願いです! 僕が自分でグランデ様の弟だと、僕が伝えるから…!! 黙っていて!!」 

「ダメだ! ぐずぐずしているうちに、子供を身籠ったらどうするつもりだ?!」
 真っ赤な顔で、ペスカドは悔しそうに涙を浮かべて、怒鳴った。

「大丈夫だよ! 昨日、神殿でケガの治療をしてもらった時に… 上手く発情を抑制できない僕が、望まない妊娠をしないように、タルデ夫人が避妊の魔法をお腹に掛けてくれたから!」

「アスカル…」


「ごめんなさい… お父さん、本当にごめんなさい…」






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