12 / 87
11話 誘惑するもう一つの理由2
しおりを挟む
「まったく、よりによって子種の提供者に、義兄のジェレンチ公爵を選ぶなんて… 父上もどうかしている! 私たちの夫婦仲を壊す気か?!」
「・・・・・・」
<子種…>
アディは黙りこんでしまった。
長兄ブラッソと義姉トルセール(女性オメガ)は、意外にも恋愛結婚で結ばれていた。
義姉トルセールは、エントラーダ伯爵家よりもはるかに家格が高い、ジェレンチ公爵家出身で、そのうえ持参金もたっぷりと多く…
父は反対するどころか、この縁組を大喜びで受け入れ、長兄と義姉の結婚を許可した。
長兄と義姉の夫婦仲は非常に良く…
義姉とジェレンチ公爵デスチーノとの兄妹の仲も良い。
愛する妻の機嫌を損ねはしないかと、長兄が心配するのも仕方の無いことだった。
「いや、違うか… 子種の父親を選んだのは、お前自身だったなアデレッソス、お前が我儘を言い張ったせいで、こんなに面倒なことになって…」
長兄は忌々しいとアディを睨み付けた。
「・・・・・・」
<結婚前の思い出をデスチーノと作りたい気持ちは… 僕の本心だけど…>
憧れの人、ジェレンチ公爵デスチーノを、アディが誘惑した理由はもう一つあった。
最初に誘惑しろとアディに命令したのは、父のエントラーダ伯爵である。
元婚約者、コスタ侯爵家の長男ヴィードロと、アディが正式に結婚していれば…
エントラーダ伯爵家は、手広く事業を営んでいるコスタ侯爵家と共に共同事業を立ち上げるはずだった。
だが、ヴィードロの裏切りで婚約解消となり、醜聞まみれのアディだけが残り…
困り果てたエントラーダ伯爵は、次にコンプラ―ル男爵に目を付け、アディを手土産に共同事業の話を持ちかけた。
その条件が、"アディにアルファを産ませる"ことだった。
若い頃のケガが原因で、子種が無いコンプラ―ル男爵は、養子では満足出来ず… 男のプライドを満たすために、自分の名を持つ子を、妻に産ませたかったのだ。
「…だってお長兄様、よりによって僕を捨てたヴィードロに子種を貰えと言われたのですよ?! そんなのとても受け入れられません!」
『ヴィードロならば私が説得すれば、快く引き受けてくれるはずだ』
侯爵家の直系である元婚約者ヴィードロは、強いアルファの血を持っていて… 次兄が自分の親友だから説得が可能だと、言い出したのだ。
「どうせヴィードロに何度かその身を許したのだから、もう一度ぐらい我慢すれば良かったのだ!」
イライラと長兄に説教をされ、アディの顔が青ざめて行く。
「そんな…」
「いつも子供のように、夢ばかり見ているから、ヴィードロにも飽きられて捨てられたのだ! お前はもっと現実を見ろ!」
「ですがお長兄様…」
「良いか、これでお前が失敗して、コンプラ―ル男爵との共同事業の話が流れれば、いよいよエントラーダ伯爵家は借金で家屋敷や領地全てを売り払わなければならなくなるのだ」
前エントラーダ伯爵が、ギャンブル狂だったために… アディの父が爵位と領地を継ぐ時、共に多額の借金まで背負うことになったのだ。
「分かっています…」
「その綺麗なレースのシャツもお前は着られなくなるのだぞ?!」
「分かっています…」
「大人になれ、アデレッソス!」
「・・・・・っ」
「・・・・・・」
<子種…>
アディは黙りこんでしまった。
長兄ブラッソと義姉トルセール(女性オメガ)は、意外にも恋愛結婚で結ばれていた。
義姉トルセールは、エントラーダ伯爵家よりもはるかに家格が高い、ジェレンチ公爵家出身で、そのうえ持参金もたっぷりと多く…
父は反対するどころか、この縁組を大喜びで受け入れ、長兄と義姉の結婚を許可した。
長兄と義姉の夫婦仲は非常に良く…
義姉とジェレンチ公爵デスチーノとの兄妹の仲も良い。
愛する妻の機嫌を損ねはしないかと、長兄が心配するのも仕方の無いことだった。
「いや、違うか… 子種の父親を選んだのは、お前自身だったなアデレッソス、お前が我儘を言い張ったせいで、こんなに面倒なことになって…」
長兄は忌々しいとアディを睨み付けた。
「・・・・・・」
<結婚前の思い出をデスチーノと作りたい気持ちは… 僕の本心だけど…>
憧れの人、ジェレンチ公爵デスチーノを、アディが誘惑した理由はもう一つあった。
最初に誘惑しろとアディに命令したのは、父のエントラーダ伯爵である。
