49 / 87
48話 夜明けの覚醒2 デスチーノside
しおりを挟む「ええ…? 何で一人で決めてしまうの?! 僕は早くして欲しかったのに! 一瞬でも早く"番"にして欲しいよ!」
「アディ…っ…」
切実に訴えかけて来るアディの琥珀色の瞳を見て、デスチーノはドキリッ… と心臓が跳ねた。
一瞬、フーアの姿とアディが重なったからだ。
『フーア、養子を取ることにしたよ、妹に頼んだら良いと言ってくれたから… だから君はもう、子供のことで気に病む必要は無いから安心してくれ』
『養子ですって?! なぜ決める前に私に話してくれなかったのですか?!』
『なぜってそれは… 君が…』
『ええ、確かに私は子供を産めません! だから早くあなたは、新しい"番"を見つけて、私を開放して下さい!!』
―――解放。
<フーアは結婚してから、ずっと私に従順だった… だから何の不満も無く、私を愛しているからだと思っていた>
だが実際は違っていたのだ。
<立場の弱いフーアのような未婚のオメガにとって、両親が亡くなり、信頼できる保護者がいなくなるということは、死活問題に関わることだから… 結婚で私に保護され、フーアは公爵家に大きな恩があると感じてしまったようだ>
その恩をデスチーノに返そうとして、フーアはずっと従順だった。
"あなたは新しい"番"を見つけて、私を開放して下さい!!"
苦い思いが込み上げて来て、デスチーノの身体はアディの誘惑フェロモンに挑発され、熱く火照っているのに… 胸の中は冷たく凍りそうになる。
<事務弁護士に確認のために見せられた、フーアがサインした離婚の書類を少し前に見てから… フーアとの結婚生活が、何故上手く行かなかったか、私はそればかりを頭の中で繰り返してしまっている>
「ご… ごめんなさい、デスチーノ!!」
急に黙りこんでしまった、デスチーノにアディは慌ててしがみつき謝罪した。
「…アディ?」
「あ… あなたが忙しい時に、困らせてごめんなさい!ずっと顔を見られなかったから、不安で…」
「いや、困ってなどいないさ! 嬉しかった」
<タイミング悪く、うっかりフーアのことを思い出してしまった、私の方が悪い>
可愛い我がままをアディに言われて、いつものデスチーノならデレデレと大喜びしていたところだ。
「本当に? でも、とても難しい顔をしていたから…」
「私のことよりも、アディは何がそんなに不安だったのか話してくれないか?」
<不平不満を言わないから、幸せなのだと勝手に思い込むような、愚かな失敗は二度としたくない!>
0
今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
恋なし、風呂付き、2LDK
蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。
面接落ちたっぽい。
彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。
占い通りワーストワンな一日の終わり。
「恋人のフリをして欲しい」
と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。
「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
君なんか求めてない。
ビーバー父さん
BL
異世界ものです。
異世界に召喚されて見知らぬ獣人の国にいた、佐野山来夏。
何かチートがありそうで無かった来夏の前に、本当の召喚者が現われた。
ユア・シノハラはまだ高校生の男の子だった。
人が救世主として召喚したユアと、精霊たちが召喚したライカの物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる