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56話 エントラーダ伯爵家の闇
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静かな時間が数分続いたあと、ようやくデスチーノがお茶を飲み終え口を開いた。
「エントラーダ伯爵、あなたの次男リコールを今すぐ絶縁し、貴族籍から抜くことをおすすめします!」
「そ… そんなバカらしい話があるか!! いくら公爵でも、…そんな…!!」
エントラーダ伯爵の忍耐力が切れた。
「義兄上! なぜ、そのようなことを、エントラーダ伯爵家がしなくてなならないのですか?!」
長兄の方は、多少は理性が残っている様子で、話の続きを聞こうとする態度を見せる。
「・・・・っ」
<デスチーノ本当に… 何を言おうとしているの?! 何だか怖い!>
夫と父親、長兄とのそんな衝撃的なやり取りを、アディは呆然と見ていた。
「あなた方の次男リコールは、誘拐を手助けした罪で、昨夜捕縛してこの第一騎士団の地下牢に入っています、死刑は確実でしょう」
執務室の中で、デスチーノだけが変わらず理性的だった。
「なっ… 何だって?! そ… そんな嘘を誰が信じるか?!」
「バカな!!」
「先日結婚したばかりの奥方にも、今朝伝えたら、初夜さえ一緒に過ごさず、どこかへ出かけたと聞きました… 夫の義務を果たせない男だと、結婚を無効にする手続きを取るそうです… 今後、リコールは牢から出ることも無いでしょうし、すぐに受理されるはずです」
そして結婚無効の手続きと共に、エントラーダ伯爵家は多額の違約金を要求されるだろう。
長い足を組み、その上に手を乗せてデスチーノはエントラーダ親子の反応を見る。
「嘘だ―――っ!!」
目を血走らせ、泡を吹きながらエントラーダ伯爵は叫んだ。
「・・・・・・」
隣りで父親が大騒ぎするのを、止めもせず長兄は黙りこんだ。
「ブラッソ、君の方は何か心当たりがありそうだな?」
「初夜に寝室を抜け出すのを見て… 借金を返しに行くと、リコールは言っていたが…」
「あなた方が、アディを売りつけようとしていたコンプラ―ル男爵は、昔風に言うと奴隷商人のようなことをしていた」
今はコンプラ―ル男爵も、リコールと一緒に騎士団の地下牢に繋いである。
「ええ―――っ?! そ… そんな、あの人が…?!」
<コンプラ―ル男爵が!? 確かにどこか怖いところがある人だとは思ったけれど… でも本当にそんなことってあるの?!>
アディが叫び声を上げ、隣に座るデスチーノは華奢な背中に腕を回し、話を続けた。
「毎年社交シーズンになると、リコールのようなギャンブルで借金がある貴族を使って、王都に集まる貴族たちを、誘拐しては港で船に乗せ、他国へ連れて行きそこで競売にかけて売っていたのさ!」
「我々に… コンプラ―ル男爵を紹介したのも弟のリコールだった、それで金を持っていると知り… アデレッソスを愛人にしないかと父が持ち掛けたら… 伯爵家の息子なら妻にしても良いと言うから…」
ブラッソはチラリとアディを見たがすぐに視線をそらした。
「エントラーダ伯爵、あなたの次男リコールを今すぐ絶縁し、貴族籍から抜くことをおすすめします!」
「そ… そんなバカらしい話があるか!! いくら公爵でも、…そんな…!!」
エントラーダ伯爵の忍耐力が切れた。
「義兄上! なぜ、そのようなことを、エントラーダ伯爵家がしなくてなならないのですか?!」
長兄の方は、多少は理性が残っている様子で、話の続きを聞こうとする態度を見せる。
「・・・・っ」
<デスチーノ本当に… 何を言おうとしているの?! 何だか怖い!>
夫と父親、長兄とのそんな衝撃的なやり取りを、アディは呆然と見ていた。
「あなた方の次男リコールは、誘拐を手助けした罪で、昨夜捕縛してこの第一騎士団の地下牢に入っています、死刑は確実でしょう」
執務室の中で、デスチーノだけが変わらず理性的だった。
「なっ… 何だって?! そ… そんな嘘を誰が信じるか?!」
「バカな!!」
「先日結婚したばかりの奥方にも、今朝伝えたら、初夜さえ一緒に過ごさず、どこかへ出かけたと聞きました… 夫の義務を果たせない男だと、結婚を無効にする手続きを取るそうです… 今後、リコールは牢から出ることも無いでしょうし、すぐに受理されるはずです」
そして結婚無効の手続きと共に、エントラーダ伯爵家は多額の違約金を要求されるだろう。
長い足を組み、その上に手を乗せてデスチーノはエントラーダ親子の反応を見る。
「嘘だ―――っ!!」
目を血走らせ、泡を吹きながらエントラーダ伯爵は叫んだ。
「・・・・・・」
隣りで父親が大騒ぎするのを、止めもせず長兄は黙りこんだ。
「ブラッソ、君の方は何か心当たりがありそうだな?」
「初夜に寝室を抜け出すのを見て… 借金を返しに行くと、リコールは言っていたが…」
「あなた方が、アディを売りつけようとしていたコンプラ―ル男爵は、昔風に言うと奴隷商人のようなことをしていた」
今はコンプラ―ル男爵も、リコールと一緒に騎士団の地下牢に繋いである。
「ええ―――っ?! そ… そんな、あの人が…?!」
<コンプラ―ル男爵が!? 確かにどこか怖いところがある人だとは思ったけれど… でも本当にそんなことってあるの?!>
アディが叫び声を上げ、隣に座るデスチーノは華奢な背中に腕を回し、話を続けた。
「毎年社交シーズンになると、リコールのようなギャンブルで借金がある貴族を使って、王都に集まる貴族たちを、誘拐しては港で船に乗せ、他国へ連れて行きそこで競売にかけて売っていたのさ!」
「我々に… コンプラ―ル男爵を紹介したのも弟のリコールだった、それで金を持っていると知り… アデレッソスを愛人にしないかと父が持ち掛けたら… 伯爵家の息子なら妻にしても良いと言うから…」
ブラッソはチラリとアディを見たがすぐに視線をそらした。
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