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18話 準備
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自室へと戻りアディは、次兄の結婚式に出席するためベータ女性の使用人に髪を整えてもらう間…
デスチーノに聞いた話を頭の中で思い返して、ハァ―――ッ… とおおきなため息を吐いた。
<僕は本当にいつも、なんて浅はかなのだろう?>
「アデレッソス様、この髪型は気に入りませんか?」
鏡越しに、アディの髪に細かく編み込みを入れながら… いつもアディの身の回りの世話をしてくれるベータ女性のメイドが心配そうに声を掛けて来た。
「ああ、違うよ… 少しだけ考えごとをしていたんだ、髪はこれで良いよ」
「そうですか? 何かお悩みですか、アデレッソス様?」
「うん… 悩みと言えるほどではないけど、うっかりまた失敗をしてしまって、落ち込んでいるんだよ」
「まぁ…! 私が言うと生意気ですけど、アデレッソス様のそういうところが可愛らしいと思いますけどね?」
気の良い女性で、ニコリッ… と鏡越しにアディへ笑い掛けた。
「ふふふっ… ありがとう! でも、そう思ってくれる人は、あまりいないからね」
<間違いなく父親と2人の兄たちは、バカにして嘲笑するだろうけれど… デスチーノは少しも僕を、バカにしたりはしないけど>
自分の失敗で落ち込んでいたアディを、デスチーノが抱き締めてくれたことを思い出し、やっぱり優しい人だと惚れ直していた。
<それなのに… 結局、僕だけが先にイッてデスチーノは射精していないし!! ううううう―――ッ…!>
薄っすらと頬を赤らめ、アディはまた落ち込んでいると…
コンッ… コンッ… コンッ… コンッ… と、扉が叩かれ、使用人の一人が、アディ宛に手紙を持って来た。
<もしかして、デスチーノ?!>
送り主の名前が記入されていない小さな封筒から、手紙を出して中身を読むと… 途端にアディの顔が曇った。
"お兄様の結婚式では、どうか私のパートナーとして参加して下さい、お父上には許可を頂いております。
アナタの婚約者 コンプラ―ル男爵"
「・・・・・・」
何も言わず黙ったまま、アディは手紙を入っていた封筒に戻し、自分が座る化粧台の引き出しの中にに片付けた。
<まだ、正式に婚約の発表もしていないのに… "婚約者"かぁ~…>
少し前までのデスチーノとの甘く幸せだった世界が、急激に色を失い、灰色の鬱々とした世界に変わって行くように感じた。
コンプラ―ル男爵と結婚すれば、毎日がそんな日になるのだろう。
それでもアディは幸せだと思わなければいけないのだ。
父親や兄弟たちのように、アディを厄介者のように扱わず… 少なくともコンプラ―ル男爵は、伯爵家の息子であるアディを大切に扱ってくれるのだから。
ハァ―――ッ… と吐いた自分のため息まで、アディは灰色に見えて来た。
デスチーノに聞いた話を頭の中で思い返して、ハァ―――ッ… とおおきなため息を吐いた。
<僕は本当にいつも、なんて浅はかなのだろう?>
「アデレッソス様、この髪型は気に入りませんか?」
鏡越しに、アディの髪に細かく編み込みを入れながら… いつもアディの身の回りの世話をしてくれるベータ女性のメイドが心配そうに声を掛けて来た。
「ああ、違うよ… 少しだけ考えごとをしていたんだ、髪はこれで良いよ」
「そうですか? 何かお悩みですか、アデレッソス様?」
「うん… 悩みと言えるほどではないけど、うっかりまた失敗をしてしまって、落ち込んでいるんだよ」
「まぁ…! 私が言うと生意気ですけど、アデレッソス様のそういうところが可愛らしいと思いますけどね?」
気の良い女性で、ニコリッ… と鏡越しにアディへ笑い掛けた。
「ふふふっ… ありがとう! でも、そう思ってくれる人は、あまりいないからね」
<間違いなく父親と2人の兄たちは、バカにして嘲笑するだろうけれど… デスチーノは少しも僕を、バカにしたりはしないけど>
自分の失敗で落ち込んでいたアディを、デスチーノが抱き締めてくれたことを思い出し、やっぱり優しい人だと惚れ直していた。
<それなのに… 結局、僕だけが先にイッてデスチーノは射精していないし!! ううううう―――ッ…!>
薄っすらと頬を赤らめ、アディはまた落ち込んでいると…
コンッ… コンッ… コンッ… コンッ… と、扉が叩かれ、使用人の一人が、アディ宛に手紙を持って来た。
<もしかして、デスチーノ?!>
送り主の名前が記入されていない小さな封筒から、手紙を出して中身を読むと… 途端にアディの顔が曇った。
"お兄様の結婚式では、どうか私のパートナーとして参加して下さい、お父上には許可を頂いております。
アナタの婚約者 コンプラ―ル男爵"
「・・・・・・」
何も言わず黙ったまま、アディは手紙を入っていた封筒に戻し、自分が座る化粧台の引き出しの中にに片付けた。
<まだ、正式に婚約の発表もしていないのに… "婚約者"かぁ~…>
少し前までのデスチーノとの甘く幸せだった世界が、急激に色を失い、灰色の鬱々とした世界に変わって行くように感じた。
コンプラ―ル男爵と結婚すれば、毎日がそんな日になるのだろう。
それでもアディは幸せだと思わなければいけないのだ。
父親や兄弟たちのように、アディを厄介者のように扱わず… 少なくともコンプラ―ル男爵は、伯爵家の息子であるアディを大切に扱ってくれるのだから。
ハァ―――ッ… と吐いた自分のため息まで、アディは灰色に見えて来た。
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