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番外編 ~悪夢の世界で…
132話 再会
しおりを挟む王宮にある国王専用の応接間で、国王夫妻とエンペサル侯爵夫妻がひっそりと内々に対面した。
エンペサル侯爵夫人を義理の兄弟となる、王妃カナルに合わせるというのが、表向きの理由だったが…
実際はもっと不思議で神秘的な理由からだった。
王妃カナルが兄のエンペサル侯爵エレヒルの顔を見て、開口一番に言い放つ。
「あ?! エレヒル兄上は “夜の精霊”に何をお願いしたのですか?! 子どもを楽しませるための、おとぎ話だと… 現実主義の兄上は、精霊伝説を信じてはいないと思っていたのですが…?!」
つややかな漆黒の黒髪を項で1つに結び、黒に近い濃紺の瞳をキラキラとさせて…
王妃カナルは興味津々で、兄エレヒルの顔をジッ… と見つめる。
「そうか、エレヒルも精霊の加護を受けたか!」
カナルの隣席で国王ボルカンが、腕の中のビエント王子から視線を上げてカラカラと笑った。
「これはですね、陛下… 王妃様…」
元気そうな弟カナルの顔を見て、ニコニコと微笑んでいた兄エレヒルは… 急に渋い顔になり、ごにょごにょと、口ごもってしまう。
以前は灰色だったエレヒルの瞳の色が… 右側だけカナルと同じ、濃紺の瞳へと変わっていたからだ。
湖で悪夢を見た夜、エレヒルの瞳の色は変わった。
ジュピアを番にした翌朝… 侯爵夫人として、ジュピアの受け入れ準備をしろと執事に指示を出そうとエレヒルの私室へ呼び寄せると…
『旦… 旦那様! 右目をどうされたのですか?! まるでカナル様のような瞳の色に変わってしまって… もしや悪魔に憑りつかれているのでは…?! 何て、恐ろしい!! 今すぐ神官を呼び、悪魔祓いをしてもらいましょう!!』
『何?! 私の右目がどうしたって?!』
怯えた顔で執事に言われるまで、エレヒルは自分の瞳の色が変わったことに、まったく気づかなかった。
『ええぇ~?! エレヒル様の瞳は元から別々の色だったのではないのですか?! 僕はとても珍しい瞳だと思ってはいましたが… でも、左側の灰色の瞳は、優しくて暖かみがあって素敵だし… 右側の濃紺の瞳は、神秘的ですごく格好良いなぁ~と… 見惚れていたから…』
『…そうか?』
ジュピアの愛情深い感想を聞き、デレデレと顔をゆるませたエレヒルは、変わってしまった濃紺の瞳を、この色も悪くないな! と密かに気に入った。
国王夫妻の前で、ヒソヒソと新妻ジュピアはエレヒルに囁いた。
「さぁ旦那様、恥かしがらないで! 湖で見た悪夢の件を王妃様にご相談するのでしょう?」
隣席から愛らしくニコニコと笑いながら、ジュピアはエレヒルの膝を机の下で撫でた。
「うむ! まぁ… そうだな!」
エレヒルの顔がジュピアを見て、一瞬デレェ~… となったが、すぐにゴホンッ… ゴホンッ… と咳ばらいをして、いつものキリッ… とした顔に戻す。
そんな新婚ホヤホヤのエンペサル侯爵夫妻のやり取りを見て、国王夫妻はこっそり目を合わせ、忍び笑いをもらした。
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今回の名前はスペイン語にお世話になりました。カナル→運河、国王ボルカン→火山、姉エリダ→傷、元夫フィエブレ→熱、兄エレヒル→選ぶ、ルイナス公爵→遺跡、宰相パラグアス→傘、正妃ディアレア→下痢、補佐官ベンタナ→窓、叔父インセンディオ→火事、 ○ ○ やっぱり外国語の響きは面白いですね( ´∀` )
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