花嫁になれなくて。

金剛@キット

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12話 仕事仲間 英俊side

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 大手建設会社、亀ノ島建設の会議室で、コーヒーを飲みながら、立ち話をする2人。


「青井くん・・・ 少し飛ばし過ぎじゃないか? 大丈夫?」

 中田施工のロゴ入り作業着にネクタイをした、明穂の義兄が心配そうに、英俊を見つめた。


「いえいえ、中田社長にはいつも無理を言っているので、僕も頑張らないと」

 英俊は上着を脱ぎ近くの椅子の背にかけ、ワイシャツにネクタイ姿でコーヒーを啜る。



「それにしても、明穂くんが逃げ出して1週間か・・・ まさか薫に盗み聞きされていたとは」

 渋い顔で首を振り、中田社長は大きなため息をついた。


「本当に従順そうな顔をして・・・ まんまと、して遣られました! いっそ、少し痛い目に遭った方が明穂には良い薬になりますよ」

 眉間にシワをよせ、英俊は窓の外に広がる、樹が生い茂った公園を見下ろした。

 明穂と再会した公園だ。


「おやおや・・・ 悪い人ぶって、本当は一番心配しているのは、青井くんじゃないか」

 明穂の義兄にやり返されて、英俊は苦笑いを浮かべる。



「実はホッとしてます・・・ 男だと分かっていても、アイツの艶気に毒されて、何度も危険な領域に、踏み込みそうになって、参りましたよ本当に」

<世話になっている、中田社長の身内だと思うと、簡単に手が出せない>


「フフフッ 相手が君だから・・・ 無意識のうちに誘惑してしまうのだろうね、薫が彼にやたらと突っかかるのも、男にしては綺麗な容姿が原因だと、私は思うんだ・・・ 素直で気立ても良さそうだし」

 自分よりも背の高い年下の仕事仲間を、チラリと見て様子を窺う明穂の義兄。
 

「顔は可愛いけど、アイツは頑固だし手強いですよ! 確かに性格は良いけど・・・」
 
 英俊は不満そうに、フンッと鼻を鳴らす。


「薫も明穂くんは母親思いだから、お義母さんの話を出せば、簡単に説得できると思い込んでいたし・・・ みんなあの子には惑わされてしまったな」
 
 困ったなぁと顎を撫でる、明穂の義兄。


「望み薄ですが、アイツを見つけた公園をまた、見回ってみます、今はソレぐらいしか思いつきません」
 
 明穂が最初に来ていた、百鶴女学園の制服も、英俊の部屋から無くなっていた。

 <恋人のところに戻ったのかと思うと、はらわたが煮えくり返る! アイツの誘惑に耐え抜いたオレが馬鹿みたいだ!!>

 ギリギリッと歯ぎしりする英俊。



「君から見つけたと連絡が来た時は、奇跡だと思った・・・ 調査会社に頼もうかと思っていたぐらいだから」

「本当に偶然でした、あの公園は暗くなるとゲイの間では有名な、デート相手を探すスポットだと聞いたので・・・ 少し大回りですが、駅に行くのに中を通って帰っていたダケなんです」

「そういうコトだったのか! 成程ね・・・ 忙しい時に迷惑を掛けて悪いね、だが青井くんだから明穂くんを連れ帰れたのだろうな」

 明穂の義兄も英俊と同じように、窓の外の公園を見下ろす。


「今度見つけたら、脅してでも説得しますよ! 犯罪に巻き込まれでもしたら、遅いですし」

「青井くんはやっぱり良い人だね! 私もコレ以上薫が明穂くんに嫉妬して、意地悪するのを止めさせないと」

 英俊の広い背中をパンパンと、力強く叩く明穂の義兄。


「本当に心配ばかり掛けやがって・・・ 捕まえたらお仕置きしないとな、明穂の奴!!」

 腕組みをしながら、英俊はむぅっと口を歪める。


「ソレにしても "落ちない男、青井くん" を振り回すとは、明穂くんはなかなかだね!」

 英俊の部下(女子社員)から仕入れた情報、満足そうな明穂の義兄。


「中田さんまで止めて下さいよ・・・」

 スゴク嫌そうな顔をする英俊。





  吹き出す明穂の義兄。











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