13 / 87
12話 独り言
しおりを挟む
長兄と別れた後、午後から開かれる次兄の結婚式のために、準備をしようとアディは自室へ戻ろうとするが…
途中で、ふと… デスチーノの顔が見たくなり、少し遠回りをして、デスチーノが泊まる客室の前を通って自室へ戻ることにした。
『アディ、落ち着くんだ… 明日の夜は、私がアディの部屋に忍んで行くから… だからそんなに悲しそうな顔はしないでくれ』
<本当に今夜、デスチーノは来てくれるだろうか? でも、ブラッソお長兄様が言う通り… 僕はデスチーノをこの問題に巻き込むべきでは無かったのかもしれない>
現にそのことで負い目を感じているアディは、デスチーノにたくさん嘘を吐いて、抱かれる理由を誤魔化している。
「素直に… 子種を下さいと言ってみてはどうだろうか?」
<それでデスチーノに断られたら? その時はヴィードロの子種を受け入れることになる… それだけは絶対に嫌だ!! …なら、ヴィードロ以外のアルファは? そんな人が居ればの話だけれど>
自分の唇に触れ、アディは昨夜デスチーノの寝室で起きた出来事を、一つずつ順番に思い出し頬を赤らめた。
<やっぱり嫌! 暖かい唇や、優しい指先… そして圧倒されるようなアルファのフェロモンを知ってしまってからは… 僕はデスチーノのことしか考えられなくなっている!>
『いつも子供のように、夢ばかり見ているから、ヴィードロにも飽きられて捨てられたのだ! お前はもっと現実を見ろ!』
長兄の罵り声が脳裏に浮かび… 胸の奥がヒドク凍えて、アディの背中に悪寒が走った。
<だけどお長兄様… 僕がデスチーノを諦めて、ヴィードロの子種を受入れることになったら… ヴィードロの子種で生まれた子を、僕は愛す自身が無い…>
子どもを欲しがるコンプラ―ル男爵も、自分の男としてのプライドを満たす道具程度にしか、思っていない人物だ。
生みの親に愛されない子供が、幸せに育つとは、アディにはとても思えなかった。
唯一人、アディを愛してくれた母親を亡くしてから… オメガ性で生まれたアディは父には愛されず、2人の兄からも蔑まれているから、良く分かる。
ヴィードロの子種で生まれた子は、間違いなく不幸になると。
<それにヴィードロよりも、明らかにデスチーノの方が強力なアルファだと、オメガの本能が僕の心に訴えかけて来る… 強力なデスチーノを"番"にしろと>
アディは廊下の端で立ち止まり、白い枠に嵌め込まれた窓から、庭を見下ろした。
猫を追いかけて登り、アディは自力で下りれなくて、デスチーノに助けて貰った木が見えた。
<僕が子種を騙し取ろうとしていると知れば、デスチーノはきっと… 僕を軽蔑するだろう… その時、僕は耐えられるだろうか?>
途中で、ふと… デスチーノの顔が見たくなり、少し遠回りをして、デスチーノが泊まる客室の前を通って自室へ戻ることにした。
『アディ、落ち着くんだ… 明日の夜は、私がアディの部屋に忍んで行くから… だからそんなに悲しそうな顔はしないでくれ』
<本当に今夜、デスチーノは来てくれるだろうか? でも、ブラッソお長兄様が言う通り… 僕はデスチーノをこの問題に巻き込むべきでは無かったのかもしれない>
現にそのことで負い目を感じているアディは、デスチーノにたくさん嘘を吐いて、抱かれる理由を誤魔化している。
「素直に… 子種を下さいと言ってみてはどうだろうか?」
<それでデスチーノに断られたら? その時はヴィードロの子種を受け入れることになる… それだけは絶対に嫌だ!! …なら、ヴィードロ以外のアルファは? そんな人が居ればの話だけれど>
自分の唇に触れ、アディは昨夜デスチーノの寝室で起きた出来事を、一つずつ順番に思い出し頬を赤らめた。
<やっぱり嫌! 暖かい唇や、優しい指先… そして圧倒されるようなアルファのフェロモンを知ってしまってからは… 僕はデスチーノのことしか考えられなくなっている!>
『いつも子供のように、夢ばかり見ているから、ヴィードロにも飽きられて捨てられたのだ! お前はもっと現実を見ろ!』
長兄の罵り声が脳裏に浮かび… 胸の奥がヒドク凍えて、アディの背中に悪寒が走った。
<だけどお長兄様… 僕がデスチーノを諦めて、ヴィードロの子種を受入れることになったら… ヴィードロの子種で生まれた子を、僕は愛す自身が無い…>
子どもを欲しがるコンプラ―ル男爵も、自分の男としてのプライドを満たす道具程度にしか、思っていない人物だ。
生みの親に愛されない子供が、幸せに育つとは、アディにはとても思えなかった。
唯一人、アディを愛してくれた母親を亡くしてから… オメガ性で生まれたアディは父には愛されず、2人の兄からも蔑まれているから、良く分かる。
ヴィードロの子種で生まれた子は、間違いなく不幸になると。
<それにヴィードロよりも、明らかにデスチーノの方が強力なアルファだと、オメガの本能が僕の心に訴えかけて来る… 強力なデスチーノを"番"にしろと>
アディは廊下の端で立ち止まり、白い枠に嵌め込まれた窓から、庭を見下ろした。
猫を追いかけて登り、アディは自力で下りれなくて、デスチーノに助けて貰った木が見えた。
<僕が子種を騙し取ろうとしていると知れば、デスチーノはきっと… 僕を軽蔑するだろう… その時、僕は耐えられるだろうか?>
0
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
恋なし、風呂付き、2LDK
蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。
面接落ちたっぽい。
彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。
占い通りワーストワンな一日の終わり。
「恋人のフリをして欲しい」
と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。
「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
君なんか求めてない。
ビーバー父さん
BL
異世界ものです。
異世界に召喚されて見知らぬ獣人の国にいた、佐野山来夏。
何かチートがありそうで無かった来夏の前に、本当の召喚者が現われた。
ユア・シノハラはまだ高校生の男の子だった。
人が救世主として召喚したユアと、精霊たちが召喚したライカの物語。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる