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57話 エントラーダ伯爵家の闇2
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結婚式当日でさえ、休みが半日しか取れないほど、デスチーノが忙しく働いていた理由が…
王太子に依頼された、若い貴族たちの失踪事件を調査していたからだった。
「・・・・っ」
<嘘… 嘘…! 僕をコンプラ―ル男爵の愛人に? お父様に好かれているとは思わなかったけれど… 僕は本当にお父様の子供なの?!>
ずっと耐えていたアディの瞳から涙がこぼれ… 動揺で震えるアディの手を、デスチーノがギュッ… と握り締めた。
<どんな相手でも僕は貴族の子だから、妻としてなら我慢できるよ… まさか愛人として売られるなんて… 愛するデスチーノの愛人になるのかと思った時でさえ、あんなに悲しかったのに…>
涙で歪んだアディの視界に、自分の頼りない小さな手を… ギュッ… と握り締めるデスチーノの大きな手を見つけた。
<これ以上、お父様とお兄様の話を聞きたくない! 耳を塞ぎたい! でも、大切な話だからジェレンチ公爵夫人として、デスチーノの妻として、最後まで聞かないと… 嫌でも聞かないと…!!>
涙で濡れた頬を手でぬぐい、アディは向かいがわの父と兄をまっすぐ見た。
「リコールは重罪を犯した、あなたたちが次にリコールと会えるとしたら、それは処刑場になる、その時家族として会えば、エントラーダ伯爵家の名も汚辱にまみれるでしょう… その前にリコールを絶縁し、伯爵家の名が出ないよう、彼を平民として処刑させるのです」
冷ややかにデスチーノは忠告した。
「うそだ! デタラメだっ―――! 私の息子が… リコールがそんな愚かなまねをするはずが無い!!」
息子の愚行が受け入れられず、伯爵は大声で怒鳴りながら立ち上がった。
「実の息子を金で売るような、愚かな父親の息子ならば、他人の子を誘拐して売るぐらいのことは、平気でやるのでは無いのか?! 恥を知れっ―――!!!」
それまで冷静に話していたデスチーノが、伯爵に怒鳴り返した。
「何だと―――!!!」
伯爵が激昂し言い返そうとするが、その言葉を封じるように、デスチーノは激しく責め立てた。
「全部、お前が悪い!! お前の性根は腐っている!! お前が息子を腐らせたのだ!! 腐ったお前を見て育った息子は、お前をまねて腐ったのだ―――!!!」
「うるさい! 黙れ若造が! お前に何がわかる―――!!」
アディの父、伯爵自身もまた… ギャンブル狂だった性根の腐った父、先代伯爵を見て育ち、父親を軽蔑し忌み嫌っていた。
だが、先代伯爵がギャンブルで作った、多額の借金に長い間、苦しみ続けるうちに、自分自身も息子に同じ仕打ちをする、性根の腐った伯爵へと変わって行ったのだ。
今まで必死に守って来た、エントラーダ伯爵家がつぶれるのだと悟り、伯爵は泣き叫んだ。
「お前のような恵まれた奴に何がわかる―――っ!!」
王太子に依頼された、若い貴族たちの失踪事件を調査していたからだった。
「・・・・っ」
<嘘… 嘘…! 僕をコンプラ―ル男爵の愛人に? お父様に好かれているとは思わなかったけれど… 僕は本当にお父様の子供なの?!>
ずっと耐えていたアディの瞳から涙がこぼれ… 動揺で震えるアディの手を、デスチーノがギュッ… と握り締めた。
<どんな相手でも僕は貴族の子だから、妻としてなら我慢できるよ… まさか愛人として売られるなんて… 愛するデスチーノの愛人になるのかと思った時でさえ、あんなに悲しかったのに…>
涙で歪んだアディの視界に、自分の頼りない小さな手を… ギュッ… と握り締めるデスチーノの大きな手を見つけた。
<これ以上、お父様とお兄様の話を聞きたくない! 耳を塞ぎたい! でも、大切な話だからジェレンチ公爵夫人として、デスチーノの妻として、最後まで聞かないと… 嫌でも聞かないと…!!>
涙で濡れた頬を手でぬぐい、アディは向かいがわの父と兄をまっすぐ見た。
「リコールは重罪を犯した、あなたたちが次にリコールと会えるとしたら、それは処刑場になる、その時家族として会えば、エントラーダ伯爵家の名も汚辱にまみれるでしょう… その前にリコールを絶縁し、伯爵家の名が出ないよう、彼を平民として処刑させるのです」
冷ややかにデスチーノは忠告した。
「うそだ! デタラメだっ―――! 私の息子が… リコールがそんな愚かなまねをするはずが無い!!」
息子の愚行が受け入れられず、伯爵は大声で怒鳴りながら立ち上がった。
「実の息子を金で売るような、愚かな父親の息子ならば、他人の子を誘拐して売るぐらいのことは、平気でやるのでは無いのか?! 恥を知れっ―――!!!」
それまで冷静に話していたデスチーノが、伯爵に怒鳴り返した。
「何だと―――!!!」
伯爵が激昂し言い返そうとするが、その言葉を封じるように、デスチーノは激しく責め立てた。
「全部、お前が悪い!! お前の性根は腐っている!! お前が息子を腐らせたのだ!! 腐ったお前を見て育った息子は、お前をまねて腐ったのだ―――!!!」
「うるさい! 黙れ若造が! お前に何がわかる―――!!」
アディの父、伯爵自身もまた… ギャンブル狂だった性根の腐った父、先代伯爵を見て育ち、父親を軽蔑し忌み嫌っていた。
だが、先代伯爵がギャンブルで作った、多額の借金に長い間、苦しみ続けるうちに、自分自身も息子に同じ仕打ちをする、性根の腐った伯爵へと変わって行ったのだ。
今まで必死に守って来た、エントラーダ伯爵家がつぶれるのだと悟り、伯爵は泣き叫んだ。
「お前のような恵まれた奴に何がわかる―――っ!!」
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