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8話 新しい伯爵からの手紙
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加齢のせいで体調があまり良くない父ペスカドから、仕事を引き継ぎ執事となったアスカルは…
レガロ伯爵家の領地にある本邸の執務室で、爵位を継いだばかりのレガロ伯爵から届いた、領地を訪れるという内容の手紙を読み、大きなため息をついた。
「4年も前から伯爵家の当主が行方不明になっていたことを、誰も気が付かなかったなんて… 本当に嘘みたいな話だよ… でも、あの人がいなくなって心配する人が1人もいなかったということか? それなら納得だね!」
暗い目でアスカルは嘲笑を浮かべた。
<ついにこの時が来た! 今度こそ、上手くやらなければ… 僕がオメガだと知られないよう、注意しないと!! あんな失敗は犯さない!>
手首にはめたブレスレット型の、魔石がついた抑制用魔道具をにぎりしめた。
アスカルを育ててくれた神官カスカダ(男性アルファ)と、タルデ夫人(女性のオメガ)から贈られた、オメガ用の発情と誘惑フェロモンを抑制する魔法が組み込まれ、魔石に溜めた魔力で発動させる魔道具である。
一般的に魔道具はとても高価で、平民のアスカルや父ペスカドが簡単に手に入れられるような品物ではなく…
貴族出身のタルデ夫人が結婚前に使っていた物を、アスカル用に魔法を調整し贈ってくれたのだ。
タルデ夫人のようにアルファと“番の契り”を結んだオメガは体質が変わり、“番”のアルファにしか感知できないフェロモンしか放てなくなり…
また、アルファから放たれたフェロモンも、オメガは“番”のものしか、感知できなくなる。
アスカルにも番ができれば、抑制用の魔道具も不要になるが… そもそもアルファとオメガのほとんどが、貴族階級に属していて、当主不在の田舎の領地に、アルファが訪れること自体が無い。
『晩餐の時からお前は、オメガのフェロモンをまき散らして、私を誘惑していただろう? お前の淫らな視線にも気づいていたぞ』
「ううっ…!」
新しい伯爵の手紙を読んで、酒臭い息をはきながら、実父が自分に淫らな欲望をぶつけようとした夜のことを思い出し、アスカルは背筋がゾッとして、身体をぶるりっ… と震わせた。
当時のアスカルは、発情期さえ未経験の子供だった。
そんな未成熟なアスカルを襲った先代の伯爵は… アスカルからオメガのフェロモンを感じたのではなく、実際は母親の美しさを受け継いだアスカルの容姿を見て、自分がもてあそんだオメガの子供だと気づき、襲ったのだ。
<実の父を殺した僕が、この伯爵邸で働くなんて… 本当は許されないことだと思うけど… でも人殺しの僕が、神官様の言う通り、自分の罪を忘れて誰かのもとへ嫁いで幸せになるなんて… やっぱり出来ないよ…>
父ペスカドはアスカルを守るために、神官カスカダと相談し… 秘密裏に伯爵の死体を、神殿裏の墓地に運び埋葬した。
自分の頬をアスカルは、パンッ! パンッ! とたたき、気持ちを立て直すと… 新しい当主から届いた手紙を、丁寧に折りたたみ封筒にもどし、上着の内ポケットへ入れる。
「黒騎士団の騎士団長、グランデ様かぁ…」
<僕と半分血が繋がった、腹違いのお兄さんは… どんな人だろう? 先代伯爵のような人でなければ良いけど…>
4年前より、スラリと背がのびたアスカルは、執務室を出た。
レガロ伯爵家の領地にある本邸の執務室で、爵位を継いだばかりのレガロ伯爵から届いた、領地を訪れるという内容の手紙を読み、大きなため息をついた。
「4年も前から伯爵家の当主が行方不明になっていたことを、誰も気が付かなかったなんて… 本当に嘘みたいな話だよ… でも、あの人がいなくなって心配する人が1人もいなかったということか? それなら納得だね!」
暗い目でアスカルは嘲笑を浮かべた。
<ついにこの時が来た! 今度こそ、上手くやらなければ… 僕がオメガだと知られないよう、注意しないと!! あんな失敗は犯さない!>
手首にはめたブレスレット型の、魔石がついた抑制用魔道具をにぎりしめた。
アスカルを育ててくれた神官カスカダ(男性アルファ)と、タルデ夫人(女性のオメガ)から贈られた、オメガ用の発情と誘惑フェロモンを抑制する魔法が組み込まれ、魔石に溜めた魔力で発動させる魔道具である。
一般的に魔道具はとても高価で、平民のアスカルや父ペスカドが簡単に手に入れられるような品物ではなく…
貴族出身のタルデ夫人が結婚前に使っていた物を、アスカル用に魔法を調整し贈ってくれたのだ。
タルデ夫人のようにアルファと“番の契り”を結んだオメガは体質が変わり、“番”のアルファにしか感知できないフェロモンしか放てなくなり…
また、アルファから放たれたフェロモンも、オメガは“番”のものしか、感知できなくなる。
アスカルにも番ができれば、抑制用の魔道具も不要になるが… そもそもアルファとオメガのほとんどが、貴族階級に属していて、当主不在の田舎の領地に、アルファが訪れること自体が無い。
『晩餐の時からお前は、オメガのフェロモンをまき散らして、私を誘惑していただろう? お前の淫らな視線にも気づいていたぞ』
「ううっ…!」
新しい伯爵の手紙を読んで、酒臭い息をはきながら、実父が自分に淫らな欲望をぶつけようとした夜のことを思い出し、アスカルは背筋がゾッとして、身体をぶるりっ… と震わせた。
当時のアスカルは、発情期さえ未経験の子供だった。
そんな未成熟なアスカルを襲った先代の伯爵は… アスカルからオメガのフェロモンを感じたのではなく、実際は母親の美しさを受け継いだアスカルの容姿を見て、自分がもてあそんだオメガの子供だと気づき、襲ったのだ。
<実の父を殺した僕が、この伯爵邸で働くなんて… 本当は許されないことだと思うけど… でも人殺しの僕が、神官様の言う通り、自分の罪を忘れて誰かのもとへ嫁いで幸せになるなんて… やっぱり出来ないよ…>
父ペスカドはアスカルを守るために、神官カスカダと相談し… 秘密裏に伯爵の死体を、神殿裏の墓地に運び埋葬した。
自分の頬をアスカルは、パンッ! パンッ! とたたき、気持ちを立て直すと… 新しい当主から届いた手紙を、丁寧に折りたたみ封筒にもどし、上着の内ポケットへ入れる。
「黒騎士団の騎士団長、グランデ様かぁ…」
<僕と半分血が繋がった、腹違いのお兄さんは… どんな人だろう? 先代伯爵のような人でなければ良いけど…>
4年前より、スラリと背がのびたアスカルは、執務室を出た。
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