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17話 害獣被害 グランデside
しおりを挟む朝食を終えると、グランデは執務室へ行き、伯爵領の領地運営に関する帳簿類を丁寧に確認していると…
しばらくして、アスカルがあわてて執務室へあらわれ、グランデに外出の許可が欲しいと願い出た。
「外出するのは構わないが、何があったのだ?」
「それが… 村の神官様の元に、領地内で害獣被害が出ていて、領民から助けを求める連絡が来たそうなのです…」
「害獣被害?! なぜこちらではなく、神官の方へ連絡が行くのだ?」
「旦那様、実はですね…」
アスカルは帳簿を何冊か照らし合わせながら…
レガロ伯爵領で収穫される農作物が、減少していることについて報告した。
「今年になってから、害獣が増え… そのうちの何頭かが凶暴化して領民たちにまで死傷者がでているのです」
ちょうど害獣被害が増え始めた時期の記録を、アスカルは指先でトンッ、トンッ、とたたいて見せた。
「害獣というと… クマやイノシシあたりか?」
「はい、ちょうどこの季節は、森に入ってキノコを収穫するのですが… 凶暴化した害獣のせいで、領民たちは森に入ることができなくなりました… 最近では農地にもあらわれるようになって… 被害が拡大するばかりなのです」
「凶暴化とは、具体的にどのようなものだ?」
「見た目で言えば、身体が二回りほど大きく、性質も攻撃的で牙や爪が異常に伸びていました… それに… 神官様が魔獣に似ていると、おっしゃられていました…」
「魔獣? お前も見たのか?!」
<野生動物の凶暴化? 恐らく魔王復活の前ぶれで、国中にただよう瘴気が動物たちに影響をおよぼし、変異したのが原因だろう>
大賢者の未来視の魔法であきらかになった、近い未来に訪れる魔王復活の予言は、国王と王太子、一部の大臣たち、騎士団の上層部と… まだ、限られた者たちにしか知らされていない、極秘事項となっていた。
「はい旦那様、ほんの3日ほど前にも、神官様と一緒に駆除しに行きましたから…」
「アスカル! そんな危険なことを、お前がしているのか?! なぜ青騎士に頼まない?!」
「青騎士団に依頼しても、どこも同じような状況らしく… 騎士様がこちらに到着するまで、数日かかりますし… その間に死傷者が出たら大変なので、私と神官様で先に駆除をこころみることにしているのです」
いつ来るか分からない青騎士を、期待して待つよりも… 剣を振るうことは出来なくても、子供の頃から神官夫妻から魔法の訓練を受けたアスカルが、現地に行った方が効率的なのだ。
青騎士団とは国全体に配置された、治安を維持するための騎士団で…
魔法を使えないベータの騎士を中心に構成されているため、本来の主な仕事は人間の犯罪者を取り締まることである。
「これは、1人か2人… 魔法騎士を雇った方が良さそうだな!」
<素人が魔獣退治だと? まったく… 気持ちは良くわかるが、なんて命知らずなんだ!! オレの方が恐ろしくなって来たぞ!!>
思わず心配になり、じろりとアスカルをにらみ、グランデはむすっ… と腕組みをした。
<うちの執事は、真面目で責任感が強過ぎるようだ! これでは命がいくつあっても足りないぞ?! 目が離せないな…>
「私もそう思い、魔法騎士を探しているのですが… 引く手あまたらしく、こちらに来て下さる方がいないのです」
「そうか… 確かに今は難しいかもしれない! オレの知り合いの騎士に当たってみよう」
「ありがとうございます、旦那様!」
「いや、そもそもこういう問題は当主が考える問題だからな… こっちにいる間は、オレも害獣駆除に行く! 苦労をかけたなアスカル!」
執務机から腰を上げると、グランデは壁に立てかけてあった剣を取る。
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