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17話 混乱
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レモンイエローの大輪のバラが咲きほこる、バラ園の小道で思いも寄らない話をスマンカから聞かされ、急激に頭が混乱したラーヤは、彫像のようにピタリと動きを止め… まばたきすることさえ忘れて、大きな目を見開いた。
「ラーヤ! ラーヤ! ラーヤ…っ!! 」
「……え?」
スマンカに名前を呼ばれるまで、ラーヤは自分が呆然と立ちつくしていたことに、気づかなかった。
「あなた大丈夫? 顔が真っ青だわ…?!
「あ……?」
<クバラ様が… 婚約? 他国の王女様と結婚して?! 婿入りする?! この国から、クバラ様が出て行くということ?! いなくなるの?! クバラ様が… いなくなるの?!!!>
真っすぐ立っていられず、ラーヤはふらふらとよろけて、鋭い棘だらけのつるバラに、危うく顔から突っ込みそうになり…
「危ないラーヤ!!」
あわててスマンカが腕をつかんで、ラーヤを引っ張った。
「スマンカ様… スマンカ様… 僕は…!」
「ラ… ラーヤ… あなた…っ?!」
「スマンカ様、どうしよう? クバラ様がいなくなったら… 誰が僕を抱くの? 誰が…?! 僕の知ってる皇子さま? でも僕はクバラ様しか知らないのに?!」
<僕は… これから、知らない人に抱かれるの? 僕は誰に抱かれるの…?! 僕は……?!!>
混乱した頭が異常に重く感じて、ラーヤは震える手で頭を支えていないと… そのまま地面に、頭を落っことしてしまいそうだった。
「ご… ごめんなさい! ラーヤ! きっとお兄様はあなたが動揺するから、わざと何も言わなかったのね?! 余計な事を言ってごめんなさい、ラーヤ! こんなにあなたの心を、混乱させるとは思わなかったの!」
今にも泣き出しそうな赤い顔で、スマンカも激しく動揺し、ラーヤの手をギュッ… とにぎりしめ、何度も何度も謝った。
「ねぇ… スマンカ様… スマンカ様… これから僕はどうしたら良い…? 他の皇子様に抱かれるなんて… 嫌だよ…! 怖いよ… 知らない人なんて、すごく怖いよ! クバラ様だから今まで、怖くなかったのに…」
重い頭を両手で支えながら、眉間にギュッ… と力を込めて、ラーヤは涙がこぼれないように我慢した。
「ごめんなさい… わからないわ! 私もどうすれば良いのか!」
「・・・っ」
「そ… そうだわ! こういう時こそ、クバラお兄様に聞かないと! きっと、何か良い案を考えてくれるわ! ね? 今から会いに行きましょう、ラーヤ!!」
震えるラーヤの手を引っ張り、スマンカはバラ園の小道を大急ぎで引き返した。
「ラーヤ! ラーヤ! ラーヤ…っ!! 」
「……え?」
スマンカに名前を呼ばれるまで、ラーヤは自分が呆然と立ちつくしていたことに、気づかなかった。
「あなた大丈夫? 顔が真っ青だわ…?!
「あ……?」
<クバラ様が… 婚約? 他国の王女様と結婚して?! 婿入りする?! この国から、クバラ様が出て行くということ?! いなくなるの?! クバラ様が… いなくなるの?!!!>
真っすぐ立っていられず、ラーヤはふらふらとよろけて、鋭い棘だらけのつるバラに、危うく顔から突っ込みそうになり…
「危ないラーヤ!!」
あわててスマンカが腕をつかんで、ラーヤを引っ張った。
「スマンカ様… スマンカ様… 僕は…!」
「ラ… ラーヤ… あなた…っ?!」
「スマンカ様、どうしよう? クバラ様がいなくなったら… 誰が僕を抱くの? 誰が…?! 僕の知ってる皇子さま? でも僕はクバラ様しか知らないのに?!」
<僕は… これから、知らない人に抱かれるの? 僕は誰に抱かれるの…?! 僕は……?!!>
混乱した頭が異常に重く感じて、ラーヤは震える手で頭を支えていないと… そのまま地面に、頭を落っことしてしまいそうだった。
「ご… ごめんなさい! ラーヤ! きっとお兄様はあなたが動揺するから、わざと何も言わなかったのね?! 余計な事を言ってごめんなさい、ラーヤ! こんなにあなたの心を、混乱させるとは思わなかったの!」
今にも泣き出しそうな赤い顔で、スマンカも激しく動揺し、ラーヤの手をギュッ… とにぎりしめ、何度も何度も謝った。
「ねぇ… スマンカ様… スマンカ様… これから僕はどうしたら良い…? 他の皇子様に抱かれるなんて… 嫌だよ…! 怖いよ… 知らない人なんて、すごく怖いよ! クバラ様だから今まで、怖くなかったのに…」
重い頭を両手で支えながら、眉間にギュッ… と力を込めて、ラーヤは涙がこぼれないように我慢した。
「ごめんなさい… わからないわ! 私もどうすれば良いのか!」
「・・・っ」
「そ… そうだわ! こういう時こそ、クバラお兄様に聞かないと! きっと、何か良い案を考えてくれるわ! ね? 今から会いに行きましょう、ラーヤ!!」
震えるラーヤの手を引っ張り、スマンカはバラ園の小道を大急ぎで引き返した。
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