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11話 卒業パーティー クバラside
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2年前に学園を卒業していたが、クバラ皇子は他国へ嫁ぐことが決まった腹違いの妹スマンカ皇女に頼まれ、学園の卒業パーティーでエスコート役を引き受けることになった。
男性皇族の中で一番クバラが、スマンカ皇女に年齢が近く、仲が良かったからである。
他国の王族と結婚をひかえた身で、異性のパートナーを選んでは、醜聞になりかねないと、聡明なスマンカ皇女が判断したからだ。
「さぁ、スマンカ! 私の目が届く範囲で遊んでおいで! 度を越さなければ、私はうるさく注意したりしないからね」
「うふふ… クバラお兄様ったら、自分が遊びたいからでしょう? ほら、あそこにラーヤがいるわ! 暴君(婚約者のサピ)から救ってあげて?」
妹皇女の手をとり、洗練された身のこなしでキスをすると…
クバラはスマンカ皇女に揶揄われた。
「君には、敵わないなぁ!」
苦笑いを浮かべ、クバラは離れた場所で、横暴な婚約者に、従僕のようにあつかわれている、ラーヤを見つけた。
2年半前にラーヤと衝撃的な出会いをし、一目惚れをしたクバラは… ラーヤと同じ学年の妹スマンカ皇女から、ラーヤについて知っていることを、聞きだそうとした。
同じ学園に在籍していても、男性皇族のクバラは皇太子にその有能さを認められ、皇女のスマンカとは違い、皇家から重要な公務を数多く割り当てられている。
地方の有力貴族への挨拶まわりなど、毎日公務で忙しく学園を休みがちで、同じ学年の生徒ならともかく…
2年下の後輩たちとなると、顔も名前も、ほとんど知らなかった。
聡明で勘の良いスマンカは、すぐにクバラの恋心に気付き、さりげなくラーヤと仲良くなり、ついでにクバラをその仲間に加えてくれたのだ。
「ラーヤとあの暴君が結婚したら、本当にどうなるのかしら? 実家のムンブリ侯爵家から、多額の持参金を受け取ると聞いたけれど… それでバングヌ伯爵家の借金が返済できても、真面目で優しいラーヤはきっと、恩を感じて離婚なんて考えないでしょうから、一生あの暴君の奴隷になるわよ?」
クバラもラーヤの婚約者、ムンブリ侯爵令嬢のことが気になり、秘密裏に調査したところ… 過去に1度、婚約破棄をされていると判明した。
表向きの破棄の理由が、バングヌ伯爵家の長男ハリラヤに、ムンブリ侯爵令嬢が一目惚れしたためとなっているが… 真実は令嬢が元婚約者の従弟に暴力をふるい、ケガをさせたからだ。
金に困っているバングヌ伯爵家に目を付け、格上のムンブリ侯爵が多額の持参金を付けて、娘を長男のラーヤに押し付けた。
「一番良いのはお兄様が、ラーヤをお嫁にもらうことだけどね?」
「それだと真面目なラーヤ自身が、婚約者を優先して、私をこばむだろうな…」
<きっとラーヤは不幸になる… それがわかっていても、私に何ができると言うのだ? どれだけラーヤを愛していても、私はいずれスマンカとおなじように、皇族の義務を果たすために、近隣国へ婿入りすることになるかもしれないのに… 簡単に自分の将来も決められない私に、何ができる?>
「それもそうね… 誠実な彼なら、暴君が相手でも… きっとそうするわね…?」
しゅん… と落ちこむ、友人思いのスマンカの肩を、クバラは軽くたたいた。
「ほら、スマンカ… 学園最後の卒業パーティーをそんな寂しそうな顔で過ごす気かい? 今は忘れて、楽しんでおいで!」
「…そうね」
「君の望みどおり、ラーヤは私が助けに行くから」
「はい、お兄さま」
スマンカは仲の良い友人たちのもとへ向かい、クバラはラーヤの元へ向かった。
男性皇族の中で一番クバラが、スマンカ皇女に年齢が近く、仲が良かったからである。
他国の王族と結婚をひかえた身で、異性のパートナーを選んでは、醜聞になりかねないと、聡明なスマンカ皇女が判断したからだ。
「さぁ、スマンカ! 私の目が届く範囲で遊んでおいで! 度を越さなければ、私はうるさく注意したりしないからね」
「うふふ… クバラお兄様ったら、自分が遊びたいからでしょう? ほら、あそこにラーヤがいるわ! 暴君(婚約者のサピ)から救ってあげて?」
妹皇女の手をとり、洗練された身のこなしでキスをすると…
クバラはスマンカ皇女に揶揄われた。
「君には、敵わないなぁ!」
苦笑いを浮かべ、クバラは離れた場所で、横暴な婚約者に、従僕のようにあつかわれている、ラーヤを見つけた。
2年半前にラーヤと衝撃的な出会いをし、一目惚れをしたクバラは… ラーヤと同じ学年の妹スマンカ皇女から、ラーヤについて知っていることを、聞きだそうとした。
同じ学園に在籍していても、男性皇族のクバラは皇太子にその有能さを認められ、皇女のスマンカとは違い、皇家から重要な公務を数多く割り当てられている。
地方の有力貴族への挨拶まわりなど、毎日公務で忙しく学園を休みがちで、同じ学年の生徒ならともかく…
2年下の後輩たちとなると、顔も名前も、ほとんど知らなかった。
聡明で勘の良いスマンカは、すぐにクバラの恋心に気付き、さりげなくラーヤと仲良くなり、ついでにクバラをその仲間に加えてくれたのだ。
「ラーヤとあの暴君が結婚したら、本当にどうなるのかしら? 実家のムンブリ侯爵家から、多額の持参金を受け取ると聞いたけれど… それでバングヌ伯爵家の借金が返済できても、真面目で優しいラーヤはきっと、恩を感じて離婚なんて考えないでしょうから、一生あの暴君の奴隷になるわよ?」
クバラもラーヤの婚約者、ムンブリ侯爵令嬢のことが気になり、秘密裏に調査したところ… 過去に1度、婚約破棄をされていると判明した。
表向きの破棄の理由が、バングヌ伯爵家の長男ハリラヤに、ムンブリ侯爵令嬢が一目惚れしたためとなっているが… 真実は令嬢が元婚約者の従弟に暴力をふるい、ケガをさせたからだ。
金に困っているバングヌ伯爵家に目を付け、格上のムンブリ侯爵が多額の持参金を付けて、娘を長男のラーヤに押し付けた。
「一番良いのはお兄様が、ラーヤをお嫁にもらうことだけどね?」
「それだと真面目なラーヤ自身が、婚約者を優先して、私をこばむだろうな…」
<きっとラーヤは不幸になる… それがわかっていても、私に何ができると言うのだ? どれだけラーヤを愛していても、私はいずれスマンカとおなじように、皇族の義務を果たすために、近隣国へ婿入りすることになるかもしれないのに… 簡単に自分の将来も決められない私に、何ができる?>
「それもそうね… 誠実な彼なら、暴君が相手でも… きっとそうするわね…?」
しゅん… と落ちこむ、友人思いのスマンカの肩を、クバラは軽くたたいた。
「ほら、スマンカ… 学園最後の卒業パーティーをそんな寂しそうな顔で過ごす気かい? 今は忘れて、楽しんでおいで!」
「…そうね」
「君の望みどおり、ラーヤは私が助けに行くから」
「はい、お兄さま」
スマンカは仲の良い友人たちのもとへ向かい、クバラはラーヤの元へ向かった。
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