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18話 クバラの妹、ラーヤの友達
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スマンカに手を引かれて、ラーヤは後宮を出て本宮の、行政機関が置かれる帝国の中枢と言える場所、行政棟と呼ばれる建物に入り… その中にある、クバラの執務室へ向かう。
「クバラお兄様もね、本当は他国に婿入りなんてしたくなかったから… 他の皇族と違って学園生時代から、公務を自分から進んでやるようにして、自分は有能な人材で、この国に必要な人間だと周囲にアピールしていたの… そうやってガラム王国との縁談の話を回避しようとしたけど…」
手をつないで歩きながら、スマンカはクバラの努力をラーヤにひそひそと、声を落として語って聞かせた。
「だ… だから… クバラ様は学園を休むことが多かったのですね?」
「ええ… だって、お兄様は女性が苦手で、愛すことができないから」
「…?!」
<クバラ様が、女性を愛すことが出来ない?! そ… それは知らなかった! すべてが完璧なクバラ様にも、苦手なものがあったの…?>
自分よりも、成熟した完璧な大人だと思っていたクバラに、ラーヤは不思議と親近感をおぼえた。
「皇太子殿下も最近では、お兄様を自分の右腕にしようと、考え直していたのだけれど… ガラムの国王陛下の圧力が強くて… 昔の口約束でも、約束は約束だからと、押し切られてしまったの」
「ああ… そんな、クバラ様…」
<それはつまり、今までの努力が… 全部、無駄になりそうなんだ?>
「お兄様も皇族だから、もちろん他国へ婿入りする覚悟だけはしていたけど…」
「・・・・・・」
2人はクバラの執務室の前につき、立ち止まった。
「あのねラーヤ… お兄様は意外と臆病だから、昔から自分の気持ちは、ほとんど人に話さないの… 一緒にいると寂しくなるよね?」
「…はい」
<今回のことも話して欲しかった… 僕が知って何か変わるわけではないけど… でも知っておきたかったよ、クバラ様!>
スマンカの言う通りだと、ラーヤはうなずく。
「ラーヤを混乱させて傷つけしまったのは、私も深く反省してるけれど… でも私にとっても、ラーヤは大切なお友達だから、お兄様のことをもっと、知ってほしかったの! サピと婚約していた時だって、お兄様は何も言わないから… 見ていて、すごく悔しかったし!」
ぽろぽろとスマンカは大粒の涙をこぼす。
「うん…」
「だから、お願いラーヤ、頑張って!」
クバラの執務室の扉を開いて、スマンカはラーヤの背中を押して室内に入れると…
バタンッ…! と廊下側から扉を閉めた。
「クバラお兄様もね、本当は他国に婿入りなんてしたくなかったから… 他の皇族と違って学園生時代から、公務を自分から進んでやるようにして、自分は有能な人材で、この国に必要な人間だと周囲にアピールしていたの… そうやってガラム王国との縁談の話を回避しようとしたけど…」
手をつないで歩きながら、スマンカはクバラの努力をラーヤにひそひそと、声を落として語って聞かせた。
「だ… だから… クバラ様は学園を休むことが多かったのですね?」
「ええ… だって、お兄様は女性が苦手で、愛すことができないから」
「…?!」
<クバラ様が、女性を愛すことが出来ない?! そ… それは知らなかった! すべてが完璧なクバラ様にも、苦手なものがあったの…?>
自分よりも、成熟した完璧な大人だと思っていたクバラに、ラーヤは不思議と親近感をおぼえた。
「皇太子殿下も最近では、お兄様を自分の右腕にしようと、考え直していたのだけれど… ガラムの国王陛下の圧力が強くて… 昔の口約束でも、約束は約束だからと、押し切られてしまったの」
「ああ… そんな、クバラ様…」
<それはつまり、今までの努力が… 全部、無駄になりそうなんだ?>
「お兄様も皇族だから、もちろん他国へ婿入りする覚悟だけはしていたけど…」
「・・・・・・」
2人はクバラの執務室の前につき、立ち止まった。
「あのねラーヤ… お兄様は意外と臆病だから、昔から自分の気持ちは、ほとんど人に話さないの… 一緒にいると寂しくなるよね?」
「…はい」
<今回のことも話して欲しかった… 僕が知って何か変わるわけではないけど… でも知っておきたかったよ、クバラ様!>
スマンカの言う通りだと、ラーヤはうなずく。
「ラーヤを混乱させて傷つけしまったのは、私も深く反省してるけれど… でも私にとっても、ラーヤは大切なお友達だから、お兄様のことをもっと、知ってほしかったの! サピと婚約していた時だって、お兄様は何も言わないから… 見ていて、すごく悔しかったし!」
ぽろぽろとスマンカは大粒の涙をこぼす。
「うん…」
「だから、お願いラーヤ、頑張って!」
クバラの執務室の扉を開いて、スマンカはラーヤの背中を押して室内に入れると…
バタンッ…! と廊下側から扉を閉めた。
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