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20話 暗い庭

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 月明かりの下、祝賀パーティーの会場へ向かって歩いていると… ヒラソルが良く知るアルファのフェロモンを、かすかに感じて立ちどまった。
 すでに『つがいちぎり』を交しているヒラソルが、感じられるのはつがいであるガロテのアルファ・フェロモンだけである。


「このフェロモンは… ガロテ様のフェロモン?」
 ガロテ様が近くにいるの? なんで、こんなところにいるの?! 

 ヒラソルはふたたび歩き出すと、風にのって流れて来るアルファ・フェロモンは、少しずつ濃度が増して行く。

「ああ… ガ… ガロテ様…!」
 会いたいなぁ… やっぱり顔だけでも見たいなぁ?! ここで離れたら… たぶん一生、ガロテ様とは会えないから! 

 じわりと心地良い濃厚なフェロモンが、ヒラソルの欲望を熱くする。
 このままガロテには会わず、家へ帰ろうと決めていたのに… つがいのフェロモンを感じたとたん、ヒラソルの決心は簡単にくだけ散ってしまう。

 ヒラソルはガロテと愛情が芽生めばえる前に、別れる決意をして逃げ出した。
 …だが、『つがいちぎり』を交したばかりのヒラソルは… つがいとなった者たちの、身体的な結びつきと、本能的な結びつきの強さを甘く見ていたのだ。


「遠くからで良い! ガロテ様の姿を僕の記憶に焼き付けたい!」
 ガロテのフェロモンに引きよせられるように、ヒラソルはふらふらと歩く。

 近づけば近づくほどフェロモンも当然、強くなり… ヒラソルの欲望もどんどん熱くなる。

『ガロテ様の姿を一目だけ見たい!』という欲望が…
『もう一度、ガロテ様に触れたい!』へと変わる。
 そして…
『ガロテ様に抱いて欲しい!!』 …とオメガの本能が暴走し、発情するのに時間はかからなかった。


「ガロテ様… ガロテ様… どこにいるの?! 会いたいよぉ… 会いたいよぉ…!」
 自分が逃げ出そうとしていたことなど、頭から抜け落ち… ヒラソルの、つがいに対する強い結びつきから、執着心が目覚めてしまう。


 発情した自分の身体からも、オメガの誘惑フェロモンを大量に放ちながら… ヒラソルはアルファ・フェロモンをたどり、王宮の暗い庭をつがいをさがして彷徨さまよった。






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