傷心オメガ、憧れのアルファを誘惑

金剛@キット

文字の大きさ
上 下
75 / 87

74話 ドレスアップ2

しおりを挟む

 デスチーノの礼装姿を、アディは過去に3度見たことがある。
 
 トルセールと長兄ブラッソの結婚式、次兄リコールの結婚式、そしてアディ自身の結婚式。

 いずれもデスチーノは騎士服の礼装姿で、剣を腰に下げ、誰よりも雄々しい姿だった。


 だが、公爵夫人の部屋へ迎えに来た今夜のデスチーノは…
 黒の糸で袖口とエリに精緻せいち刺繍ししゅうが入った紺色の上着と、揃いのパンツ。

 白のシャツに、白のクラバット(スカーフ)に、アディの瞳の色に合わせた琥珀こはくのピンを飾り…
 優雅な貴族の姿で現れた。


「わぁ~! 僕の旦那様は、なんて素敵なんだろう!!」
<デスチーノは、何を着ても似合う人なんだねぇ~っ! 素敵過ぎて、また好きになりそうっ!!>

 てのひらをパチンッ… と打ち鳴らすと、アディは喜色満面きしょくまんめんでデスチーノに抱き付いた。

「デスチーノ~っ!」

「…おおお~っ?!」
 すかさずデスチーノは、嬉しそうにアディをひょいっ… と抱き上げて… 唇をチュウッ… と長めに奪う。

「いつも綺麗だが、今夜のアディは輝くように綺麗だなぁ!」

 少しダケ唇を離してアディをめると、再びチュウッ… チュウッ… とデスチーノはキスを繰り返す。


「ええ~と、ゴホンッ! ゴホンッ! 旦那様、晩餐会の時間におくれております、お急ぎになられた方がよろしいかと?」
 デスチーノの有能な従者カディラが声をかけた。

 その後ろでは、トルセールとアディの従者フェイラが呆れ顔で笑っていた。


「はははっ… すっかり忘れるところだった!」

 カラカラと笑い声をあげ、デスチーノは上機嫌でアディを抱き上げたまま、部屋を出て階段を下りる。

 玄関ホールを出て馬車に乗っても、デスチーノはアディを膝にのせたまま座った。


「ふふふっ… 本当に困った人たちね!! 馬車の中で2人っきりにして大丈夫かしら?」
 トルセールは笑みを深くして、2人を玄関ホールで見送った。

 オエスチ侯爵邸は馬車でほんの数分の場所にあるが、熱烈に愛し合う二人には、その数分が非常に危なかった。




 侯爵邸に到着し、カディらが御者席から下りて、馬車の扉を叩き目的地に到着した合図をしたが…
 馬車からジェレンチ公爵夫妻が下りるのに、数分を要した。

 トルセールの予想通り、馬車を下りたアディは、唇をキスで赤く腫らしていた。


 従者のカディらは、トルセールから預かったアディの扇子を手渡し、2人がオエスチ侯爵邸へ入って行くのを見送ると…
 首を横にフリフリため息をついた。


「やれやれ… 旦那様のあんなにデレデレした顔は、初めて見たぞ?」


 




しおりを挟む
今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
感想 40

あなたにおすすめの小説

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

恋なし、風呂付き、2LDK

蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。 面接落ちたっぽい。 彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。 占い通りワーストワンな一日の終わり。 「恋人のフリをして欲しい」 と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。 「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。

英雄の帰還。その後に

亜桜黄身
BL
声はどこか聞き覚えがあった。記憶にあるのは今よりもっと少年らしい若々しさの残る声だったはずだが。 低くなった声がもう一度俺の名を呼ぶ。 「久し振りだ、ヨハネス。綺麗になったな」 5年振りに再会した従兄弟である男は、そう言って俺を抱き締めた。 ── 相手が大切だから自分抜きで幸せになってほしい受けと受けの居ない世界では生きていけない攻めの受けが攻めから逃げようとする話。 押しが強めで人の心をあまり理解しないタイプの攻めと攻めより精神的に大人なせいでわがままが言えなくなった美人受け。 舞台はファンタジーですが魔王を倒した後の話なので剣や魔法は出てきません。

[BL]王の独占、騎士の憂鬱

ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕 騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて… 王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...