87 / 87
86話 その後2 ーENDー
しおりを挟む
良く晴れた穏やかな春の日。
ジェレンチ公爵家が所有する、大戦前に隣国との国境を守るために作られたペザート城で…
若い二人の結婚式が行われた。
神を背にし艶やかな漆黒の騎士服に身を包み、剣を腰に下げた剣聖オウロ公爵が威厳に満ちた声で2人に問う。
「共に歩むことを誓うか?」
「誓います―――っ!!」
「誓います―――っ!!」
元気の良い若々しい二人の声が、石造りの礼拝堂に響く。
夫、オエスチ侯爵の後継者、アルファのジェーマは王立第一騎士団の礼装を身に着け、凛々しい姿で新妻に微笑み掛けた。
妻、ジェレンチ公爵の養子でトルセールの長男、オメガのセグーロは煌びやかな近衛騎士団の礼装姿だ。
新郎新婦はともに、騎士の礼服を身に纏い、司祭を務めた剣聖同様、腰にそれぞれ剣を下げていた。
2人は瞳を輝かせて誓いのキスを交わす。
「いくつか結婚式に参列したけれど、やっぱり剣聖様の結婚式は一味ちがうねぇ~」
ニコニコと微笑みながらアディは、隣に立つ騎士の礼装姿の夫に凭れた。
「ふふふっ… その辺にいる、年を重ねただけで威張り散らす、司祭とは格が違うさ! 何しろ腕と実績を認められて剣聖になった人だからな」
デスチーノは同じ騎士として、誇らしげに剣聖を褒めると…
「おやおや、それならうちの旦那様だって、司祭ぐらい出来そうなほど偉い人だけれどね?」
揶揄うようにパチンッ… とウインクをしてアディがデスチーノを見上げた。
結婚式にはデスチーノが救い出した被害者たちの姿もあり… その中にはデスチーノの元部下と結婚して、家庭を築いている者もいる。
現在デスチーノは、剣の指南役として求められれば各騎士団を回ることもあるが…
普段は王太子の側近として大臣職に就いているため、職場は王宮内の行政府にあり、以前にも増して多忙を極めていた。
「お父様、お母様!」
息子のグランジが、デスチーノ譲りのスミレ色の瞳を曇らせて、金糸のような髪を揺らしながら、慌てて走り寄って来る。
まだ子供ではあるが、トルセールの話では…
太く長い手足が子供の頃のデスチーノにそっくりらしく、将来グランジはアルファになるだろうと、ジェレンチ公爵夫妻は確信していた。
「どうしたの、グランジ?」
アディが慌てる息子にたずねると…
「アヴェニーダが…」
困った顔でグランジが指を差す。
「んん?」
アディとデスチーノはグランジが指差した先に視線を移して見ると…
ガーデンパーティーに使う、料理を載せた長テーブルの下で、うつ伏せで転がって隠れている子供がいる。
幼い頃のアディに良く似た容姿の、薄茶の髪に琥珀色の瞳をした悪戯っ子の次男アヴェニーダだ。
基本的に貴族社会では、子供はパーティーに参加させないのが常識であり… この日ばかりは、公爵家の子供たちも城内の子供部屋に居た。
「やはり、アヴェニーダは我慢出来なかったのだな」
デスチーノは困った奴だと笑いながら、妻にそっくりの次男を溺愛していたため、面倒な悪戯を数々されても、甘い顔で笑って許してしまうのだ。
「ごめんなさい、僕は止めたけど…」
「分かっているよグランジ、あなたはいつも良いお兄さんだからね」
しょんぼりと落ち込むグランジを、アディはギュッ… と抱きしめて慰める。
「うん…」
「ほら見て、グランジ! カンタールが捕まえてくれたから、もう大丈夫だよ?」
悪戯っ子の気持ちは、悪戯っ子が一番良く理解できるらしく…
両親の言うことは聞かなくても、アヴェニーダは元悪戯っ子カンタールの言うことは良く聞くのだ。
その近くには、カンタールの妹コールと、身重のトルセールが再婚した夫、現第一騎士団の団長(デスチーノの親友で、デスチーノが団長時代に副団長をしていた騎士)と立っていた。
2年ほど前にトルセールは、オメガ研究の第一人者であるフェーブリ医師の治療を受け、時間はかかったが元夫ブラッソとの"番の契り"を解くことに成功している。
ちなみに元夫ブラッソに復縁を迫られ、トルセールは付きまとわれて困っていた時に、現在の夫がブラッソをたたきのめして追い払った。
その時の縁が、結婚へと繋がったのだ。
夜通し続くダンスパーティーの会場を、アディはこっそりと抜け出す。
ジェレンチ公爵の寝室に、アディが忍び込むと… 来るのを待っていたかのように、公爵が背後からアディを捕まえ、細い項に噛みつく。
「んんっ…!」
「おやおやアデレッソス! アルファの寝室に忍び込むなんて、はしたないぞ? もしかして君は、私と淫らな思い出作りをしたいのか?」
デスチーノは唇を項から離して、アディの耳元で囁いた。
「ふふふっ… 憧れのジェレンチ公爵様を毎日誘惑して、僕は熱くて甘い思い出が毎日欲しいのです」
結婚し出産しても、可憐な可愛らしさは、アディから少しも失われることは無かった。
「子種はもういらない?」
笑みを深くしてデスチーノがたずねると… アディはくるりと身体を回し、デスチーノにしがみ付き、耳を甘噛みしながらねだった。
「あなたの子種なら、お腹いっぱいもらっても足りないから!」
「可愛いアディ! あふれるほど注いでやる!」
「大好き、デスチーノ!!」
結婚前の恋人同士のように、いつまで経っても熱々の2人である。
エントラーダ伯爵邸で、アディがデスチーノの寝室に忍び込んだ時から始まった、2人の熱烈な思い出作りは、これからも続く…
ー END ー
○ ○ あとがき ○ ○
最後まで読んで下さり、ありがとうございました(^_^)
短編の予定が私の力不足で、倍の長さになってしまい、本当にすみません!
