64 / 87
63話 デスチーノの部下 デスチーノside
しおりを挟む
―――数時間、時間を巻き戻した結婚式直前の話である。
騎士団の仕事が多忙を極め、デスチーノはここ5日間、アディの顔を見ることさえ叶わず…
結婚式の当日になり、騎士団の礼拝堂でようやく顔を合わせることができた。
<部下たちの前で、あまりだらしない顔をしたくは無いが、どうしても顔がゆるんでしまう…>
騎士服に似たオメガ用の花嫁衣裳を身に着けたアディは、第一騎士団に舞い降りた守護天使とでも言うように、キリリとした清々しい威厳を纏っていた。
そんなアディが、礼拝堂にいた騎士の1人1人に、ニコリと微笑み挨拶をするのだ。
「おはようございます! 毎日ご苦労様です、お忙しい時に僕たちの結婚式に参列して頂きありがとうございます」
「お… おはようございます!! 本… 本日は… お2人のために… 空… 空も… 澄み渡った晴天で… お… おめでとうございます、奥様! どうか団長を末永くよろしくお願いします!!」
アディと会い、ハッと息を吞み… あわあわと言葉を交わした騎士団の部下たちが…
話し終えた後、みんなそろってぼんやりとアディに見惚れてしまうのも仕方がない。
「ふふふっ… どうだ! 私のアディは可愛いだろう?! 羨ましいだろう?! だが、あんまり見るなよ、アディが恥かしがるからな!」
「まさか…"暴れ雄牛"の惚気を聞くことになるとは…」
いまだ独身の副騎士団長に、デスチーノはこっそりと自慢すると、昔付けられた別称で呼ばれ、思わず苦笑いを浮かべた。
同時期に入団した副騎士団長とは昔から気が合い、デスチーノと前妻フーアとのこじれた関係も全て知っていたから… "難しい相手を選んだな" と複雑そうな顔をして、また心配している様子だ。
昔から副騎士団長は、気苦労の多い男である。
<私がエントラーダ伯爵家の令息、アデレッソスと結婚すると、副騎士団長と古参の部下たちに話した時は、全員が口には出さなかったが微妙な顔をして、"そんな評判の悪い面倒そうなオメガを選ぶなんて正気ですか" という顔をしていたが…>
デスチーノの結婚に懐疑的だった部下たちも… アディが忙しい部下たちのために、ちょっとした差し入れを持って、デスチーノの着替えを騎士団に届けに来た後は、"騎士団長の婚約者は、とても可憐で健気な愛情深いオメガ"に変わっていて、思わずデスチーノはニヤリと笑った。
ちょうどこの頃、デスチーノは… コンプラ―ル男爵が長年かけて作り上げた、人身売買のための裏組織を、一掃するための調査が大詰めをむかえていた。
第一騎士団の元騎士だった部下たちを再雇用し、コンプラ―ル男爵の周辺を見張らせ、誘拐された若い貴族たちがどのようなルートで外国に送られるかを突き止め…
同時に現役の騎士たちを、夜会に紛れ込ませ誘拐に関与した、貴族たちの内偵を進めた。
その時、エントラーダ伯爵家の次男リコールが捜査の網に引っ掛かったのだ。
「ああ、私がここまで忙しく無ければ、もっと盛大にアディを社交界に、披露してやりたかった!! 醜聞など知ったことか! 私のアディの清らかさを、見せつけてやれれば良かったのに!」
「おいおい! 嬉しいのはわかるがデスチーノ… 頼むから部下たちの前ではそういう惚気は言うなよ? デレデレするな、格好悪いぞ?!」
いくら副騎士団長に諫められてもデスチーノは…
「仕方ないだろう?! 私は5日もアディの顔を見ていなかったのだ
から!」
「ああああああ~ "暴れ雄牛" の威厳が・・・・・・」
やれやれと副騎士団長は首を横に振った。
騎士団の仕事が多忙を極め、デスチーノはここ5日間、アディの顔を見ることさえ叶わず…
結婚式の当日になり、騎士団の礼拝堂でようやく顔を合わせることができた。
<部下たちの前で、あまりだらしない顔をしたくは無いが、どうしても顔がゆるんでしまう…>
騎士服に似たオメガ用の花嫁衣裳を身に着けたアディは、第一騎士団に舞い降りた守護天使とでも言うように、キリリとした清々しい威厳を纏っていた。
そんなアディが、礼拝堂にいた騎士の1人1人に、ニコリと微笑み挨拶をするのだ。
