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19話 害獣駆除2
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石垣の陰から飛び出したグランデは、魔獣たちの背後から剣に魔力を流し、剣圧に乗せて横になぎ払うが…
「クソッ! 浅かったか!! デカブツめ!!」
一振りで3頭の魔獣を殺し、4頭目に浅い傷をつけ… 素早くとどめをを刺そうと剣を突き立てる。
「すごい… 旦那様の剣が!! 」
グランデの剣から勢いよく噴き出した深紅の魔力が刃となり、魔獣の身体を2つに切り裂くのが、離れた場所にいたアスカルにも、しっかりと見えた。
「僕も魔獣の1頭ぐらいは… いつも通り退治してやる…っ!!」
魔獣を切り伏せるグランデの援護のため、アスカルも長弓で狙いやすい位置まで移動して矢を射る。
攻撃魔法に慣れていないアスカルは、3射ほど氷の矢を放ち、ようやく1頭めの魔獣の動きを止めた。
ギヒィー… ギヒィー… ギヒィー… ギヒィー… と悲鳴をあげ、地面をのたうちまわる魔獣にとどめを放つと、アスカルはフゥ―――ッ… とひと息つく。
「アスカル!! 油断するな―――っ!!」
グランデの怒鳴り声があたりに響き、アスカルはハッ… と顔を上げると… 最期の1頭がアスカルの魔力に引かれ、真っすぐ突進して来た。
「・・・っひ?!」
あわてて弓を引くが、長弓に流したアスカルの魔力は、あせって中途半端なものとなり、細く頼りない氷の矢しか放てなかった。
それでも顔に命中するが、魔獣の勢いを止めることは出来ず…
もう一度矢を射ようと、アスカルは震える手で懸命に弓を引くが、今度もあせって魔力を上手く流せず、氷の矢を作れなかった。
魔獣の顔に生えた、黒と灰色のまだらになったゴワゴワとした体毛が見えるほど、目の前に魔獣がせまり…
アスカルにおおいかぶさるように飛びかかって来る。
<あ… 死ぬ?>
アスカルの脳裏にそんな言葉が浮かんだ瞬間… 深紅の輝きが魔獣の首を切り裂いた。
ドゴゴッ…! と、にぶく大きな音を立て、飛びかかって来た魔獣に押しつぶされるように、アスカルは地面に倒れ… 魔獣の下敷きとなってしまう。
「ううぐっ…?!」
「アスカル…!!」
牛サイズの魔獣の下敷きになり、圧死寸前のところで、アスカルはグランデに助け出されたが…
真っ黒に穢れた腐臭が漂う魔獣の体液をまともに浴びてしまっていた。
「神官殿!! 急いで浄化を!! これではアスカルが瘴気に侵されてしまう!!」
「お任せ下さい、黒騎士殿!!」
アスカルを心配した神官カスカダが、真っ青な顔で走り寄る。
「カスカダ様… うっ…」
「よしよし、良い子だアスカル… よく頑張ったね、すぐに綺麗にしてやろう…」
涙目のアスカルを穏やかになだめながら、神官カスカダは掌からあふれる純白に輝く浄化の光で、地面に寝かされたアスカルの身体を包み込んだ。
カスカダが放った浄化の光が辺りに漂っていた瘴気を綺麗に消し去り、同時に不快な腐臭も無くなり、グランデはホッ… とため息をついた。
「黒騎士殿、アスカルをお願いします! 私は魔獣の死体を浄化しなければいけませんから」
「よろしく頼む、神官殿!」
「目立った傷は無いように見えるが…?」
魔獣の体液にまみれ、ドロドロに汚れたアスカルの服を、グランデは手早く脱がしながら、ついでにケガの有無を確かめる。
アスカルの汚れた顔や髪を、グランデは自分の首に巻いていたスカーフでぬぐい… 騎士服の上着を脱いで裸の身体を包んだ。
神官カスカダはアスカルの身体を浄化し、瘴気を祓うことは出来たが、ドロドロの汚れまで清潔に落とすことは出来ないからだ。
念のために、グランデはアスカルが着ていた魔獣の体液まみれの服に、ボッ…! と魔法で火をつけ灰になるまで燃やした。
「アスカル… 痛いところはあるか?」
「うう… 申し訳ありません… 旦那…様… うっ… 旦那様…」
グランデに呼びかけられ、うめき声をもらしアスカルは薄っすらと淡い藤色の瞳を開く。
「どこが痛む?」
「体中が… バラバラになりそうなほど、痛いです… でも、我慢出来ないほどではありません…」
身体中に打ち身はあっても、アスカルの命に関わるような重いケガは無かった。
「そうか… それは良かった」
子どもをなだめるように、額にキスを落とすと… グランデはアスカルを抱き上げた。
アスカルの手首から、ポロリッ… と何かが落ち… グランデは何が落ちたのかと地面を見下ろし、パカリッと口を開きぼうぜんとする。
