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26話 混乱
しおりを挟む自分が番のガロテ以外のアルファを、人違いで受け入れたうえに… 重ねて『番の契り』まで交わしてしまったと知り、ヒラソルは身体が拒絶反応を起こし、自分は死んでしまうと思い込み、ガタガタと震え泣き出した。
「おい、ヒラソル?! ヒラソル?!」
「…っ僕は死ぬんだ! 死ぬんだ! ううっ… お父様… お母さま… ごめんなさい! ごめんなさい… ううっ… 僕は親不孝者です! ごめんなさい… うううっ… ううっ…」
ヒラソルに人違いされて、2人目の番となった王太子ラティゴが何度呼びかけても… 怯え切ったヒラソルは、ガタガタと震えるばかりで、ラティゴの呼びかけに反応しなかった。
「…まったく、仕方ない!」
ラティゴはヒラソルに呼びかけるのをあきらめ… ヒラソルのもう1人の番、ガロテを祝賀パーティーの会場から呼び寄せることにした。
ガロテがバンッ…!! と乱暴に扉を開き、呼び出した王太子ラティゴと、怯えてガタガタ震えるヒラソルの元へやってきた。
「ヒラソル?! なぜお前がここにいるんだ?! なぜ震えているんだ?! ヒラソル…? おい、ヒラソル?!」
ベッドで上掛けにくるまり、ガタガタと震えるヒラソルを抱きあげ、ガロテはベッドに腰をおろし、呼びかけるが…
「うう… ううっ… ひっくぅ… ごめんさい… ごめんなさい…」
「おい、ラティゴ!! オレの番に何をした…?!」
ガロテが呼びかけても、混乱し怯え切ったヒラソルは、泣いてばかりで答えず… いらだったガロテは、王太子ラティゴを怒鳴りつけた。
「アルマドゥラ、私も半信半疑だったが… 本当にヒラソルは、お前の番だったのだな?」
苦笑を浮かべて、ラティゴはハァ――… とため息をつく。
「そうだ! 昼間襲われていたヒラソルを助け出して、お前の治癒魔法でケガを直したあと、王宮に連れて来て気に入ったから、オレの番にした!」
チュッ… とガロてはヒラソルの額にキスを落とす。
それを見ていたラティゴの左目が、ピクッ… と不快そうに痙攣した。
「ヒラソルは暗い裏庭で、私のフェロモンをお前のフェロモンだと勘違いして… 私をオメガのフェロモンで誘惑し… 私はヒラソルを抱いて気に入ったから、『番の契り』を交した」
ラティゴは意地悪な笑みを浮かべてガロテに説明した。
「なっ?! 本当なのか、ヒラソル…?!」
「ううっ…」
「ヒラソル?!」
「うう… ごめんなさい、ガロテ様… 間違えました」
「なっ…! 身体は…? 身体は大丈夫なのか?!」
ガロテもヒラソルと同じように、顔を強張らせて真っ青になる。
そんな2人を見て、ラティゴはプハッ!と吹き出し、カラカラと笑いだした。
「はははははっ…! 『暴虐のドラゴン』を前にしても、不敵に笑っていたお前の、青ざめる顔が見れるとはな! 討伐から生きて帰って、つくづく良かったと思うぞ!」
「ラティゴ…?! お前、何を笑っているんだ?! お前はオレの番を殺しかけているんだぞ――っ?!」
顔を真っ赤にして、ガロテは腰に下げた剣を抜きそうな勢いで、怒鳴った。
面白い見世物を見たとニヤニヤと笑いながら、ラティゴは口を開いた。
「いや、結論から言うと… ヒラソルは死なない!」
「何っ?!」
「えっ?!」
悲壮感をただよわせ、怯えていたヒラソルも、顔を真っ赤にして怒り狂っていたガロテも、ラティゴの言葉に不意をつかれ、2人一緒にポカ~ンと口を開く。
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