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10話 誘惑するもう一つの理由
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いつもと同じ時間に目覚め、アディは冷たい水で顔を洗った。
今日は午後から次兄の結婚式で、すぐにアディも礼服へと着替えなければいけないと分かっていても…
もしかすると、デスチーノに何処かで会うカモ知れないと期待し、少しでも自分が魅力的に見えるように、衿にレースのリボンがついた白いシャツに袖を通す。
「あ…っ!」
昨夜デスチーノに愛撫をされて、敏感になってしまった小さな乳首が柔らかい布地でこすれて刺激され… ヂクヂクと疼き出してしまう。
感じてしまった乳首にシャツの上から掌を当てて、アディは疼きを愛しんだ。
ヂクヂクが治まると、繊細な刺繍が入った、顔色が良く見えるペールオレンジのベストと揃いの上着を身に付ける。
髪を念入りに整えると、アディはニコニコと微笑みながら、機嫌良く家族用の朝食室へと向かった。
「おはようございます、お父様、ブラッソお長兄様、リコールお次兄様」
朝食室へ入ると、アディは丁寧に朝の挨拶を済ませた。
「おはよう、アデレッソス」
淡々と日課の1つをこなすように、長兄ブラッソだけがアディに挨拶を返す。
義姉トルセールは毎朝、ベッドの上で朝食を摂るため、朝食室では滅多に会わないのだ。
壁際のテーブルに並べられた、朝食が盛られた大皿から、自分の皿に料理を取り分けると…
父親から一番離れた末席へ、アディは腰を下ろした。
給仕係が置いたティーカップを手に取り、アディは淹れたてのお茶の芳香を堪能してから一口飲んだ。
「ずいぶん起きるのが早いなアデレッソス、 昨夜は失敗したのか?」
父親のエントラーダ伯爵は、アディに朝の挨拶も返さず冷たい視線を寄こす。
「お父様、それは…」
父親の質問に言い淀み、アディはティーカップをカチャッ… と小さな音を立ててテーブルに置いた。
昨夜、デスチーノに可愛がられて、幸福感でいっぱいだったアディの胸の温もりが、急激に凍てついて行く。
「どうなんだアデレッソス? はっきり答えろ!」
次兄がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら、父の質問の返答をアディに催促した。
「昨夜は… ジェレンチ公爵様には… とても良くしてもらいました」
小さな声でアディが答えると…
「"良く"とはどれぐらい良くしてもらったのだ?」
父親はアディの答えに満足せず、追求する。
「今夜、私の部屋で… 公爵様に約束をしてもらいました」
膝の上でアディは小さな拳をギュッ… と握り締めた。
「そうか、上手くやりなさい」
「はい」
「コンプラ―ル男爵には、お前から報告するように」
「はい、お父様」
朝食を載せた皿の、金の縁取りをジッ… と見下ろしたまま、朝食を食べ終わるまで、アディは家族と目を合せることは一度も無かった。
<こんな時、お母様が居れば僕も少しはこの人たちに馴染めたのに…>
数年前、アディの母親は4人目の子供を出産する時、母子共々命を落としてしまった。
父親や兄たちと同じ部屋にいることが苦痛になり、アディは早々に食べ終える。
朝食室を出て階段まで来たところで…
アディの後を追って来た、長兄ブラッソに呼び止められた。
「アデレッソス」
「ブラッソお長兄様?」
階段前で立ちどまったアディの腕を掴み、階段の陰に行き長兄は声を潜めて注意する。
「くれぐれもトルセールには、このことを知られないようにしてくれよ?」
「・・・・・・」
「まったく、よりによって子種の提供者に、義兄のジェレンチ公爵を選ぶなんて… 父上もどうかしている! 私たちの夫婦仲を壊す気か?!」
「・・・・・・」
<子種…>
今日は午後から次兄の結婚式で、すぐにアディも礼服へと着替えなければいけないと分かっていても…
もしかすると、デスチーノに何処かで会うカモ知れないと期待し、少しでも自分が魅力的に見えるように、衿にレースのリボンがついた白いシャツに袖を通す。
「あ…っ!」
昨夜デスチーノに愛撫をされて、敏感になってしまった小さな乳首が柔らかい布地でこすれて刺激され… ヂクヂクと疼き出してしまう。
感じてしまった乳首にシャツの上から掌を当てて、アディは疼きを愛しんだ。
ヂクヂクが治まると、繊細な刺繍が入った、顔色が良く見えるペールオレンジのベストと揃いの上着を身に付ける。
髪を念入りに整えると、アディはニコニコと微笑みながら、機嫌良く家族用の朝食室へと向かった。
「おはようございます、お父様、ブラッソお長兄様、リコールお次兄様」
朝食室へ入ると、アディは丁寧に朝の挨拶を済ませた。
「おはよう、アデレッソス」
淡々と日課の1つをこなすように、長兄ブラッソだけがアディに挨拶を返す。
義姉トルセールは毎朝、ベッドの上で朝食を摂るため、朝食室では滅多に会わないのだ。
壁際のテーブルに並べられた、朝食が盛られた大皿から、自分の皿に料理を取り分けると…
父親から一番離れた末席へ、アディは腰を下ろした。
給仕係が置いたティーカップを手に取り、アディは淹れたてのお茶の芳香を堪能してから一口飲んだ。
「ずいぶん起きるのが早いなアデレッソス、 昨夜は失敗したのか?」
父親のエントラーダ伯爵は、アディに朝の挨拶も返さず冷たい視線を寄こす。
「お父様、それは…」
父親の質問に言い淀み、アディはティーカップをカチャッ… と小さな音を立ててテーブルに置いた。
昨夜、デスチーノに可愛がられて、幸福感でいっぱいだったアディの胸の温もりが、急激に凍てついて行く。
「どうなんだアデレッソス? はっきり答えろ!」
次兄がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら、父の質問の返答をアディに催促した。
「昨夜は… ジェレンチ公爵様には… とても良くしてもらいました」
小さな声でアディが答えると…
「"良く"とはどれぐらい良くしてもらったのだ?」
父親はアディの答えに満足せず、追求する。
「今夜、私の部屋で… 公爵様に約束をしてもらいました」
膝の上でアディは小さな拳をギュッ… と握り締めた。
「そうか、上手くやりなさい」
「はい」
「コンプラ―ル男爵には、お前から報告するように」
「はい、お父様」
朝食を載せた皿の、金の縁取りをジッ… と見下ろしたまま、朝食を食べ終わるまで、アディは家族と目を合せることは一度も無かった。
<こんな時、お母様が居れば僕も少しはこの人たちに馴染めたのに…>
数年前、アディの母親は4人目の子供を出産する時、母子共々命を落としてしまった。
父親や兄たちと同じ部屋にいることが苦痛になり、アディは早々に食べ終える。
朝食室を出て階段まで来たところで…
アディの後を追って来た、長兄ブラッソに呼び止められた。
「アデレッソス」
「ブラッソお長兄様?」
階段前で立ちどまったアディの腕を掴み、階段の陰に行き長兄は声を潜めて注意する。
「くれぐれもトルセールには、このことを知られないようにしてくれよ?」
「・・・・・・」
「まったく、よりによって子種の提供者に、義兄のジェレンチ公爵を選ぶなんて… 父上もどうかしている! 私たちの夫婦仲を壊す気か?!」
「・・・・・・」
<子種…>
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