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53話 結婚式2 デスチーノside
しおりを挟む結婚して初めてのキスをかわした。
お互いの唇を優しく撫でるように始めるが…
頭の芯が熱くなり、2人のキスは深くて濃いキスへとエスカレートしてゆく。
「あああ~… コホンッ…! 」
新婚のジェレンチ公爵夫妻のすぐそばで、咳ばらいが響き…
2人の結婚式で司祭を務めた、ほまれ高き剣聖が発信源だと、ジェレンチ公爵夫妻を含め、その場にいた全員が気付いた。
ハッ… と目を見開き、剣聖の咳ばらいでデスチーノは理性を取り戻した。
<まずい! いつの間にかキスに夢中に…っ!>
「後は初夜まで我慢しなさい」
何となく笑いを含んだ剣聖様の注意を受け… チュクッ… と唇と唇が離れるのを惜しむような音を立て、新婚夫婦はキスを終えた。
<危ない! 危ない! 一瞬、私たちがどこに居るのか忘れていた!!>
恐る恐るデスチーノが剣聖を見ると… 機嫌良く笑いながら、アディとデスチーノから視線をはずしてくれていた。
うっとりと琥珀色の瞳を潤ませて、アディの理性はまだ戻らないらしく、デスチーノを熱烈に見つめている。
<うう… アディ! 私のアディは、なんて可愛いのだ! 私は天使を妻にしたのか?! ああ、クソッ…! もっとアディとキスがしたい!!>
猛烈にアディの唇を奪いたくて、デスチーノは眉間に深いしわを寄せた。
「アディ…」
「はい?」
「すまない… この後、まだ仕事があってだな…」
今は社交シーズンの真っ最中で…
地方の領地から出て来た、貴族たちがあふれる王都の治安と秩序を守るのが、騎士団の主な仕事である。
そのうえ王太子殿下に依頼された、失踪した若い貴族たちの調査。
王家主催の舞踏会を警備するための準備。
社交シーズン最後の、騎士団同士の手合い(練習試合)。
目が回るほど忙しく… たとえ結婚式のためでも、デスチーノは半日休みを取るのが精一杯だった。
「はい、デスチーノ… 分かっています」
まだ頬はバラ色に染めたままだが、アディも濃厚なキスから理性を取り戻し、少し恥ずかしそうに天使のような微笑みを浮かべた。
「アディ、本当にすまない!」
「いいえ、とても嬉しいから! 少しでも早く、僕を妻にしてくれようとして… あなたは今、とても忙しいのでしょう?」
「まあ、そうだな…」
ガシガシとデスチーノは、髪をかき混ぜるように頭をかいた。
「僕はこのまま公爵邸へ戻り、あなたの帰りを待ちます」
「きっと遅くなると思う… いつものように、私を待たなくて良いから… 先に眠るように」
今夜は仕事で遅くなっても必ず帰るから、新婚初夜にそなえて、先に寝室で眠っていて欲しいというデスチーノからメッセージだ。
「はい」
2人は吸い寄せられるように、再び唇を重ねた。
参列者たちは、新婚だから仕方ないねと微笑んだ。
そんな和やかなやり取りをぶち壊すような… バタッ… バタッ… と不作法な足音を響かせ、礼拝堂に侵入する者たちがいた。
「アデレッソス―――ッ!! これはどういうことだ?!」
「クソッ! 本当だったのか、アデレッソスがジェレンチ公爵と結婚すると言う話は!! ああ、クソッ!」
「お父様?! お兄様?!」
ハッ… と息を吞み、幸福そうにバラ色だったアディの頬が、急激に青ざめてしまう。
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今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
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