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12話 卒業パーティー2 クバラside
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煌びやかな礼装で着飾った、学園を卒業する主役たちの中でも… ひときわ鮮やかな紫色の生地に、フリルとリボンをふんだんに使ったドレスを着たムンブリ侯爵令嬢サピに、クバラはにこりと微笑みかけた。
「ムンブリ侯爵令嬢、あなたの婚約者を少しの間だけ、お借りしたいのですが?」
派手なドレスのせいで、普段よりも3倍はふくらんで見える、ムンブリ侯爵令嬢サピの隣で微笑む…
令嬢とおそろいのフリルがごってり付いた礼装が、痛々しいほど似合わないラーヤに、クバラはチラリと視線を送る。
<疲れた顔をしているな、ラーヤは… きっとこのパーティーのために朝からずっと、この婚約者に振りまわされているのだろうな… 可愛そうに>
「まぁ、クバラ殿下! お久しぶりですわぁ~!!」
周囲にいた卒業生たちが、何ごとだ? と振り向くほどニワトリの鳴き声に似た、甲高い声を、ドレスと同じく3倍増しにふくらませて、ラーヤの婚約者サピはクバラに答える。
卒業するまで、ラーヤ以外に親しい友人が出来なかったサピは、自分が皇族のクバラに親しく話しかけられたことを、卒業生たちへ向けて自慢げにアピールしているのだ。
「お久しぶりです殿下」
ふわふわと紫の羽の縁取りがついた扇で、ぱたぱたと婚約者のサピに風を送りながらラーヤは苦笑を浮かべた。
「すまないラーヤ、君も大切な婚約者から離れるのは嫌だと思うけれど、妹の数少ない友人の君に、相談したいことがあるんだ… 少しだけ時間をくれないか?」
<あ―――っ… 似合わない!! なんて趣味の悪い服を、着せられているんだラーヤ! 可愛そうに… 君の優美な姿が台無しじゃないか!!>
心で罵りながら、にこにこと笑みをたやさず、クバラはサピに笑いかけ、ラーヤの肩に手を置いた。
「はい、クバラ殿下… サピ… 君を1人にしても大丈夫?」
「…ええ、ラーヤもちろんよ! でも終わったらすぐに帰って来てね? 私のためにブドウのジュースを持ってきて欲しいの!」
貴族の若い令嬢たちがよくやる、可愛く甘えて見えるように、サピは唇を尖らせて…
3倍増しの大声でラーヤにねだる。
「わかったよサピ、ブドウのジュースだね?」
扇をサピに渡しラーヤは微笑んだ。
「ええ、お願いねラーヤ!」
「・・・・・・」
<高貴な身分の皇族の頼みを断ることは出来ないとわかっていても、婚約者のサピにたずねるところが、優しいラーヤらしいな… それなのに、この女は皇族の私の前でも、自分の婚約者を従僕のようにあつかい、ラーヤを辱めるとは!!>
内心でクバラは、イライラを通りこし怒りを感じていたが、2人のやり取りを、黙って見つめた。
卒業生たちの熱気で蒸し暑く感じる室内から、2人でテラスに出て気持ちの良い夜風にあたりながら… 思わずクバラは、ラーヤにたずねた。
「ラーヤ… 幸せか?」
「クバラ殿下…? いきなり、どうしたのですか?」
「答えられないか? だったら… ラーヤはこれから幸せになれそうか?」
「……努力します」
少し間を置いてラーヤは答えた。
「・・・・・・」
<即答できないのを分かっていて、ラーヤにたずねるなんて… 私は意地が悪いな…>
「あの… お話があったのでは?」
「いや、君が少し疲れた顔をしていたから… ラーヤはこういう場所が本当は苦手だろう?」
「ええ… でも、サピのためにも慣れないと… 僕も殿下のように洗練された社交術を、早く身に付けたいです」
「ラーヤ、結婚はいつだ?」
「彼女が自分の誕生日に合わせたいと希望しているので、半年後にする予定です」
気持ちを隠しきれず、ラーヤは暗い声で答えた。
