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16話 困ったこと2
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「なんだ… サピのこと気にしてなかったの? だったら、言わなければ良かったわぁ…」
バラ園の小道を歩きながら、スマンカ皇女は苦笑して、ため息をついた。
「いいえ、教えて下さりありがとうございます… 僕は… サピと婚約していた頃は、彼女と仲良くなりたくて努力したけれど… 結局僕は、最後まで彼女を怒らせてばかりで… それが少し心残りだったから」
「私は彼女が理解出来ないわ! 優しくて素敵なあなたのどこが不満なのか? 本当にさっぱりわからないもの! 暴君のサピを、いつも大切にしていたあなたに、学園中の女子生徒が憧れていたのにね!」
ちょうど目隠しになりそうな、背の高いトレリスにはわされた、レモンイエローのつるバラの前に立ち…
スマンカは大輪のバラを手にのせ、鼻を寄せて香りを楽しむ。
「僕が彼女を愛していないのが不満だと、いつもサピは腹を立てていました… 実際、僕は彼女を愛せない薄情者だったし… だから僕は、彼女を大切にすることで、埋め合わせをしていた気がします」
「うう~ん… でもラーヤがサピを愛せなかったのは、あなたが薄情だからではなくて、サピ自身がラーヤに愛されようと、努力しなかったからだと思うわ?」
バラから顔を上げ、スマンカは隣に立つ、ラーヤの繊細な横顔をながめた。
「そうかなぁ?」
ラーヤは考え込むように、腕組みをする。
「だってサピは、ラーヤにクバラお兄様が話しかけると、ラーヤを無視して、ずっとお兄様に媚びを売っていたでしょう? 普通、愛する婚約者の前で、他の男性に興味を持つなんてことは、絶対にしないことだわ… だから、彼女いつも腹を立てていたもの、クバラお兄様が愛するラーヤにしか興味が無いから」
「・・・っ?!」
ドキッ…! と心臓がはね、ラーヤの顔が赤くなる。
<愛するラーヤ?! スマンカ様は、クバラ様の気持ちを知っていたんだ? 学園生時代、クバラ様に愛されていると、知らなかったのは僕だけなの?!>
「あっ! なぁ~にぃ~?! ラーヤ… あなたお兄様が好きなの?! 愛しちゃった?!」
スマンカの瞳が猫のように細くなる。
「ええ?! 違いますよ! だ… だって僕は皇妃ですよ?」
真っ赤な顔で、ぶん… ぶんっ… と顔を横に振るラーヤの薄い胸を、指先でつんっ… つんっ… とスマンカがつつく。
「もう、私には隠さなくて良いのよラーヤ! でも、本当に好きなら…」
最後まで言葉を続けず… 急にスマンカは何かを考え込み、顔を曇らせる。
「スマンカ様?」
「3日後に私の保護者役でお兄様も、ムンギリム大公国へ一緒に旅立つでしょう?」
「え?! クバラ様も行くのですか?!」
「やだ?! お兄様はあなたに、何も話してないの?」
驚いたスマンカは、開いた口をてのひらで隠す。
「何をですか? 最近クバラ様と会えないから、よくわからなくて…」
<話どころか… 皇帝陛下の夜伽が止まっているから、この2週間、クバラ様と顔を合わせてもいないし?!>
眉間にしわを寄せ、ラーヤは驚くスマンカを見下ろした。
「私と一緒にお兄様も嫁ぎ先のムンギリム大公国へ行って、私の婚姻の儀式を見届けたら… その足でお兄様はガラム王国へ行き、ガラムの王女様と見合いして、正式に婚約する予定なの」
「ええっ?!」
「昔ね… 私とクバラお兄様は、皇太子殿下に連れられてガラムの国王陛下の即位式に出たことがあるの… その時、年が近いガラムの王女殿下と仲良くなってね… それを見ていたガラム王がお兄様を気に入って、王女殿下の婿にと、結婚を望まれて…」
「クバラ様は… ガラム王国の王女殿下と、婚約しているのですか?」
「いいえ! その時は単なる、うちの皇太子殿下とガラム王の口約束だったの… だけど王女殿下が適齢期になって、去年から縁談の話が進んで…」
帝国法で、皇帝自身が崩御するまで、帝位を皇太子に譲位することが出来ない。
そこで高齢の皇帝に代わり、15年前から皇太子が実務を代行しているため、クバラの結婚話も皇太子の裁量で決めることが出来た。
「縁談?」
