花嫁になれなくて。

金剛@キット

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21話 実家でパクパク

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 英俊にキツイお仕置きをされた翌日、手土産持参でスーツ姿の英俊に、実家まで連行される明穂。


「お帰りなさい明穂! まぁ痩せたわね、食事はちゃんと食べてるの?」

 玄関で母に抱きしめられ・・・

 明穂は自分よりもずっと、母の方が痩せていると顔をしかめた。


「母さんこそ・・・」
 
 自分が心配を掛けたせいで、母が痩せ細ったのかと思うと、明穂は胸が痛み涙が滲む。

「ゴメンね、帰って来なくて・・・」


 明穂の背中に英俊は暖かい手を添え、母に手土産を渡す。


「明穂くん、元気そうで何より! 寒いから、中に入って」

 義父も涙を滲ませながら、家出息子とその母親に微笑み掛ける。


 廊下には義兄もいて・・・

 好奇心を顕わに、明穂は義兄に見つめられ、居心地の悪い思いをする。

「やあ、久しぶりだね明穂くん! 薫は臨月だから、今日は家で留守番なんだ」

「お義兄さん・・・ お久しぶりです」
 
 義兄は上機嫌で、ニコニコと微笑む。

「男の子でもこれだけ美人では、青井くんが振り回されても仕方ないね」

「・・・振り回す?」



 昨夜、英俊が明穂を脅すために義兄に送信した映像は・・・

 英俊がビリビリにドレスを破き、スケスケの下着姿をさらした方の映像ではなく、 元カレの部屋で、証拠用に建樹が撮った、ベッドに鎖で繋がれた状態の明穂だった。

 どちらにしても、明穂が恥ずかしいのに、変わりはないが・・・


「画像は薫に見られないよう、スグに消去したから安心して」

 義兄はウインクしながら、真っ赤になった明穂の肩を叩く。


「情報管理は面倒ですからねぇ・・・ スマホは盗み見されやすいですし」

 英俊は義兄と笑う。


「さてと青井くん、問題の元凶はどう対処するかね?」

 義兄と英俊は一気に密談ムードに入る。

「4月から関西の大学へ進学でしょう? それまで明穂は、僕の部屋で同棲というコトで・・」


「何の話? 僕が・・・」

 義兄と英俊の会話に、自分の名前が出て、口を挟もうとする明穂は、義弟に呼ばれ話を中断する。

「いつまで待たせるんだ明穂!! 早くこっちに来いよ!」

 義弟が不機嫌そうに、居間から出て来て明穂を睨む。


「ノブはまた背が伸びて、格好良くなったね!」

 久しぶりに義弟の姿を見て、満面の笑を浮かべる明穂。


「明穂は前より可愛くてヤバいよ!!」

 義弟は褒められて、嬉しそうに明穂を抱きしめる。


「義兄さんを、呼び捨てにするのは止めなさい、信雄!」

 温和な義父が、珍しく険しい顔で注意する。


「何だよ親父! 面倒なコト・・言う・っ・・」

 不服そうに、父に言い返そうとする義弟から、英俊が明穂を奪う。


「明穂、脱がないと家の中では熱いだろう?」

 英俊は明穂のコートを脱がせた。


「アッ・・・ おい!! 明穂、ソレ! 首のソレ・・ 何だよ?!」

 義弟がギョッとした顔で、明穂を見つめ指を差し、怒鳴り出し・・・

 その場の全員が、明穂の首に凝視する。


「・・・首? 何が? ・・えええ?!」

 ワケが分からず、自分の首に触れる明穂を、背後から英俊が、腰を引き寄せ抱きしめた。


「明穂の首があんまり綺麗だから・・ スグに跡は消えると思ったのになぁ・・・」

 英俊はわざとらしく、スゴク困ってる風の、態度をとる。



<ああああ―――っ! 記念に付けてと、おねだりしたヤツだぁ!!!>


 夜明け近くまで、明穂はキツイお仕置きと、キツイ説教を交互にされ、やっと眠ったと思ったら、英俊に叩きおこされ、眠い目を擦りながら外出準備をして出て来たから・・ 

 明穂は朝から一度も、鏡を見ていないのだ。

 全ては手段を選ばない、容赦の無い男、英俊の作戦だった。

「僕たち付き合っているんです! ・・・今日はそのご報告をしに来ました」
 
 英俊は背後から、明穂の頬にキスをする。

<英さ――――――んっ!!!!!>


 明穂は真っ赤な顔で義弟を見て、口をパクパク・・・

 母と義父を見て、口をパクパク・・・
 
 義兄を見て、口をパクパク・・・
  
 最後に背後の英俊を見て、口をパクパクする前に唇にチュウウウウッと、キスされた。


 

 英俊とキスの後、明穂は口をパクパク・・・









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