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45話 禁忌の研究
しおりを挟む「"禁忌の研究" とは?!」
顔の前で手を振りながら、ディアマンテは小瓶のフェロモンを振り払う。
「オメガのフェロモンを使って、人を…アルファを操ろうという研究だよ」
フェーブリ医師もハンカチで口と鼻を押さえて話している。
「どこの国でも王族や政治の中枢にいるのはアルファだからな!」
苦々しく言い捨てるディアマンテ。
「王立医療院の院長が、自国の政治体制をも揺るがすという危険性に気付き、秘密裏にその研究を潰したのさ」
「英断だな!」
フロルとクリステルはアルファ2人の過敏な反応に眉を顰める。
「あの、とりあえず居間に行きましょう… ココでは落ち着いて話が出来ません」
フロルはディアマンテの腕を掴みグイグイ書斎の外へ引っ張り出す。
クリステルもフェーブリ医師を引っ張って連れ出す。
「フロルの薬湯をみんなで飲んではどう? 鎮静作用があるんだよね?」
「さすがクリステル! そうしましょう!!」
全員が居間のソファに座ると、フロルが薬湯をポットから注ぎオウロ公爵家の紋章が入ったティーカップを一人づつ手渡ししてゆく。
客をもてなすために、お茶を淹れるのは公爵夫人の大切な仕事である。
「それにしても… あんなモノ、どうやって作るのだ?」
薬湯で落ち着きを取り戻し、再び口を開くディアマンテ。
「人から採取したのだよ、オメガの発情時に最初は特殊な薬剤を浸した脱脂綿を身体にくっつけて採取したのだが…」
全員の動きがピタリと止まる。
「それでは効率が悪いと、項を切開し…」
「もういい!! …大体わかったから!!」
ディアマンテはフェーブリ医師の説明を途中で遮る、フロルとクリステルが顔を真っ青にしていたからだ。
「その"禁忌の研究" の研究者は?」
「5年ぐらい前に死んだよ、私も葬儀に出たから覚えている …ああ、そうそう! 何を言いに来たか思い出した!!」
「今頃か?!」
目を剥くディアマンテに苦笑するオメガ2人。
「採取したフェロモンの記録も残っていてね、さっきの小瓶と、もう一本は医療院の保管庫にあったけど、あと一本が無くなっているんだ」
「…ソレをオパーラが使ったというのだな?」
「どういう経路で渡ったかは知らないが… 違うか?」
「いや… 間違いないだろう」
「残念だが、小瓶の中身をオパーラとやらが使ったコトを証明するのは難しい」
「そうか… だが私が、ああなった原因を解明できただけでも今はホッとしている」
隣に座るフロルは大きな手をギュッと握ると、ディアマンテは微笑みキュッと握り返す。
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