傷心オメガ、憧れのアルファを誘惑

金剛@キット

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74話 ドレスアップ2

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 デスチーノの礼装姿を、アディは過去に3度見たことがある。
 
 トルセールと長兄ブラッソの結婚式、次兄リコールの結婚式、そしてアディ自身の結婚式。

 いずれもデスチーノは騎士服の礼装姿で、剣を腰に下げ、誰よりも雄々しい姿だった。


 だが、公爵夫人の部屋へ迎えに来た今夜のデスチーノは…
 黒の糸で袖口とエリに精緻せいち刺繍ししゅうが入った紺色の上着と、揃いのパンツ。

 白のシャツに、白のクラバット(スカーフ)に、アディの瞳の色に合わせた琥珀こはくのピンを飾り…
 優雅な貴族の姿で現れた。


「わぁ~! 僕の旦那様は、なんて素敵なんだろう!!」
<デスチーノは、何を着ても似合う人なんだねぇ~っ! 素敵過ぎて、また好きになりそうっ!!>

 てのひらをパチンッ… と打ち鳴らすと、アディは喜色満面きしょくまんめんでデスチーノに抱き付いた。

「デスチーノ~っ!」

「…おおお~っ?!」
 すかさずデスチーノは、嬉しそうにアディをひょいっ… と抱き上げて… 唇をチュウッ… と長めに奪う。

「いつも綺麗だが、今夜のアディは輝くように綺麗だなぁ!」

 少しダケ唇を離してアディをめると、再びチュウッ… チュウッ… とデスチーノはキスを繰り返す。


「ええ~と、ゴホンッ! ゴホンッ! 旦那様、晩餐会の時間におくれております、お急ぎになられた方がよろしいかと?」
 デスチーノの有能な従者カディラが声をかけた。

 その後ろでは、トルセールとアディの従者フェイラが呆れ顔で笑っていた。


「はははっ… すっかり忘れるところだった!」

 カラカラと笑い声をあげ、デスチーノは上機嫌でアディを抱き上げたまま、部屋を出て階段を下りる。

 玄関ホールを出て馬車に乗っても、デスチーノはアディを膝にのせたまま座った。


「ふふふっ… 本当に困った人たちね!! 馬車の中で2人っきりにして大丈夫かしら?」
 トルセールは笑みを深くして、2人を玄関ホールで見送った。

 オエスチ侯爵邸は馬車でほんの数分の場所にあるが、熱烈に愛し合う二人には、その数分が非常に危なかった。




 侯爵邸に到着し、カディらが御者席から下りて、馬車の扉を叩き目的地に到着した合図をしたが…
 馬車からジェレンチ公爵夫妻が下りるのに、数分を要した。

 トルセールの予想通り、馬車を下りたアディは、唇をキスで赤く腫らしていた。


 従者のカディらは、トルセールから預かったアディの扇子を手渡し、2人がオエスチ侯爵邸へ入って行くのを見送ると…
 首を横にフリフリため息をついた。


「やれやれ… 旦那様のあんなにデレデレした顔は、初めて見たぞ?」


 




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今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
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