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41話 奇声を発する天使
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グッタリとアディは疲れ果てていた。
トルセールとテイラーたちに、次から次へと質問され…
「どの生地が好み?
色は?
レースとフリルどっちが良い?
どんな刺繍が良い?
幸運の花の刺繍?
それとも子孫繁栄の木の実の刺繍?
何色の糸で刺繍する?
銀色?
それとも金色?」
結婚式用の純白の礼装や、お披露目用の華やかな礼装、ついでだからと舞踏会用に、晩餐会用、昼の訪問着に乗馬服、それぞれの服の上に着るコート… 明日は帽子や靴、小物の買い物…
この他に、宝石商も呼んでアクセサリーも選ぶらしい。
「お義姉様にお任せしても良いですか? どうかお願いします! 私が選ぶよりも、素晴らしいものに出来上がると、僕は知っていますから!」
あまりにも決めることが多すぎて、疲れ果てたアディは、全てをトルセールに丸投げした。
そこへ救いの天使が奇声を発しながら現れて…
「兄しゃまだぁ――――――っ!!!?」
「ああ、カンタール!」
さっ… とアディは両耳を掌で塞ぎ、準備万端で待つ。
トルセールとカンタールに付き添う乳母も、アディと同様に耳を塞いだ。
「キャァァァァ――――――――――――ッ!!!」
力いっぱいカンタールが叫び… 何も知らないテイラーと従者のフェイラが犠牲になった。
もう良いかな? と塞いだ耳から掌を離すと…
カンタールはもう一度、大きく胸を膨らませてから勢いをつけるように…
「キャァァァァァァァァ――――――――――――ッ!!!」
「あはははは、すごい! すごい! でもそんなに叫んでばかりだと、お話が出来ないなぁ? 僕はカンタールとお話がしたいなぁ?」
ニコニコと微笑んで、アディは説得を試みる。
「兄しゃまと、お話しゅりゅぅ―――っ!!」
「申し訳ありません、お昼寝の前に奥様とアデレッソス様にお会いしたいと、カンタール坊ちゃまが、駄々を捏ねられまして…」
よちよち歩きのコールと手を繋いだまま、乳母が困った顔で謝り、アディはトルセールを振り返った。
視界のすみで、テイラーたちとフェイラが耳を押さえて頭を振っていた。
(耳の奥がキ―――ン… と、しているのだろう)
「お義姉様、カンタールが眠くなるまで、一緒にお庭で散歩をしてきても良いですか?」
「あらあら… ずいぶん好かれてしまったわね、アディ? カンタールをお願いしても良いかしら?」
トルセールはさすがに苦笑いを浮かべていた。
「はい、では少し席を外しますね」
アディが手を差し出すと、カンタールは小さな可愛らしい手を、ちょん… とアディの掌に乗せる。
その小さな手をキュッ… と軽く握ってやるとキャッ…! キャッ…! と可愛らしい笑い声を上げてカンタールは喜んだ。
<本当にこんなに可愛い子たちと、なぜもっと遊ばなかったのだろう?>
家庭教師から学ぶ、勉強時間が長かったという理由もあるが…
アディとしては、長兄の子供にへたな関わり方をすると、嫌味を言われるのではないかと警戒していた部分もあったのだ。
<お兄さまに嫌味ぐらい言われても、たくさん遊べば良かったなぁ>
「兄しゃま―――っ!」
「ふふふっ… お庭へ行こうか、カンタール!」
にぱっ! とカンタールが子供らしいふっくらとした丸い顔に、満面の笑を浮かべた。
<結婚したら、僕もデスチーノの子を産んで、こうしてたくさん散歩をしたいなぁ! きっと、この子たちのように可愛いだろうなぁ~>
トルセールとテイラーたちに、次から次へと質問され…
「どの生地が好み?
色は?
レースとフリルどっちが良い?
どんな刺繍が良い?
幸運の花の刺繍?
それとも子孫繁栄の木の実の刺繍?
何色の糸で刺繍する?
銀色?
それとも金色?」
結婚式用の純白の礼装や、お披露目用の華やかな礼装、ついでだからと舞踏会用に、晩餐会用、昼の訪問着に乗馬服、それぞれの服の上に着るコート… 明日は帽子や靴、小物の買い物…
この他に、宝石商も呼んでアクセサリーも選ぶらしい。
「お義姉様にお任せしても良いですか? どうかお願いします! 私が選ぶよりも、素晴らしいものに出来上がると、僕は知っていますから!」
あまりにも決めることが多すぎて、疲れ果てたアディは、全てをトルセールに丸投げした。
そこへ救いの天使が奇声を発しながら現れて…
「兄しゃまだぁ――――――っ!!!?」
「ああ、カンタール!」
さっ… とアディは両耳を掌で塞ぎ、準備万端で待つ。
トルセールとカンタールに付き添う乳母も、アディと同様に耳を塞いだ。
「キャァァァァ――――――――――――ッ!!!」
力いっぱいカンタールが叫び… 何も知らないテイラーと従者のフェイラが犠牲になった。
もう良いかな? と塞いだ耳から掌を離すと…
カンタールはもう一度、大きく胸を膨らませてから勢いをつけるように…
「キャァァァァァァァァ――――――――――――ッ!!!」
「あはははは、すごい! すごい! でもそんなに叫んでばかりだと、お話が出来ないなぁ? 僕はカンタールとお話がしたいなぁ?」
ニコニコと微笑んで、アディは説得を試みる。
「兄しゃまと、お話しゅりゅぅ―――っ!!」
「申し訳ありません、お昼寝の前に奥様とアデレッソス様にお会いしたいと、カンタール坊ちゃまが、駄々を捏ねられまして…」
よちよち歩きのコールと手を繋いだまま、乳母が困った顔で謝り、アディはトルセールを振り返った。
視界のすみで、テイラーたちとフェイラが耳を押さえて頭を振っていた。
(耳の奥がキ―――ン… と、しているのだろう)
「お義姉様、カンタールが眠くなるまで、一緒にお庭で散歩をしてきても良いですか?」
「あらあら… ずいぶん好かれてしまったわね、アディ? カンタールをお願いしても良いかしら?」
トルセールはさすがに苦笑いを浮かべていた。
「はい、では少し席を外しますね」
アディが手を差し出すと、カンタールは小さな可愛らしい手を、ちょん… とアディの掌に乗せる。
その小さな手をキュッ… と軽く握ってやるとキャッ…! キャッ…! と可愛らしい笑い声を上げてカンタールは喜んだ。
<本当にこんなに可愛い子たちと、なぜもっと遊ばなかったのだろう?>
家庭教師から学ぶ、勉強時間が長かったという理由もあるが…
アディとしては、長兄の子供にへたな関わり方をすると、嫌味を言われるのではないかと警戒していた部分もあったのだ。
<お兄さまに嫌味ぐらい言われても、たくさん遊べば良かったなぁ>
「兄しゃま―――っ!」
「ふふふっ… お庭へ行こうか、カンタール!」
にぱっ! とカンタールが子供らしいふっくらとした丸い顔に、満面の笑を浮かべた。
<結婚したら、僕もデスチーノの子を産んで、こうしてたくさん散歩をしたいなぁ! きっと、この子たちのように可愛いだろうなぁ~>
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今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
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