「おはようございます! 毎日ご苦労様です、お忙しい時に僕たちの結婚式に参列して頂きありがとうございます」
「お… おはようございます!! 本… 本日は… お2人のために… 空… 空も… 澄み渡った晴天で… お… おめでとうございます、奥様! どうか団長を末永くよろしくお願いします!!」
アディと会い、ハッと息を吞み… あわあわと言葉を交わした騎士団の部下たちが…
話し終えた後、みんなそろってぼんやりとアディに見惚れてしまうのも仕方がない。
「ふふふっ… どうだ! 私のアディは可愛いだろう?! 羨ましいだろう?! だが、あんまり見るなよ、アディが恥かしがるからな!」
「まさか…"暴れ雄牛"の惚気を聞くことになるとは…」
いまだ独身の副騎士団長に、デスチーノはこっそりと自慢すると、昔付けられた別称で呼ばれ、思わず苦笑いを浮かべた。
同時期に入団した副騎士団長とは昔から気が合い、デスチーノと前妻フーアとのこじれた関係も全て知っていたから… "難しい相手を選んだな" と複雑そうな顔をして、また心配している様子だ。
昔から副騎士団長は、気苦労の多い男である。
<私がエントラーダ伯爵家の令息、アデレッソスと結婚すると、副騎士団長と古参の部下たちに話した時は、全員が口には出さなかったが微妙な顔をして、"そんな評判の悪い面倒そうなオメガを選ぶなんて正気ですか" という顔をしていたが…>
デスチーノの結婚に懐疑的だった部下たちも… アディが忙しい部下たちのために、ちょっとした差し入れを持って、デスチーノの着替えを騎士団に届けに来た後は、"騎士団長の婚約者は、とても可憐で健気な愛情深いオメガ"に変わっていて、思わずデスチーノはニヤリと笑った。
ちょうどこの頃、デスチーノは… コンプラ―ル男爵が長年かけて作り上げた、人身売買のための裏組織を、一掃するための調査が大詰めをむかえていた。
第一騎士団の元騎士だった部下たちを再雇用し、コンプラ―ル男爵の周辺を見張らせ、誘拐された若い貴族たちがどのようなルートで外国に送られるかを突き止め…
同時に現役の騎士たちを、夜会に紛れ込ませ誘拐に関与した、貴族たちの内偵を進めた。
その時、エントラーダ伯爵家の次男リコールが捜査の網に引っ掛かったのだ。
「ああ、私がここまで忙しく無ければ、もっと盛大にアディを社交界に、披露してやりたかった!! 醜聞など知ったことか! 私のアディの清らかさを、見せつけてやれれば良かったのに!」
「おいおい! 嬉しいのはわかるがデスチーノ… 頼むから部下たちの前ではそういう惚気は言うなよ? デレデレするな、格好悪いぞ?!」
いくら副騎士団長に諫められてもデスチーノは…
「仕方ないだろう?! 私は5日もアディの顔を見ていなかったのだ
から!」
「ああああああ~ "暴れ雄牛" の威厳が・・・・・・」
やれやれと副騎士団長は首を横に振った。
0
今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
恋なし、風呂付き、2LDK
蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。
面接落ちたっぽい。
彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。
占い通りワーストワンな一日の終わり。
「恋人のフリをして欲しい」
と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。
「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
君なんか求めてない。
ビーバー父さん
BL
異世界ものです。
異世界に召喚されて見知らぬ獣人の国にいた、佐野山来夏。
何かチートがありそうで無かった来夏の前に、本当の召喚者が現われた。
ユア・シノハラはまだ高校生の男の子だった。
人が救世主として召喚したユアと、精霊たちが召喚したライカの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる