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7話 虚脱
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カチッ… カチッ… と遠くで金属がこすれる音がする。
暗い路地裏に座り込むヒラソルの耳にまで届いた。
騎士たちが歩くたびに放つ、剣が剣帯の金具とこすれ合う音だ。
「ああ…」
いつまでもこんな場所に座り込んでいたら、いけないなぁ…? そろそろ宿に帰ろう… 叔父様も心配するだろうし…?
カチッ… カチッ… と騎士が歩く音とともに… フワリ… とヒラソルが座りこむ物陰まで、発情したアルファのフェロモンがただよって来た。
凱旋した討伐隊の騎士たちにくっ付いている、発情したオメガたちの誘惑フェロモンに刺激されたのだろう。
恐らくヒラソルと同じように、人前で発情するような事態になるのを避けたくて、逃げ出してきたのだ。
「……あっ?!」
近くにアルファの騎士がいる…? 早く移動しないと… また発情してしまうよぉ…!
でも、その前に… 汚れた手と性器を清潔にしないとね。
ゴソゴソとハンカチを取り出そうと、ポケットの中に手を突っこむが… 貧乏男爵家の令息ヒラソルに、専属従者などはいないため、自分で用意したハンカチを、机の上に置いてきたことを思い出す。
「忘れた… あ~… 困ったな、どうしよう?」
そう思うのに、ヒラソルは自慰の後の倦怠感と、精神的にひどく落ち込んでいたせいで…
ハァ―――ッ… と大きなため息をつき、結局、何も行動に移さずぼんやりと座っていた。
カチッ… カチッ… と騎士が歩く音が、ヒラソルのすぐ近くまで来て、唐突にその音が止んだ。
アルファのフェロモンだけが、ヒラソルが座り込む物陰にただよってくる。
「……っ?!」
あっ… マズイ! もしかして僕のフェロモンを感じ取ったアルファが、僕がここにいることに気づいて…?!
ヒラソルはこの時になって初めて、自分が発情した時にオメガの誘惑フェロモンを、大量に放っていたことに気づいた。
ふたたび、カチッ… カチッ… と剣がこすれる音とともに、あらあらしい足音が聞こえ… 自分の間近まで、誰かがせまって来る気配を感じる。
「……っ」
ああ、どうしよう?!
あわててヒラソルは自分の性器を隠そうと、下着と下衣を引きあげようとするが… 手がブルブルと震えてしまい、途中までしかあげられない。
大きな騎士用のブーツをはいた足が、目の前で止まる。
「……っ」
ガタガタと恐怖で震えながら、ヒラソルは顔を上げた。
暗い路地裏に座り込むヒラソルの耳にまで届いた。
騎士たちが歩くたびに放つ、剣が剣帯の金具とこすれ合う音だ。
「ああ…」
いつまでもこんな場所に座り込んでいたら、いけないなぁ…? そろそろ宿に帰ろう… 叔父様も心配するだろうし…?
カチッ… カチッ… と騎士が歩く音とともに… フワリ… とヒラソルが座りこむ物陰まで、発情したアルファのフェロモンがただよって来た。
凱旋した討伐隊の騎士たちにくっ付いている、発情したオメガたちの誘惑フェロモンに刺激されたのだろう。
恐らくヒラソルと同じように、人前で発情するような事態になるのを避けたくて、逃げ出してきたのだ。
「……あっ?!」
近くにアルファの騎士がいる…? 早く移動しないと… また発情してしまうよぉ…!
でも、その前に… 汚れた手と性器を清潔にしないとね。
ゴソゴソとハンカチを取り出そうと、ポケットの中に手を突っこむが… 貧乏男爵家の令息ヒラソルに、専属従者などはいないため、自分で用意したハンカチを、机の上に置いてきたことを思い出す。
「忘れた… あ~… 困ったな、どうしよう?」
そう思うのに、ヒラソルは自慰の後の倦怠感と、精神的にひどく落ち込んでいたせいで…
ハァ―――ッ… と大きなため息をつき、結局、何も行動に移さずぼんやりと座っていた。
カチッ… カチッ… と騎士が歩く音が、ヒラソルのすぐ近くまで来て、唐突にその音が止んだ。
アルファのフェロモンだけが、ヒラソルが座り込む物陰にただよってくる。
「……っ?!」
あっ… マズイ! もしかして僕のフェロモンを感じ取ったアルファが、僕がここにいることに気づいて…?!
ヒラソルはこの時になって初めて、自分が発情した時にオメガの誘惑フェロモンを、大量に放っていたことに気づいた。
ふたたび、カチッ… カチッ… と剣がこすれる音とともに、あらあらしい足音が聞こえ… 自分の間近まで、誰かがせまって来る気配を感じる。
「……っ」
ああ、どうしよう?!
あわててヒラソルは自分の性器を隠そうと、下着と下衣を引きあげようとするが… 手がブルブルと震えてしまい、途中までしかあげられない。
大きな騎士用のブーツをはいた足が、目の前で止まる。
「……っ」
ガタガタと恐怖で震えながら、ヒラソルは顔を上げた。
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