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15話 困ったこと
しおりを挟む伯爵家の立派な当主になれるよう教育を受け、ラーヤは日々努力を重ねて来た。
それが自分の運命だと思っていたのに、ある日突然引っくり返り、第4皇妃となり後宮へ入ることとなった。
知らない皇子に毎夜抱かれ… ラーヤは少しずつ自尊心をけずられ、暗い毎日をおくるうちに、皇妃を引退する頃には、抜けがらのようになってしまうだろうと覚悟していた。
だが、いざ皇妃となって後宮に入ってみると、ラーヤを抱くのは知らない皇子ではなく、学園生時代の憧れの先輩で… 自尊心をけずられるどころか、『愛している』 と夜伽のたびに言われ、自尊心をくすぐられ続けていた。
「最近、夜伽に呼ばれないけど… 陛下が体調を崩してしまったとかだったら、大変だよね?」
「いいえ、皇妃様… そのようなお話は聞いておりませんよ?」
お茶を淹れて運んでくれた女官が、ラーヤの質問に答えてくれた。
「なら、良いけど…」
<陛下に嫁いだばかりのころは、毎日のように夜伽に呼ばれたのに… それが3日に1度に減り、1週間に1度になって… 今は2週間過ぎても呼ばれていない…>
星の形をしたビンタンの花を浮かべたお茶を、ゆっくりと飲みながら… あらためてラーヤは自分の立場について考えてみた。
<皇妃になって3ヶ月がすぎたけど… もしかすると僕は、陛下に飽きられてしまったのかなぁ? それだと少し困るな…>
ラーヤが困っているのは… 性欲が一番強くなる年頃のラーヤは、毎日のようにクバラに抱かれ、身体のあちこちが感じやすい体質となってしまった。
今では数日おきに抱かれないと、ラーヤの性欲が満たされず辛い思いをするほどだ。
<自分で触れて抜くより… クバラ様の大きな手で触れられた方が、なぜか気持ち良いし… うううう~ん… 僕はこの先、どうなるのかな?>
「なんか… さびしいなぁ… 暇だなぁ…」
<性欲を抜きにしても、クバラ様に会えないのは辛い…>
夜伽が終わり皇帝が寝所へ帰ると…
わずかだか、ラーヤとクバラが2人っきりになれる時間がおとずれる。
精液や汗でドロドロに汚れたラーヤの身体を、クバラが清潔にふき清めるのに、その貴重な2人っきりの時間を使ってしまうが…
それでも… 誰もが憧れるクバラ殿下を、独りじめにできる贅沢な時間だと、密かにラーヤは楽しみにしていた。
嫁ぐ日が間近にせまり、スマンカ皇女は友人のラーヤに別れの挨拶をしようと後宮のバラ園にやって来た。
母が暮らす後宮までは入れるが、女性のスマンカ皇女はラーヤが暮らす男性皇妃用の建物に入るのを禁止されているため、応接間ではなく、バラ園で会うことにしたのだ。
「お久しぶりね、ラーヤ!」
「スマンカ様もお元気そうで何よりです」
2人は咲きほこる大輪のバラに囲まれた道を、ゆっくりと進む。
「私が嫁いだらラーヤとこうして、気軽に会えなくなるのが辛いわ」
「僕もそう思います、スマンカ様… でもお相手の方はとても素敵な方だとクバラ様に聞きましたよ?」
「ふふふっ… ええ! でも、今日は私のことよりも、あなたの方が心配で…」
「…僕が?」
「あなたの元婚約者、サピのことは、まだ聞いてない?」
「サピですか? はい、婚約を解消した時、父が火傷を負わされてからは、一切侯爵家とやり取りをしないようにしているので」
「まぁ、そうなの? 彼女… お父様とケンカをして、大ケガをさせてしまったらしいの」
「ムンブリ侯爵がですか…?」
ラーヤも婚約期間に、度々暴力を振るわれていた。
今さらだが、ラーヤは元婚約者サピと別れて良かったと、心から思った。
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