「まずは見合いに行って… たぶんそのまま、お兄様は向こうで婚約式を、してしまうでしょうね」
「・・・・・・」
ラーヤの頭の中が真っ白になった。
バラ園の小道を歩きながら、スマンカ皇女は苦笑して、ため息をついた。
「いいえ、教えて下さりありがとうございます… 僕は… サピと婚約していた頃は、彼女と仲良くなりたくて努力したけれど… 結局僕は、最後まで彼女を怒らせてばかりで… それが少し心残りだったから」
「私は彼女が理解出来ないわ! 優しくて素敵なあなたのどこが不満なのか? 本当にさっぱりわからないもの! 暴君のサピを、いつも大切にしていたあなたに、学園中の女子生徒が憧れていたのにね!」
ちょうど目隠しになりそうな、背の高いトレリスにはわされた、レモンイエローのつるバラの前に立ち…
スマンカは大輪のバラを手にのせ、鼻を寄せて香りを楽しむ。
「僕が彼女を愛していないのが不満だと、いつもサピは腹を立てていました… 実際、僕は彼女を愛せない薄情者だったし… だから僕は、彼女を大切にすることで、埋め合わせをしていた気がします」
「うう~ん… でもラーヤがサピを愛せなかったのは、あなたが薄情だからではなくて、サピ自身がラーヤに愛されようと、努力しなかったからだと思うわ?」
バラから顔を上げ、スマンカは隣に立つ、ラーヤの繊細な横顔をながめた。
「そうかなぁ?」
ラーヤは考え込むように、腕組みをする。
「だってサピは、ラーヤにクバラお兄様が話しかけると、ラーヤを無視して、ずっとお兄様に媚びを売っていたでしょう? 普通、愛する婚約者の前で、他の男性に興味を持つなんてことは、絶対にしないことだわ… だから、彼女いつも腹を立てていたもの、クバラお兄様が愛するラーヤにしか興味が無いから」
「・・・っ?!」
ドキッ…! と心臓がはね、ラーヤの顔が赤くなる。
<愛するラーヤ?! スマンカ様は、クバラ様の気持ちを知っていたんだ? 学園生時代、クバラ様に愛されていると、知らなかったのは僕だけなの?!>
「あっ! なぁ~にぃ~?! ラーヤ… あなたお兄様が好きなの?! 愛しちゃった?!」
スマンカの瞳が猫のように細くなる。
「ええ?! 違いますよ! だ… だって僕は皇妃ですよ?」
真っ赤な顔で、ぶん… ぶんっ… と顔を横に振るラーヤの薄い胸を、指先でつんっ… つんっ… とスマンカがつつく。
「もう、私には隠さなくて良いのよラーヤ! でも、本当に好きなら…」
最後まで言葉を続けず… 急にスマンカは何かを考え込み、顔を曇らせる。
「スマンカ様?」
「3日後に私の保護者役でお兄様も、ムンギリム大公国へ一緒に旅立つでしょう?」
「え?! クバラ様も行くのですか?!」
「やだ?! お兄様はあなたに、何も話してないの?」
驚いたスマンカは、開いた口をてのひらで隠す。
「何をですか? 最近クバラ様と会えないから、よくわからなくて…」
<話どころか… 皇帝陛下の夜伽が止まっているから、この2週間、クバラ様と顔を合わせてもいないし?!>
眉間にしわを寄せ、ラーヤは驚くスマンカを見下ろした。
「私と一緒にお兄様も嫁ぎ先のムンギリム大公国へ行って、私の婚姻の儀式を見届けたら… その足でお兄様はガラム王国へ行き、ガラムの王女様と見合いして、正式に婚約する予定なの」
「ええっ?!」
「昔ね… 私とクバラお兄様は、皇太子殿下に連れられてガラムの国王陛下の即位式に出たことがあるの… その時、年が近いガラムの王女殿下と仲良くなってね… それを見ていたガラム王がお兄様を気に入って、王女殿下の婿にと、結婚を望まれて…」
「クバラ様は… ガラム王国の王女殿下と、婚約しているのですか?」
「いいえ! その時は単なる、うちの皇太子殿下とガラム王の口約束だったの… だけど王女殿下が適齢期になって、去年から縁談の話が進んで…」
帝国法で、皇帝自身が崩御するまで、帝位を皇太子に譲位することが出来ない。
そこで高齢の皇帝に代わり、15年前から皇太子が実務を代行しているため、クバラの結婚話も皇太子の裁量で決めることが出来た。
「縁談?」
「まずは見合いに行って… たぶんそのまま、お兄様は向こうで婚約式を、してしまうでしょうね」
「・・・・・・」
ラーヤの頭の中が真っ白になった。
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