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12話 求婚 ガロテside

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 意識を取り戻すまではわからなかったが… 目覚めたヒラソルと話してみて、ガロテは久しぶりに『オレ好みの可愛いオメガに会った』と感じた。

「……」
 勇者アルマドゥラの名声に、吸い寄せられて集まったオメガたちには、羞恥心しゅうちしんなどまるでなく… むしろ汚い手を平気で使い、誘惑フェロモンでオレをわなにかけ、『さぁ、今すぐ貪れ!』…と言わんばかりに、発情した身体をオレの前に投げ出した。
 娼館で抱いた男娼のほうが、もっと恥じらいがあると思えるほどだ。

 そんな恥知らずなオメガばかりを、最近はずっと見ていたから、普通の反応を示すヒラソルが、ガロテにはひたすら可愛く新鮮に見えた。

「ガロテ様…?」 
 キラキラと輝く瞳でヒラソルは、上目づかいでガロテを見る。
 湯の中で少しのぼせてしまったらしく、ヒラソルの身体はピンクにそまり… 誘惑フェロモンは、お湯でほとんど流れ落ちてしまったのに、何とも言えないつやっぽさがある。

「どうした、ヒラソル…?」
 ただ一つ気がかりなのは… オレが呼ばれ慣れた、父に付けられたほうの名まえ『ガロテ』と、ヒラソルに名乗ったことだ。
 国王の野郎はオレの名前までけなして、勝手に『アルマドゥラ』 …という、新しい名前を寄こしやがった!! 思いだすといまだに腹が立つ! さすがに国王には逆らえないから黙って受け入れたが… ああ、クソッ…!!

 勇者『アルマドゥラ』の名は、王家から与えられた名前であり… けしてガロテはヒラソルに偽名ぎめいを名乗った訳ではない。
 …ただ、勇者『アルマドゥラ』の名前のほうが有名なため、ガロテは少しだけ気まずさを感じているのだ。


 ガロテの腕の中で、もじもじと恥ずかしそうにヒラソルはうつむく。
「あ… あの…? ガロテ様… 僕の話を聞いてもらえますか…?」

「ああ、ヒラソル… 遠慮しないで言ってみろ?」
 ふふふっ… まいったな?! この素朴そぼくな感じが何とも可愛いぞ?!

 自分でも吹き出してしまいそうなほど、ガロテはデレデレと甘い声でヒラソルに答える。

「僕はデアリバ男爵家の1人息子なので… 婿養子むこようしが必要なのです… ええっと、それで… あの…… ガ… ガロテ様が良ければ… 僕… 僕の… お婿むこさんになってくれませんか?!」
 そこまで言い終えると、ヒラソルはキュッ… と大きな瞳を閉じた。

「ヒラソルはオレに求婚しているのか?」
 なんとまぁ… これは驚いたな?!

「僕… 僕から求婚するのは恥ずかしいことだと… わかっています! でも僕は、花婿はなむこをさがして田舎から、王都へ出て来たので… 何としても、結婚相手が欲しくて!」
 羞恥しゅうちでブルブルと肩を震わせながら、弁解するヒラソル。


 そんなヒラソルを見つめるうちに、ガロテから笑みがこぼれる。






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