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26話 号泣
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裸の上半身に騎士服の上着を羽織りながら、アディの部屋を飛び出したデスチーノは、ちょうど階段を上って来た妹のトルセールに捕まった。
このような状況の時に、デスチーノが一番会いたくない相手である。
「お兄様?! あら? なぜ、裸なの?!」
白いシャツを手に持ったままで、上着の下に何も着ていない裸の状態のデスチーノに、トルセールは目聡く気付き煩く追及し始めた
「ああ、何でもない!」
イライラと言い放ち、自分の滞在する部屋へ戻り、デスチーノはさっさとジェレンチ公爵邸へ帰るつもりだった。
「何でもないは、無いでしょう?! お兄様、何があったの? 私は将来のエントラーダ伯爵夫人で、この邸の女主人を任されているのよ?!」
「煩いなぁ…っ! お前の方こそ自分は女主人だと言うのならば、ダンスパーティーの会場から離れても良いのか?!」
「私はアデレッソスが具合が悪いと言うから、少しだけ様子を見に来ただけです、この邸であの子のことを気にするのは、オメガの私と侍女ぐらいですからね!」
「・・・っ」
アデレッソスと聞き、デスチーノの顔が強張った。
たった今、デスチーノは当の本人を、大人げなく責め立てて泣かせたまま、ベッドに全裸で放置して来たのだから、気まずい思いぐらいして当然である。
「あ…っ! まさか、デス… あなた…! アデレッソスの部屋から出て来たの…?!」
動揺する兄の顔を見て、勘の良い妹はズバリと言い当てた。
「クソッ!」
罵りながらデスチーノは、その場から逃げるように、急ぎ足で歩き去る。
「お兄様!!」
呼び止めようとして、兄の広い背中にトルセールは声を掛けるが… 聞こえているはずなのに、デスチーノは立ち止まらずに、行ってしまう。
「何てことなの?! アデレッソスを傷つけたら、許さないから!」
鼻息荒く、トルセールは慌ててアディの部屋へ行き、扉を何度も叩くが中から応答はなく…
痺れを切らして、トルセールは勝手に扉を開き中に入ると、ベッドで裸のまま号泣するアディを見つけ、駆け寄った。
裸の身体を真っ赤に染めて、泣きじゃくる義弟に、トルセールは目のやり場に困り上掛けを掛けてやる。
「アデレッソス! お兄様が何をしたの? ああ、こんなに泣いて… 可哀そうに! 私がお兄様にきつく説教してあげるから、そんなに悲しそうに泣かないで!」
上掛けの上からトルセールが、アディの背中を撫でてやると…
「違う… 僕が悪くて… 僕は… ふうっうう… 嘘つきだから… ううっ… デスチーノを騙し…て… 傷つけてしまって… 僕が悪いから… ううっ…」
「まぁ… アデレッソスは、お兄様にいけないことをしてしまったのね? 私も一緒に謝ってあげるから、何をしたか最初から全部、私にも話してちょうだいなぁ…?」
「ううっ… ううっ… お義姉様… ふううっ… ううっ…」
3人の子供の母親であるトルセールは… 自暴自棄になっていたアディから、上手に全てを聞き出した。
このような状況の時に、デスチーノが一番会いたくない相手である。
「お兄様?! あら? なぜ、裸なの?!」
白いシャツを手に持ったままで、上着の下に何も着ていない裸の状態のデスチーノに、トルセールは目聡く気付き煩く追及し始めた
「ああ、何でもない!」
イライラと言い放ち、自分の滞在する部屋へ戻り、デスチーノはさっさとジェレンチ公爵邸へ帰るつもりだった。
「何でもないは、無いでしょう?! お兄様、何があったの? 私は将来のエントラーダ伯爵夫人で、この邸の女主人を任されているのよ?!」
「煩いなぁ…っ! お前の方こそ自分は女主人だと言うのならば、ダンスパーティーの会場から離れても良いのか?!」
「私はアデレッソスが具合が悪いと言うから、少しだけ様子を見に来ただけです、この邸であの子のことを気にするのは、オメガの私と侍女ぐらいですからね!」
「・・・っ」
アデレッソスと聞き、デスチーノの顔が強張った。
たった今、デスチーノは当の本人を、大人げなく責め立てて泣かせたまま、ベッドに全裸で放置して来たのだから、気まずい思いぐらいして当然である。
「あ…っ! まさか、デス… あなた…! アデレッソスの部屋から出て来たの…?!」
動揺する兄の顔を見て、勘の良い妹はズバリと言い当てた。
「クソッ!」
罵りながらデスチーノは、その場から逃げるように、急ぎ足で歩き去る。
「お兄様!!」
呼び止めようとして、兄の広い背中にトルセールは声を掛けるが… 聞こえているはずなのに、デスチーノは立ち止まらずに、行ってしまう。
「何てことなの?! アデレッソスを傷つけたら、許さないから!」
鼻息荒く、トルセールは慌ててアディの部屋へ行き、扉を何度も叩くが中から応答はなく…
痺れを切らして、トルセールは勝手に扉を開き中に入ると、ベッドで裸のまま号泣するアディを見つけ、駆け寄った。
裸の身体を真っ赤に染めて、泣きじゃくる義弟に、トルセールは目のやり場に困り上掛けを掛けてやる。
「アデレッソス! お兄様が何をしたの? ああ、こんなに泣いて… 可哀そうに! 私がお兄様にきつく説教してあげるから、そんなに悲しそうに泣かないで!」
上掛けの上からトルセールが、アディの背中を撫でてやると…
「違う… 僕が悪くて… 僕は… ふうっうう… 嘘つきだから… ううっ… デスチーノを騙し…て… 傷つけてしまって… 僕が悪いから… ううっ…」
「まぁ… アデレッソスは、お兄様にいけないことをしてしまったのね? 私も一緒に謝ってあげるから、何をしたか最初から全部、私にも話してちょうだいなぁ…?」
「ううっ… ううっ… お義姉様… ふううっ… ううっ…」
3人の子供の母親であるトルセールは… 自暴自棄になっていたアディから、上手に全てを聞き出した。
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今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
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