「そうか…」
<だめだ!! 我慢するつもりだったが… 何がなんでも、この結婚は止めなければ!!>
あまりにも切なくてたまらず、クバラは出会ってから初めてラーヤの頬に触れた。
「ムンブリ侯爵令嬢、あなたの婚約者を少しの間だけ、お借りしたいのですが?」
派手なドレスのせいで、普段よりも3倍はふくらんで見える、ムンブリ侯爵令嬢サピの隣で微笑む…
令嬢とおそろいのフリルがごってり付いた礼装が、痛々しいほど似合わないラーヤに、クバラはチラリと視線を送る。
<疲れた顔をしているな、ラーヤは… きっとこのパーティーのために朝からずっと、この婚約者に振りまわされているのだろうな… 可愛そうに>
「まぁ、クバラ殿下! お久しぶりですわぁ~!!」
周囲にいた卒業生たちが、何ごとだ? と振り向くほどニワトリの鳴き声に似た、甲高い声を、ドレスと同じく3倍増しにふくらませて、ラーヤの婚約者サピはクバラに答える。
卒業するまで、ラーヤ以外に親しい友人が出来なかったサピは、自分が皇族のクバラに親しく話しかけられたことを、卒業生たちへ向けて自慢げにアピールしているのだ。
「お久しぶりです殿下」
ふわふわと紫の羽の縁取りがついた扇で、ぱたぱたと婚約者のサピに風を送りながらラーヤは苦笑を浮かべた。
「すまないラーヤ、君も大切な婚約者から離れるのは嫌だと思うけれど、妹の数少ない友人の君に、相談したいことがあるんだ… 少しだけ時間をくれないか?」
<あ―――っ… 似合わない!! なんて趣味の悪い服を、着せられているんだラーヤ! 可愛そうに… 君の優美な姿が台無しじゃないか!!>
心で罵りながら、にこにこと笑みをたやさず、クバラはサピに笑いかけ、ラーヤの肩に手を置いた。
「はい、クバラ殿下… サピ… 君を1人にしても大丈夫?」
「…ええ、ラーヤもちろんよ! でも終わったらすぐに帰って来てね? 私のためにブドウのジュースを持ってきて欲しいの!」
貴族の若い令嬢たちがよくやる、可愛く甘えて見えるように、サピは唇を尖らせて…
3倍増しの大声でラーヤにねだる。
「わかったよサピ、ブドウのジュースだね?」
扇をサピに渡しラーヤは微笑んだ。
「ええ、お願いねラーヤ!」
「・・・・・・」
<高貴な身分の皇族の頼みを断ることは出来ないとわかっていても、婚約者のサピにたずねるところが、優しいラーヤらしいな… それなのに、この女は皇族の私の前でも、自分の婚約者を従僕のようにあつかい、ラーヤを辱めるとは!!>
内心でクバラは、イライラを通りこし怒りを感じていたが、2人のやり取りを、黙って見つめた。
卒業生たちの熱気で蒸し暑く感じる室内から、2人でテラスに出て気持ちの良い夜風にあたりながら… 思わずクバラは、ラーヤにたずねた。
「ラーヤ… 幸せか?」
「クバラ殿下…? いきなり、どうしたのですか?」
「答えられないか? だったら… ラーヤはこれから幸せになれそうか?」
「……努力します」
少し間を置いてラーヤは答えた。
「・・・・・・」
<即答できないのを分かっていて、ラーヤにたずねるなんて… 私は意地が悪いな…>
「あの… お話があったのでは?」
「いや、君が少し疲れた顔をしていたから… ラーヤはこういう場所が本当は苦手だろう?」
「ええ… でも、サピのためにも慣れないと… 僕も殿下のように洗練された社交術を、早く身に付けたいです」
「ラーヤ、結婚はいつだ?」
「彼女が自分の誕生日に合わせたいと希望しているので、半年後にする予定です」
気持ちを隠しきれず、ラーヤは暗い声で答えた。
「そうか…」
<だめだ!! 我慢するつもりだったが… 何がなんでも、この結婚は止めなければ!!>
あまりにも切なくてたまらず、クバラは出会ってから初めてラーヤの頬に触れた。
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