傷心オメガ、憧れのアルファを誘惑

金剛@キット

文字の大きさ
上 下
37 / 87

36話 食後のデザート デスチーノside ※R18

しおりを挟む
 
 
 食事を済ませたら、やはり食後のデザートが欲しくなるのは当然で…
 特に甘くて美味しそうな、可愛らしいオメガの恋人が隣にちょこんと座っていれば、成熟したアルファとしては、増々そんな気分になってしまうものである。


「デスチーノ… どうか、したのですか?」
 熱心にデスチーノがアディを観察していると… まつ毛がとても長く、頬を染めてチラリとデスチーノを見あげる顔が、何ともつやっぽいのだ。

「もうすぐ、君は私のものになる… そう思うと不思議な気分なのだよ」
 ふわりと立ちのぼる、ジャスミンの芳香にも似たアディのフェロモンが格別に心地良い。

「僕もです、だって子供の頃からずっとあなたに憧れていたから… 本当に不思議っ…!」
 アディの、このフェロモンシャワーを体験した時から、デスチーノが抑制剤で抑え込んでいる、アルファの原始的欲望が…
 アディを番にしろと、大騒ぎを始めるようになった。

「そんな可愛いことを言われては、今すぐ欲しくなってきた…」
<アルファの本能や欲望に負けてはダメだと分かっていても… 簡単には勝てないし、勝つ自信も無い>

「デスチーノ… 僕も早くあなたのものになりたい」
 うっとりと憧れを含んだ琥珀色こはくいろの瞳が、デスチーノには熱を帯びて潤んだように見えた。

 たまらずデスチーノが小さな唇を塞ぐと、ここ三日間で何度も唇を合せているから、すぐにアディから心地良い反応が返って来るようになった。

「ふうんんっ… んんっ…!」
 合わせた唇をアディが舌でくすぐり、デスチーノの口内におずおずと忍び込んで来る。

<アディ… 君にもっとたくさんみだらで気持ちの良いことを、私が教えてやる!!>
 デスチーノはこの成長ぶりに気を良くして、アディを抱き上げ自分の膝に乗せると…

「んんんんっ…?」 
 驚いて目を開けたアディは、唇を離さず合わせたまま、デスチーノの首に細い腕を回し、再び目を閉じて、ピクピクと長いまつ毛を震わせて、キスに集中する。

 チュク… チュク…ッ… チュク… チュ… チュッ… と…
 思う存分薄い舌を甘噛みをしたらデスチーノはキュッと吸い…刺激した。

 嬉しそうにアディは目を閉じたまま微笑む。


 甘い、甘い、デザートの時間はそこまでだった。





 ガチャッ…! 執務室の扉がノックも無しに、いきなり開かれ…

「ジェレンチ公爵、いるか? デスチーノ!」



 ドキッ… とアディとデスチーノは、2人同時に心臓を跳ねさせた。

「うわっ…!」
 慌ててアディはデスチーノの膝から下りようとして、背中から転げ落ちそうになり…

「危なっ…!」
 転げ落ちそうになったアディの身体を支えながら、デスチーノは一緒にソファセットの机の上にゴゴンッ…! と鈍い音を立てて転がった。 

「ううっ…」
「痛たた…」 

 2人は机の上に転がって一緒にうめいた。



「おおっとぉ…!? これはお楽しみ中に邪魔をしてしまったようだな、失礼した! うっかり自分の執務室と同じ感覚で開けてしまった!」
 扉をノック無しで突然開けた、不作法者のオエスチ侯爵はニヤリと笑って、バタンッ… と扉を閉めた。

「はぁ?!」
 真っ赤な顔でアディは口をパクパクした。

「落ち着けアディ! オエスチ侯爵は、いつもあんな感じの人だから、あまり心配しなくても良い」

「醜… 醜聞に、なったりしませんかぁ…?」

「信頼できる人だから… たぶん?」
 デスチーノは何となく不安そうだ。

「たぶん?!」
 アディが聞き返す。


「たぶん…」

「たぶん?」





しおりを挟む
今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
感想 40

あなたにおすすめの小説

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

恋なし、風呂付き、2LDK

蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。 面接落ちたっぽい。 彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。 占い通りワーストワンな一日の終わり。 「恋人のフリをして欲しい」 と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。 「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。

英雄の帰還。その後に

亜桜黄身
BL
声はどこか聞き覚えがあった。記憶にあるのは今よりもっと少年らしい若々しさの残る声だったはずだが。 低くなった声がもう一度俺の名を呼ぶ。 「久し振りだ、ヨハネス。綺麗になったな」 5年振りに再会した従兄弟である男は、そう言って俺を抱き締めた。 ── 相手が大切だから自分抜きで幸せになってほしい受けと受けの居ない世界では生きていけない攻めの受けが攻めから逃げようとする話。 押しが強めで人の心をあまり理解しないタイプの攻めと攻めより精神的に大人なせいでわがままが言えなくなった美人受け。 舞台はファンタジーですが魔王を倒した後の話なので剣や魔法は出てきません。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

[BL]王の独占、騎士の憂鬱

ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕 騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて… 王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

処理中です...