花嫁になれなくて。

3話 再会。

　自分の背後を見ると、建樹の言う通り明穂を凝視しながら、長身のビジネスマンが近づいて来た。


「…お前、薫？！」

「！！？」

　姉の名を呼ばれ、明穂は絶句した。

　明穂も話し掛けて来た相手を凝視し、目を擦り、再度凝視。


「英さん？！」

＜ウソだ？！　爽やかさが抜け落ち、ワイルド・エロメンになってるけど間違いない！！＞



　慌ててベンチから明穂は立ち上がった。
　
　スーツ姿の英俊は以前よりもはるかに大柄に見える。

＜こんなに大きな人だったっけ？＞

　

「英さん…　だよね？　僕だよ、薫の弟の明穂！！　何でココ（公園）にいるの？！」

　明穂も成長したはずなのに、昔と変わらず小さな子供のように、英俊を見上げた。


「会社が近く…　ソコの亀ノ島建設に勤めてるからだけど…　本当に明穂なのか？」

　自分の目が信じられないと、英俊は明穂を上から下までジロジロ見て、驚愕の表情を浮かべる。

「あの大きなビルが英さんの会社なの？！」

　公園から見えるビルを指差し、興奮気味に明穂は英俊に尋ねた。


「ソレより、なぁ…　明穂…　その…　性転換したのか？」

　引き気味の英俊の態度を見て、明穂は今の自分の姿を思い出した。


「最悪！！」

＜やっぱり僕は絶望的に運が悪い！！　初恋の人との再会が…　コレかよ！　ほんと即死したい！！＞



「ええっと…　スゴク可愛いぞ明穂！！」

　気を使って英俊は、果敢に明穂を褒めたが…

　気遣う英俊の誉め言葉に、明穂は耐えられず、しゃがみ込み顔を隠した。


「誤解だよ！　コレには複雑な理由が…　僕の好みではなくて…　ああああっ！！　恥ずかしいよぉ！！」

　コレこそ正に、涙！　涙！　涙！　の再会である。


「恥ずかしがらずに、もっと誇れよ明穂！　百鶴女学園の制服が良く似合ってる、スゴイ美少女になったな！！」


　決死の思いで褒めちぎる英俊も、明穂の前にしゃがみ込んだ。


「…だから違うって英さん！　お願いだから…　もう、何も言わないで！！」




　英俊が褒めれば褒めるほど、涙声になる明穂。