花嫁になれなくて。

金剛@キット

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22話 帰宅

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「おい!! アンタ誰だ?! なぁ、冗談だよな明穂?!」

 怒鳴り散らす義弟の信雄を、冷ややかな目をして、見下ろす英俊。


「高校を出てスグ就職した製菓工場が運悪く潰れてしまったから、会社の寮を出るコトになって、明穂はずっと僕と同棲していたからね…」
 
 さらりと手段を選ばない男、英俊はウソをつき、明穂は絶句する。

 昨夜、朝までかけて根掘り葉掘り明穂から聞き出した、過去の話を参考に、英俊はウソを練り上げたのだ。


 明穂には英俊のウソを否定することは出来ない。

 なぜなら・・・ 

 もし否定して真実を母に告げるコトにでもなったら・・・ 

 ソレこそ、痩せ細った母の心臓を止めかねないからだ。

 

 何しろ・・・ 
 
 就職先が潰れてから、この半年間は、 マッチングアプリで知り合った、男たちの部屋を渡り歩き・・・

 男が切れた時は、ネットカフェに泊まり、日雇いのバイトで食い繋いだりと・・・

 かなり危ない、ギリギリの生活を送っていたのだ。

<英さんは、ギョッとするような僕の半年間を・・・ 母さんたちに話さずに済むよう埋めてくれたのだ>

 明穂は英俊に任せて口を閉じ・・・ 

 思わず、策士だなぁ~っ‥と、心の中で唸った。


「・・・今まで、明穂は英俊君の家に居たのね?」

 義父の隣で心底驚いたという顔をする母。


 チラリと明穂は英俊に睨まれ・・・
<僕だって母さんを、心配させたくないよ>

 明穂は英俊のウソに、しっかりと乗っかった。

「ゴメン母さん・・・」
<本当にウソついてゴメン・・・>

「明穂が僕と同棲しているコトを、言い出せなかったのは当然です、なんせ僕は元々姉の方の恋人だったワケですし・・・」

 英俊は親密アピールで、明穂の腰をグイッと引き寄せた。
 
「カミングアウトのコトを考えたら憂鬱で・・・ 言い出せなくて」

 チラリと明穂は英俊を見上げると、上出来だと言いたげに笑って頷く。



「何だよ!! 信じらんねぇ!!クソッ」

 義弟が荒々しくドスッ、ドスッ、と足音を立て、自分の部屋がある2階へと上がって行き、ドアを乱暴にバンッと閉める音が、1階の廊下まで聞こえて来た。


「お見事! 青井くん」

 ぽそりと義兄が称賛すると、義父と母がホッと息をつく。


「我が子ながら、本当に信雄には手を焼かされるよ!」

 義父が愚痴を零す。


「思春期のホルモン大暴走が治まれば、"恋の病" も消えますよ」

 軽~く・・・ 義父を慰める英俊。


「恋の病? ・・・僕にダケ話が見えないよ?」

 明穂が首を捻ると、母と義父、義兄までが苦笑いを浮かべる。
 

「信雄が入浴中の明穂くんを、覗き見していると、気付いた時から・・・ 気が休まる日は無かったよ」

 義父が大きなため息をつく。
 

「それって・・・ 単に信雄は長湯派だから、待つのは嫌で、一緒に・・入ると・・・ 言われてみれば変な理由だな?」

<アレは僕に興味があったから・・なの・・?>


「さっき明穂くんに、信雄くんが抱き着いた時、けしてお義父さんの杞憂ではナイと確信したよ」
義兄が感慨深げに明穂を見つめる。

<アレ? もしかして、僕が信雄に襲われないか・・・ お義父さんは心配していたのか? 僕はてっきりその逆で、疎まれているのだと・・・ 思っていたけど???!!>

困惑する明穂。


「美人は苦労するね」
 義兄が笑う。


「近所でも、明穂くんは老若男女問わずにモテる、親切な美少年だと有名なんだよ」
 少しだけ自慢げな義父。


「さてと! ココからが本番だぞ明穂、しっかり気合い入れろよ?」
 明穂の肩をギュッと力強く掴む英俊。


「ええ? 今度は何?!」
 もう気分的にヘトヘトな明穂。


「進路相談さ! 確固たる理由が無い限り、簡単に拒めないぞ」

 英俊はニヤリと笑う。



 明穂は、信雄が関西の大学へ進学するのと入れ替わりに、英俊の部屋から実家に戻り専門学校へ進学するコトが決まった・・・ と、いうか容赦の無い男、英俊に決められた。







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