(また、ヤッてしまった… 反省しています)
このお話も、「その後~」まで書いたので、番外編などはありませんので、どうかご安心を(^_-)-☆
またどこかで、お会い出来れば幸いです☆彡
ジェレンチ公爵家が所有する、大戦前に隣国との国境を守るために作られたペザート城で…
若い二人の結婚式が行われた。
神を背にし艶やかな漆黒の騎士服に身を包み、剣を腰に下げた剣聖オウロ公爵が威厳に満ちた声で2人に問う。
「共に歩むことを誓うか?」
「誓います―――っ!!」
「誓います―――っ!!」
元気の良い若々しい二人の声が、石造りの礼拝堂に響く。
夫、オエスチ侯爵の後継者、アルファのジェーマは王立第一騎士団の礼装を身に着け、凛々しい姿で新妻に微笑み掛けた。
妻、ジェレンチ公爵の養子でトルセールの長男、オメガのセグーロは煌びやかな近衛騎士団の礼装姿だ。
新郎新婦はともに、騎士の礼服を身に纏い、司祭を務めた剣聖同様、腰にそれぞれ剣を下げていた。
2人は瞳を輝かせて誓いのキスを交わす。
「いくつか結婚式に参列したけれど、やっぱり剣聖様の結婚式は一味ちがうねぇ~」
ニコニコと微笑みながらアディは、隣に立つ騎士の礼装姿の夫に凭れた。
「ふふふっ… その辺にいる、年を重ねただけで威張り散らす、司祭とは格が違うさ! 何しろ腕と実績を認められて剣聖になった人だからな」
デスチーノは同じ騎士として、誇らしげに剣聖を褒めると…
「おやおや、それならうちの旦那様だって、司祭ぐらい出来そうなほど偉い人だけれどね?」
揶揄うようにパチンッ… とウインクをしてアディがデスチーノを見上げた。
結婚式にはデスチーノが救い出した被害者たちの姿もあり… その中にはデスチーノの元部下と結婚して、家庭を築いている者もいる。
現在デスチーノは、剣の指南役として求められれば各騎士団を回ることもあるが…
普段は王太子の側近として大臣職に就いているため、職場は王宮内の行政府にあり、以前にも増して多忙を極めていた。
「お父様、お母様!」
息子のグランジが、デスチーノ譲りのスミレ色の瞳を曇らせて、金糸のような髪を揺らしながら、慌てて走り寄って来る。
まだ子供ではあるが、トルセールの話では…
太く長い手足が子供の頃のデスチーノにそっくりらしく、将来グランジはアルファになるだろうと、ジェレンチ公爵夫妻は確信していた。
「どうしたの、グランジ?」
アディが慌てる息子にたずねると…
「アヴェニーダが…」
困った顔でグランジが指を差す。
「んん?」
アディとデスチーノはグランジが指差した先に視線を移して見ると…
ガーデンパーティーに使う、料理を載せた長テーブルの下で、うつ伏せで転がって隠れている子供がいる。
幼い頃のアディに良く似た容姿の、薄茶の髪に琥珀色の瞳をした悪戯っ子の次男アヴェニーダだ。
基本的に貴族社会では、子供はパーティーに参加させないのが常識であり… この日ばかりは、公爵家の子供たちも城内の子供部屋に居た。
「やはり、アヴェニーダは我慢出来なかったのだな」
デスチーノは困った奴だと笑いながら、妻にそっくりの次男を溺愛していたため、面倒な悪戯を数々されても、甘い顔で笑って許してしまうのだ。
「ごめんなさい、僕は止めたけど…」
「分かっているよグランジ、あなたはいつも良いお兄さんだからね」
しょんぼりと落ち込むグランジを、アディはギュッ… と抱きしめて慰める。
「うん…」
「ほら見て、グランジ! カンタールが捕まえてくれたから、もう大丈夫だよ?」
悪戯っ子の気持ちは、悪戯っ子が一番良く理解できるらしく…
両親の言うことは聞かなくても、アヴェニーダは元悪戯っ子カンタールの言うことは良く聞くのだ。
その近くには、カンタールの妹コールと、身重のトルセールが再婚した夫、現第一騎士団の団長(デスチーノの親友で、デスチーノが団長時代に副団長をしていた騎士)と立っていた。
2年ほど前にトルセールは、オメガ研究の第一人者であるフェーブリ医師の治療を受け、時間はかかったが元夫ブラッソとの"番の契り"を解くことに成功している。
ちなみに元夫ブラッソに復縁を迫られ、トルセールは付きまとわれて困っていた時に、現在の夫がブラッソをたたきのめして追い払った。
その時の縁が、結婚へと繋がったのだ。
夜通し続くダンスパーティーの会場を、アディはこっそりと抜け出す。
ジェレンチ公爵の寝室に、アディが忍び込むと… 来るのを待っていたかのように、公爵が背後からアディを捕まえ、細い項に噛みつく。
「んんっ…!」
「おやおやアデレッソス! アルファの寝室に忍び込むなんて、はしたないぞ? もしかして君は、私と淫らな思い出作りをしたいのか?」