そこには…
綺麗に真ん中で割れた、オメガ用の抑制リングが、落ちていた。
「クソッ! 浅かったか!! デカブツめ!!」
一振りで3頭の魔獣を殺し、4頭目に浅い傷をつけ… 素早くとどめをを刺そうと剣を突き立てる。
「すごい… 旦那様の剣が!! 」
グランデの剣から勢いよく噴き出した深紅の魔力が刃となり、魔獣の身体を2つに切り裂くのが、離れた場所にいたアスカルにも、しっかりと見えた。
「僕も魔獣の1頭ぐらいは… いつも通り退治してやる…っ!!」
魔獣を切り伏せるグランデの援護のため、アスカルも長弓で狙いやすい位置まで移動して矢を射る。
攻撃魔法に慣れていないアスカルは、3射ほど氷の矢を放ち、ようやく1頭めの魔獣の動きを止めた。
ギヒィー… ギヒィー… ギヒィー… ギヒィー… と悲鳴をあげ、地面をのたうちまわる魔獣にとどめを放つと、アスカルはフゥ―――ッ… とひと息つく。
「アスカル!! 油断するな―――っ!!」
グランデの怒鳴り声があたりに響き、アスカルはハッ… と顔を上げると… 最期の1頭がアスカルの魔力に引かれ、真っすぐ突進して来た。
「・・・っひ?!」
あわてて弓を引くが、長弓に流したアスカルの魔力は、あせって中途半端なものとなり、細く頼りない氷の矢しか放てなかった。
それでも顔に命中するが、魔獣の勢いを止めることは出来ず…
もう一度矢を射ようと、アスカルは震える手で懸命に弓を引くが、今度もあせって魔力を上手く流せず、氷の矢を作れなかった。
魔獣の顔に生えた、黒と灰色のまだらになったゴワゴワとした体毛が見えるほど、目の前に魔獣がせまり…
アスカルにおおいかぶさるように飛びかかって来る。
<あ… 死ぬ?>
アスカルの脳裏にそんな言葉が浮かんだ瞬間… 深紅の輝きが魔獣の首を切り裂いた。
ドゴゴッ…! と、にぶく大きな音を立て、飛びかかって来た魔獣に押しつぶされるように、アスカルは地面に倒れ… 魔獣の下敷きとなってしまう。
「ううぐっ…?!」
「アスカル…!!」
牛サイズの魔獣の下敷きになり、圧死寸前のところで、アスカルはグランデに助け出されたが…
真っ黒に穢れた腐臭が漂う魔獣の体液をまともに浴びてしまっていた。
「神官殿!! 急いで浄化を!! これではアスカルが瘴気に侵されてしまう!!」
「お任せ下さい、黒騎士殿!!」
アスカルを心配した神官カスカダが、真っ青な顔で走り寄る。
「カスカダ様… うっ…」
「よしよし、良い子だアスカル… よく頑張ったね、すぐに綺麗にしてやろう…」
涙目のアスカルを穏やかになだめながら、神官カスカダは掌からあふれる純白に輝く浄化の光で、地面に寝かされたアスカルの身体を包み込んだ。
カスカダが放った浄化の光が辺りに漂っていた瘴気を綺麗に消し去り、同時に不快な腐臭も無くなり、グランデはホッ… とため息をついた。
「黒騎士殿、アスカルをお願いします! 私は魔獣の死体を浄化しなければいけませんから」
「よろしく頼む、神官殿!」
「目立った傷は無いように見えるが…?」
魔獣の体液にまみれ、ドロドロに汚れたアスカルの服を、グランデは手早く脱がしながら、ついでにケガの有無を確かめる。
アスカルの汚れた顔や髪を、グランデは自分の首に巻いていたスカーフでぬぐい… 騎士服の上着を脱いで裸の身体を包んだ。
神官カスカダはアスカルの身体を浄化し、瘴気を祓うことは出来たが、ドロドロの汚れまで清潔に落とすことは出来ないからだ。
念のために、グランデはアスカルが着ていた魔獣の体液まみれの服に、ボッ…! と魔法で火をつけ灰になるまで燃やした。
「アスカル… 痛いところはあるか?」
「うう… 申し訳ありません… 旦那…様… うっ… 旦那様…」
グランデに呼びかけられ、うめき声をもらしアスカルは薄っすらと淡い藤色の瞳を開く。
「どこが痛む?」
「体中が… バラバラになりそうなほど、痛いです… でも、我慢出来ないほどではありません…」
身体中に打ち身はあっても、アスカルの命に関わるような重いケガは無かった。
「そうか… それは良かった」
子どもをなだめるように、額にキスを落とすと… グランデはアスカルを抱き上げた。
アスカルの手首から、ポロリッ… と何かが落ち… グランデは何が落ちたのかと地面を見下ろし、パカリッと口を開きぼうぜんとする。
そこには…
綺麗に真ん中で割れた、オメガ用の抑制リングが、落ちていた。
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