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7話 国王プラサ2
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「ああ、本当に残念だ!! こんなに美しいオメガを殺して、手放さなければならないなんて!」
プラサ王は渋い顔で、大きなため息をついた。
「・・・・・・」
<何てことだ! 僕は飼い殺しにされるどころか、天寿を全うすることも許されず、国王に殺されるの?!>
「お前は口数も少なくて、静かだな? こういうのも、私好みなのに、本当に残念だ!! ああ、本当に惜しい!!」
扉が叩かれ、アバホがペルデルセが嫁入り道具として持ち込んだティーカップにお茶を注いで入って来た。
変わった香りの薬草茶で、恐らく毒が入っているのだろう。
「さぁ飲め、ペルデルセ! その茶を飲めばお前は、この牢獄から解放される」
「・・・・・・」
ペルデルセはジッ… と薬草茶を見て、顔を上げカーテンが掛かる窓を見た。
<僕がここで嫌だと抵抗しても、国王が僕を殺すと言うのなら、僕は死から逃げられないのだろう>
アバホが持つトレイからカップを取り上げ、ゆっくりと飲む。
<これで… 終わる>
「あまり良い主人では無かったけれど、いつも僕を気遣ってくれてありがとうアバホ、君に感謝しているよ」
お茶を全部飲み干すと、アバホが持つトレイに戻して、礼を言った。
母国サルド王国に居た頃の従者たちに比べると、アバホはとても有能で礼儀正しく、優しい気遣いができる素晴らしい従者だった。
「お辛い立場でありながら、愚痴1つこぼさなかったペルデルセ様に、私はお仕えできて、一生の誉です!」
涙ぐみながらアバホは微笑んだ。
「そう? ふふふっ… 君を困らせてばかりいたから、嫌われてなくて良かったよ」
<これから僕は死ぬというのに、変な感じだなぁ?>
体調の悪かったペルデルセの身体に薬草茶はすぐに効き始め、頭がクラクラしたかと思うと、国王陛下の力強い腕でふわりっ… と抱き上げられた。
「今までお前もよく頑張ったなペルデルセ… 誓って言うが、私は婚姻の儀式も、番の契りも… 本当は全部出たかったのに、お前の兄メディシナが、私がお前を欲しくなると困るから、絶対に美しいペルデルセの顔を見るなと、口うるさく言われて我慢したのだ」
「メディシナ殿下が心配されるのも当然かと思いますが? なんせ陛下は9人ものお妃様がいらっしゃる、ドスケベ・アルファ様ですから」
<んんんん? …何? 何を…言っているの…? んん…? ドスケベ・アルファ?>
遠のく意識の中で、何やらおかしな会話をペルデルセは聞いた気がしたが、すぐに何も分からなくなった。
エスタシオン王国、プラサ王の10番目の妃、ペルデルセ妃はエスタシオンの気候に馴染めず、嫁いでわずか7ヶ月で病死した。
※次で最終話です。
プラサ王は渋い顔で、大きなため息をついた。
「・・・・・・」
<何てことだ! 僕は飼い殺しにされるどころか、天寿を全うすることも許されず、国王に殺されるの?!>
「お前は口数も少なくて、静かだな? こういうのも、私好みなのに、本当に残念だ!! ああ、本当に惜しい!!」
扉が叩かれ、アバホがペルデルセが嫁入り道具として持ち込んだティーカップにお茶を注いで入って来た。
変わった香りの薬草茶で、恐らく毒が入っているのだろう。
「さぁ飲め、ペルデルセ! その茶を飲めばお前は、この牢獄から解放される」
「・・・・・・」
ペルデルセはジッ… と薬草茶を見て、顔を上げカーテンが掛かる窓を見た。
<僕がここで嫌だと抵抗しても、国王が僕を殺すと言うのなら、僕は死から逃げられないのだろう>
アバホが持つトレイからカップを取り上げ、ゆっくりと飲む。
<これで… 終わる>
「あまり良い主人では無かったけれど、いつも僕を気遣ってくれてありがとうアバホ、君に感謝しているよ」
お茶を全部飲み干すと、アバホが持つトレイに戻して、礼を言った。
母国サルド王国に居た頃の従者たちに比べると、アバホはとても有能で礼儀正しく、優しい気遣いができる素晴らしい従者だった。
「お辛い立場でありながら、愚痴1つこぼさなかったペルデルセ様に、私はお仕えできて、一生の誉です!」
涙ぐみながらアバホは微笑んだ。
「そう? ふふふっ… 君を困らせてばかりいたから、嫌われてなくて良かったよ」
<これから僕は死ぬというのに、変な感じだなぁ?>
体調の悪かったペルデルセの身体に薬草茶はすぐに効き始め、頭がクラクラしたかと思うと、国王陛下の力強い腕でふわりっ… と抱き上げられた。
「今までお前もよく頑張ったなペルデルセ… 誓って言うが、私は婚姻の儀式も、番の契りも… 本当は全部出たかったのに、お前の兄メディシナが、私がお前を欲しくなると困るから、絶対に美しいペルデルセの顔を見るなと、口うるさく言われて我慢したのだ」
「メディシナ殿下が心配されるのも当然かと思いますが? なんせ陛下は9人ものお妃様がいらっしゃる、ドスケベ・アルファ様ですから」
<んんんん? …何? 何を…言っているの…? んん…? ドスケベ・アルファ?>
遠のく意識の中で、何やらおかしな会話をペルデルセは聞いた気がしたが、すぐに何も分からなくなった。
エスタシオン王国、プラサ王の10番目の妃、ペルデルセ妃はエスタシオンの気候に馴染めず、嫁いでわずか7ヶ月で病死した。
※次で最終話です。
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