傷心オメガ、憧れのアルファを誘惑

金剛@キット

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14話 誘惑フェロモン デスチーノside

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 頭を下げて謝罪する、ふわふわとした金糸のような髪に包まれたアディの後頭部を見つめ、デスチーノは小さくため息を吐く。


「カディラ、お前はもう下がって良い」
 成人してからずっと仕えている、気心の知れた従者に、デスチーノは言葉は使わず、鋭い目顔めがおで邪魔はするなよと命令した。

「はい、公爵様失礼いたします」
 従者のカディラは一瞬ニヤリと笑い、慇懃無礼気味いんぎんぶれいぎみにお辞儀をしてその場を去った。


 デスチーノと付き合いが長い従者に、アディとの関係は何も話していないが…
 過去にデスチーノが付き合って来た愛人たちのことを、良く把握しているカディラは、アディの態度を見て大方読み取ってしまったのは、間違い無いだろう。


<カディラは口の堅い男だから… 妹のトルセールや他の誰かに告げ口することは無いが… まぁこのまま私が何度もアディと会い続ければ、どちらにしても知られていたに違いない>

 苦笑いを浮かべて、デスチーノは部屋の外を見まわし、カディラが去った後、人の気配が無いかを確認し…

「アディ、ずっとそこにいては、誰かに見られると面倒だから部屋に入りなさい」

「あっ?! は… はい! 公爵様、申し訳ありません!」
 顔を真っ赤にして、慌ててアディは再び謝罪を繰り返した。

「・・・・・・」
 すっかり萎縮いしゅくしてしまったアディの腕を引っ張り、室内に招き入れるとデスチーノは扉を閉めた。


 窓から差し込む陽光のおかげで、小さな顔だけでなく… 分厚く幅広なネックガードを装着した、アディの白いうなじが、金糸の髪の隙間すきまから、羞恥しゅうちでピンクに染まっているところまでデスチーノには見えた。

「それでアディ、本当はここに何で来たのだ?」

「あっ… あの… ええっとぉ… その… 僕は… 僕は… 昨夜、忍び込んだことを、お詫びしようと… その、あなたの顔が見たくなって…」

「んん? 詫びに来たのか、私の顔が見たかったのかどっちだ?」
 アディの緊張を解したくて、デスチーノは少しだけ揶揄からかってやる。

 増々、顔を真っ赤にして、琥珀色こはくいろの瞳に涙まで浮かべて、怯えるアディが可哀そうに見えるが… だが、その一方でとても可愛くも見えた。

 何度もお辞儀をしたせいで、乱れて目に掛かった、金糸のような前髪を、デスチーノはそっと指で払ってやると…


「あっ…!」
 薄く唇を開き、光の中でデスチーノを見上げるアディは、可愛いだけでなく…
 この上なく美しく魅力的なオメガで、デスチーノのアルファの本能が、アディは自分のものだと訴えかけて来た。

「あの… 公爵様?」

「・・・・・・」
 不安そうに見上げてくる表情まで魅力的で、そのままアディから目が離せなくなり、言葉を失ったデスチーノは熱を込めて見つめ続けると…

「あ… デスチーノ…?」
 琥珀色こはくいろの瞳を潤ませたアディの身体から、ふわりと甘いジャスミンの芳香に似た、オメガの誘惑フェロモンが立ち上る。
 
 原始的な欲望が、デスチーノの中で嵐のように激しく渦巻き、アディのうなじを今すぐ噛んで"つがい"にしろと命令した。

 ふわりと濃厚なアルファのフェロモンを放ち、デスチーノも全力でアディを誘惑する。


「ああっ…! んんっ…んんっ…!」
 デスチーノの強烈なフェロモンに圧倒され… 溺れたのか…

 アディの膝がガクリッ… と崩れ、赤い絨毯じゅうたんの上に座り込んでしまいそうになり、そうなる前にデスチーノは、細い腰を掴み抱き上げた。




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今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
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