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6話 密談
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執務机を離れ、王太子アニマシオンはグランデが座るソファセットの向かい側に腰を下ろしてから口を開く。
呼び寄せたグランデに、命令を出すというよりも… 2人で何やら密談をしようとする距離感である。
「現在王都で大騒ぎになっている、レガロ伯爵家の相続争いについて知っているか?」
「確か… レガロ伯爵が失踪して、4年も過ぎていたという話ですか?」
グランデは記憶をたどりながら、頬を指でポリポリとかく。
「王都のレガロ伯爵邸で、遊び回る伯爵に代わり長い間、執務を代行していた執事が領地からあがった収益を横領していたことが発覚し、そこでくわしく調査してみたら、伯爵自身が数年前から行方不明となっていたことが分かった」
王国法で貴族の家の当主が、行方不明となって3年以上過ぎると、死亡あつかいとなり、その家の次の当主を新たに立てることができるのだ。
「レガロ伯爵は素行の悪い放蕩者で、親兄弟はすでに死亡しているというのに、当主の義務も責任もはたそうしないで、50歳近い年齢になっても未婚のままフラフラと遊びにふけるような男だった… ここまでの話は知っているか、グランデ?」
「大まかな内容は、酒の席で部下たちに聞いた覚えがあります」
「未婚のレガロ伯爵が、結婚をエサにして未婚の貴族令息たちを引っ掛けもてあそび、自分の種をまき散らした結果、17人の非嫡出子が出て来た… 本当にとんでもないクズさ!」
王太子は嫌そうにレガロ伯爵の感想をはきすてた。
「ああ、それでそのクズ野郎アルファの子息子女(アルファ)たち17人が、“自分こそはレガロ伯爵の後継者だ!” と言い争っているのでしょう?」
王国法ではオメガは爵位の継承ができないため、実際にはもっと非嫡出子が存在している。
「それでそのクズ野郎アルファの子だと名乗る者たちを、一人ずつ調べてみたが、半分は詐欺だと判明している… なにせ、レガロ伯爵は貴族の若いオメガたちを狙って相手にしていたから、実際に母親がもてあそばれて生まれた者たちは、醜聞にさらされるのを恐れて、自分の素性を明かしたがらないからな」
「だとすると… 名乗り出たクズ野郎アルファの、本当の子供たちはオレのように、醜聞が怖くない平民に落ちた者たちですか?」
「そうだ」
「ふん! なるほどね… それで殿下は、オレに何をしろと?」
鼻で笑うグランデに… 王太子アニマシオンは、悪戯を思いついた悪ガキのようにニヤニヤと笑う。
「そこでだ! 親愛なる我が友、野獣騎士グランデよ! 君にもぜひ、18人目の非嫡出子として名乗り出て欲しいのさ!」
「何ですって?!」
呼び寄せたグランデに、命令を出すというよりも… 2人で何やら密談をしようとする距離感である。
「現在王都で大騒ぎになっている、レガロ伯爵家の相続争いについて知っているか?」
「確か… レガロ伯爵が失踪して、4年も過ぎていたという話ですか?」
グランデは記憶をたどりながら、頬を指でポリポリとかく。
「王都のレガロ伯爵邸で、遊び回る伯爵に代わり長い間、執務を代行していた執事が領地からあがった収益を横領していたことが発覚し、そこでくわしく調査してみたら、伯爵自身が数年前から行方不明となっていたことが分かった」
王国法で貴族の家の当主が、行方不明となって3年以上過ぎると、死亡あつかいとなり、その家の次の当主を新たに立てることができるのだ。
「レガロ伯爵は素行の悪い放蕩者で、親兄弟はすでに死亡しているというのに、当主の義務も責任もはたそうしないで、50歳近い年齢になっても未婚のままフラフラと遊びにふけるような男だった… ここまでの話は知っているか、グランデ?」
「大まかな内容は、酒の席で部下たちに聞いた覚えがあります」
「未婚のレガロ伯爵が、結婚をエサにして未婚の貴族令息たちを引っ掛けもてあそび、自分の種をまき散らした結果、17人の非嫡出子が出て来た… 本当にとんでもないクズさ!」
王太子は嫌そうにレガロ伯爵の感想をはきすてた。
「ああ、それでそのクズ野郎アルファの子息子女(アルファ)たち17人が、“自分こそはレガロ伯爵の後継者だ!” と言い争っているのでしょう?」
王国法ではオメガは爵位の継承ができないため、実際にはもっと非嫡出子が存在している。
「それでそのクズ野郎アルファの子だと名乗る者たちを、一人ずつ調べてみたが、半分は詐欺だと判明している… なにせ、レガロ伯爵は貴族の若いオメガたちを狙って相手にしていたから、実際に母親がもてあそばれて生まれた者たちは、醜聞にさらされるのを恐れて、自分の素性を明かしたがらないからな」
「だとすると… 名乗り出たクズ野郎アルファの、本当の子供たちはオレのように、醜聞が怖くない平民に落ちた者たちですか?」
「そうだ」
「ふん! なるほどね… それで殿下は、オレに何をしろと?」
鼻で笑うグランデに… 王太子アニマシオンは、悪戯を思いついた悪ガキのようにニヤニヤと笑う。
「そこでだ! 親愛なる我が友、野獣騎士グランデよ! 君にもぜひ、18人目の非嫡出子として名乗り出て欲しいのさ!」
「何ですって?!」
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