デスチーノは唇を項から離して、アディの耳元で囁いた。
「ふふふっ… 憧れのジェレンチ公爵様を毎日誘惑して、僕は熱くて甘い思い出が毎日欲しいのです」
結婚し出産しても、可憐な可愛らしさは、アディから少しも失われることは無かった。
「子種はもういらない?」
笑みを深くしてデスチーノがたずねると… アディはくるりと身体を回し、デスチーノにしがみ付き、耳を甘噛みしながらねだった。
「あなたの子種なら、お腹いっぱいもらっても足りないから!」
「可愛いアディ! あふれるほど注いでやる!」
「大好き、デスチーノ!!」
結婚前の恋人同士のように、いつまで経っても熱々の2人である。
エントラーダ伯爵邸で、アディがデスチーノの寝室に忍び込んだ時から始まった、2人の熱烈な思い出作りは、これからも続く…
ー END ー
○ ○ あとがき ○ ○
最後まで読んで下さり、ありがとうございました(^_^)
短編の予定が私の力不足で、倍の長さになってしまい、本当にすみません!
(また、ヤッてしまった… 反省しています)
このお話も、「その後~」まで書いたので、番外編などはありませんので、どうかご安心を(^_-)-☆
またどこかで、お会い出来れば幸いです☆彡
31
今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
お気に入りに追加
384
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(40件)
あなたにおすすめの小説
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
恋なし、風呂付き、2LDK
蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。
面接落ちたっぽい。
彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。
占い通りワーストワンな一日の終わり。
「恋人のフリをして欲しい」
と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。
「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
英雄の帰還。その後に
亜桜黄身
BL
声はどこか聞き覚えがあった。記憶にあるのは今よりもっと少年らしい若々しさの残る声だったはずだが。
低くなった声がもう一度俺の名を呼ぶ。
「久し振りだ、ヨハネス。綺麗になったな」
5年振りに再会した従兄弟である男は、そう言って俺を抱き締めた。
──
相手が大切だから自分抜きで幸せになってほしい受けと受けの居ない世界では生きていけない攻めの受けが攻めから逃げようとする話。
押しが強めで人の心をあまり理解しないタイプの攻めと攻めより精神的に大人なせいでわがままが言えなくなった美人受け。
舞台はファンタジーですが魔王を倒した後の話なので剣や魔法は出てきません。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
nico様
いつも楽しいコメントありがとうございました!
何度も励まされ、お話を読んでもらえると思うと、更新するのがとても楽しみでした(^_^)
小柄なアディですが、元気そうなので、もう1人ぐらい生まれたかも知れませんね💗
逆にデスチーノが心配して、止めたりして^^;
無事にハッピーエンドで終わり、ホッとしております💛
最後までお付き合い下さり感謝感激です!
また、ドコかでお会いできれば幸いです☆彡
nico様
コメントありがとうございます!
1年遅れですが、公爵夫妻の新婚熱々生活が始まるようです💗
デスチーノのデレデレ爆発は確実でしょう(*´ω`*)
ココまで読んで下さり、ありがとうございます☆彡
フィナーレも間近ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです💛
nico様
コメントありがとうございます!
アディの日頃の善い行いが、出産に反映されたようです(^_^)
デスチーノが活発に動き回るアディの姿を見ていたら、逆に過保護にし過ぎて身体が弱くなり、もっと難産になっていたかも?
何が、どう転ぶかは、後になってみないとわからないモノですね(^-^;
ココまで読んで下さり、ありがとうございます☆彡