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26話 クバラの気持ち2 クバラside

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 サラリとクバラは言った。

「ラーヤに子種が無い話は嘘だよ? 王太子殿下に説得役を頼んで、医師には“皇帝陛下のため”だと、偽の診断書を作らせたんだ」

「…何ですって?!」

「大丈夫、ラーヤにはしっかり子種があるから!」
 力を失いやわらかくなった、ラーヤの性器をクバラは愛おし気に、手の中ににぎり込んだ。

「クバラ様―――ッ?!」
 自分の性器をつかむクバラの手を、ラーヤはたたいて振り払う。


「さすがに婚約者がいる伯爵令息に、皇妃の話をおし進めるのは、道義上無理があったから… でも誠実なラーヤなら自分に子種が無いと知れば、きっとサピとの婚約を解消すると思ったんだ…」
 いくら帝国を支配する皇帝と皇室でも、横暴が過ぎれば貴族たちの反感を買い、信用を無くすことになる。

 皇室の権威けんいを守るため、クバラもでは、常識の範囲をはずれることは出来なかった。


「だ… だから皇妃の話が、僕ではなく弟に来たのですか?! 僕を皇妃にするためなのに?!」

「うん… そして愛する家族、弟のためなら、ラーヤが皇妃に名乗り出ることも、私にはわかっていたよ」
 それだけクバラはラーヤのことを理解しているのだ。

「クバラ様が計画したの?」

「私が嫌いになったか、ラーヤ?」
<ラーヤに嫌われても、私はこの計画を実行すると決めていた… だから、後悔は無い>

 そう思っていても、クバラの顔に苦笑いが浮かぶ。


「・・・・・・」
 衝撃を受けたらしいラーヤは、青ざめた顔で押し黙ってしまう。



<ああ… 私への愛は、一瞬で冷めたという顔をしている… これはだめだ… 私はラーヤに、嫌われてしまったな…?>
 視線をはずし黙り込むラーヤの顔を見て、クバラは寂しげにため息をつく。

「父上は… 皇帝陛下はああ見えて優しい方だから、ラーヤが私以外の皇子をこばむというのなら、陛下も無理いはしないはずだ… 最近ラーヤが夜伽よとぎに呼ばれなかったのは、スマンカの婚儀のことで、私が多忙だったからだ… 他の皇子と同じようにラーヤが嫌なら、私もこばむことができるよ」

「え?!」

「ラーヤ1人でも… 陛下を楽しませる方法を、いくつか教えただろう?」

「クバラ様…」

 陛下の前で、自慰をして見せたり、張形を使う方法である。


「ラーヤの信頼を裏切ってすまない…」

<皇妃を引退したら私の妻になって欲しいと、ラーヤに求婚するつもりだったが… 私の本性を知った今は、それもはかない夢で終わったようだ… やれやれ…>


 最初は自分の欲望のためではなく、純粋に愛する人の幸せを願ってクバラは計画をたてた。

 だが… 皇帝の代理となりラーヤを抱くことで、クバラが至福の時をえられたのも事実だったため… 
 クバラはそれ以上、ラーヤに言い訳をするのをやめて、口を閉じた。




 それから間もなく… 
 妹スマンカの婚儀のために、クバラはムンギリム大公国へと旅立った。


 ラーヤはスマンカと親しく言葉を交わすことはあっても、クバラには旅の無事を祈る言葉を、そっけなく贈っただけだった。






※もう少しだけ続きます。最後までお付き合い頂ければ幸いです☆彡
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