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46話 公爵様、深夜の帰宅2
しおりを挟むアディとカディラの2人は、大男デスチーノを苦労して寝室まで連れて行くと… 騎士服を引きはがすように脱がし、ベッドにドサリッ… と転がした。
「ふう… 何とかベッドまで辿り着いて良かったねぇ~っ!」
「はい、アデレッソス様のおかげです」
寝室の扉を開いた時には、目蓋を閉じてしまっていたデスチーノは、服を脱がす間に完全に眠りへ落ちてしまったらしい。
「あははは… カディラはいつも大変だねぇ…」
裸で眠るデスチーノの肩まで、アディは笑いながら上掛けをかけた。
「こんなことは滅多にありませんよ… ただ、旦那様はとても真面目な方なので、時々やり過ぎてしまうだけなのです」
カディラは部屋中に散乱した、デスチーノから脱がせた服やブーツを拾い集めていた。
「そうかぁ… でも、まぁ僕たちがこうして、お手伝いすれば良いだけだしね… また僕に手伝えそうなことがあったら、教えてくれる?」
「はい、その時はまた、お願いしますアデレッソス様」
自分が仕える主が、まだ若く未熟でも、愛情深い良い妻を得られそうだと… カディラは心の内で、デスチーノの結婚を祝福した。
前妻フーアとの不仲を、一番近くで見ていたカディラは、ずっと心を痛めていたのだ。
カディラが寝室を出て行った後も、アディはデスチーノの熟睡する寝顔を見ていたくて、しばらく寝室へ残ることにした。
「ふふふっ… お髭がチクチクだ!」
眠るデスチーノの、髭が伸びてチクチクする顎に触れ、頬を撫で… アディは顔を撫で回して愛しんだ。
「わぁ~見た目よりも柔らかいなぁ~」
フサフサとした豊かなダークブラウンの髪を指先でもてあそび、その感触を楽しんだ後、アディはデスチーノの額にキスを落とす。
ついでに頬にもキスを落とし、顎にも落とし… 最後に唇にも、2度、3度… 5度… 7度… 名残惜しくて数え切れないほど、チュッ… チュッ… とキスを落とす。
デスチーノに教えてもらった舌を使うキスは、さすがにアディも我慢したが…。
<そろそろ僕も、部屋へ帰らないと… あ~あ… 明日もやることがいっぱいあるしなぁ…>
そう思いながら、熟睡していても数日振りに会った愛する人と離れるのが嫌で…
<誰にも見つからないよう、朝になる前に… 自分の部屋に戻れば…? 良いよね? たぶん…?>
自分にいくつか言い訳をして… アディは靴を脱いで揃えると、シャツを一枚だけ残して他の服を脱ぎ、ベッド脇の椅子の背に掛けた。
上掛けを捲ると、アディはデスチーノの隣りに潜り込み、大きな身体にペタリッ… とくっ付いた。
「お休みデスチーノ!」
スゥ… スゥ… スゥ… と規則正しいデスチーノの寝息を聞きながら、大きなあくびをして、アディは目を閉じた。
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今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
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