元婚約者、コスタ侯爵家の長男ヴィードロと、アディが正式に結婚していれば…
エントラーダ伯爵家は、手広く事業を営んでいるコスタ侯爵家と共に共同事業を立ち上げるはずだった。
だが、ヴィードロの裏切りで婚約解消となり、醜聞まみれのアディだけが残り…
困り果てたエントラーダ伯爵は、次にコンプラ―ル男爵に目を付け、アディを手土産に共同事業の話を持ちかけた。
その条件が、"アディにアルファを産ませる"ことだった。
若い頃のケガが原因で、子種が無いコンプラ―ル男爵は、養子では満足出来ず… 男のプライドを満たすために、自分の名を持つ子を、妻に産ませたかったのだ。
「…だってお長兄様、よりによって僕を捨てたヴィードロに子種を貰えと言われたのですよ?! そんなのとても受け入れられません!」
『ヴィードロならば私が説得すれば、快く引き受けてくれるはずだ』
侯爵家の直系である元婚約者ヴィードロは、強いアルファの血を持っていて… 次兄が自分の親友だから説得が可能だと、言い出したのだ。
「どうせヴィードロに何度かその身を許したのだから、もう一度ぐらい我慢すれば良かったのだ!」
イライラと長兄に説教をされ、アディの顔が青ざめて行く。
「そんな…」
「いつも子供のように、夢ばかり見ているから、ヴィードロにも飽きられて捨てられたのだ! お前はもっと現実を見ろ!」
「ですがお長兄様…」
「良いか、これでお前が失敗して、コンプラ―ル男爵との共同事業の話が流れれば、いよいよエントラーダ伯爵家は借金で家屋敷や領地全てを売り払わなければならなくなるのだ」
前エントラーダ伯爵が、ギャンブル狂だったために… アディの父が爵位と領地を継ぐ時、共に多額の借金まで背負うことになったのだ。
「分かっています…」
「その綺麗なレースのシャツもお前は着られなくなるのだぞ?!」
「分かっています…」
「大人になれ、アデレッソス!」
「・・・・・っ」
0
今回の名前はブラジル・ポルトガル語にお世話になりました。アデレッソス→アクセサリー、デスチーノ→行き先、ジェレンチ→支配人、コンプラ―ル→買う、エントラーダ→入口、ヴィードロ→ガラス、トルセール→応援する、フーア→街路、 ラテン系の単語は何となく色気があって素敵ですよねぇ~☆彡
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説
恋なし、風呂付き、2LDK
蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。
面接落ちたっぽい。
彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。
占い通りワーストワンな一日の終わり。
「恋人のフリをして欲しい」
と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。
「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
英雄の帰還。その後に
亜桜黄身
BL
声はどこか聞き覚えがあった。記憶にあるのは今よりもっと少年らしい若々しさの残る声だったはずだが。
低くなった声がもう一度俺の名を呼ぶ。
「久し振りだ、ヨハネス。綺麗になったな」
5年振りに再会した従兄弟である男は、そう言って俺を抱き締めた。
──
相手が大切だから自分抜きで幸せになってほしい受けと受けの居ない世界では生きていけない攻めの受けが攻めから逃げようとする話。
押しが強めで人の心をあまり理解しないタイプの攻めと攻めより精神的に大人なせいでわがままが言えなくなった美人受け。
舞台はファンタジーですが魔王を倒した後の話なので剣や魔法は出てきません。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
[BL]王の独占、騎士の憂鬱
ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕
騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて…
王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる