愛欲人形

13話

　ガーランドホテルの一室でどっしりとしたソファに、型崩れしヨレヨレになったホスト風の派手なスーツを着込んだ身体を縮こませて座る政行。


「オレを騙すなんて…　酷いじゃないか、建樹…！」

　政行の隣に座り、涙を滲ませながら責める建樹は、橘がコーディネイトしたブランド物のスーツを名家の御曹司風にパリッと着こなしている。


「僕は恥ずかしいよ！！　政行さん…　僕だって信じていたのに！！」

　親子の向かい側から、建樹と同じく一分の隙もない姿で悠然と2人を見守る橘。 


　政行が借りた車のトランクから救出したラファエルは建樹の隣で行儀よく座っている。

「悪かったよ…　金返さないとヤバくてさぁ～　ボコボコにされてさぁ～」
　もじもじチラチラと怒る建樹を見る政行。

「ソレに泊まった先で…　僕にエッチさせたの政行さんだよね？！　お礼しないとイケナイからって！　…慰謝料取ったら詐欺だよね？！」

「最初はそんなつもりなかったんだ！　オレがセックスして礼してたのに…　建樹にも手を出したからさぁ～　頭にキテ…！」

「それで次から味をしめて、建樹を使うようになったのか？」
　向かい側に座る橘が口を挟み睨むと、政行は青い顔で俯く。

「オレだって嫌だったけど露橋の爺さんが死んで、急に出て来た親戚たちに家を追い出されて仕方なかった」

　ぼそぼそと言い訳をする政行に今度こそキレる建樹。

「だから泥棒して…　詐欺して！？　僕は…　政行さんのた…め…に…　怖くて辛いの我慢した…のに！！」

　耳や首まで真っ赤にして号泣する建樹に慌てる政行。

「露橋の爺さんが悪いんだよ！　最後まで面倒見たのに、さっさと約束通りオレと養子縁組しないから！」　

「お爺ちゃんのせいにしないで！！　お爺ちゃんは親切にしてくれたじゃないか！！」

　涙をボロボロ零しながら怒鳴る建樹に、困り果てる政行。

「建樹～　泣くなよ、オレが悪かったよ本当に～っ…」



「さてと、親子の話し合いはそのぐらいにして…　政行に会わせたい人がいる」
　
　スマホを片手にどこかに連絡し、橘は淡々と言う。

「え？　…誰？！　オーナー？！」
　

「今夜は上のスイートに宿泊している」




　怯える政行に、ニヤリと意地悪そうに笑う橘。