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番外編 ~悪夢の世界で…

125話 湖のほとりで2

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 すっかり日が落ちた暗い森の中を、エレヒルは危険なほど早く馬を走らせ、湖へと向かった。

<馬を降りてフィエブレの後を追い、茂みを突っ切っていては、絶対に間に合わない!!>

 少し遠回りであっても、道沿いに馬を全速力で走らせ、湖へ向かった方が先回りが出来るのではないかと判断し、エレヒルは茂みを迂回うかいする選択をしたのだ。
 
<急げ!! 急げ!! 急げ―――っ!! ジュピアの元に!! フィエブレよりも早く―――っ!!>
 子どもの頃から森のことを良く知るエレヒルだからこそ、出来ることである。

 騎士団本部からエレヒルと一緒に、フィエブレの追跡に参加したアリバや他の騎士たちは…
 視界の悪い真っ暗な森の中ではあまりにも危険過ぎて、狂ったように速度を上げて馬を走らせるエレヒルの後に、付いて来れなかった。




 ようやく暗い森の間から湖が現われたが、馬の限界が近づき速度が落ち始める。

「頼む、もう少しだ!! もう少しだけ耐えて、走ってくれ!!」
 馬を走らせるエレヒルの耳に、怒鳴り声が届いた。 


「この恥知らずが―――っ!!」
 ボスケ隊の騎士が怒鳴りながら、フィエブレに斬りかかって行く。

「一番最初に逃げ出した腰抜けのくせに、大口を叩くな!!」
 自分よりも体格的に劣る、ボスケ隊の騎士の一撃を難無く払い除け、フィエブレは下段から斬り上げた。

 フィエブレの反撃を受け止めた騎士の剣が、一瞬跳ね上がったすきを狙い、腹を素早く突く。

 日が暮れていても、雲の無い夜空の明るい月明かりのおかげで、エレヒルにも薄っすらとボスケ隊の騎士がフィエブレに倒されるのが見えた。

<クソッ!! クソ―――ッ!! フィエブレ―――ッ!!!>
 容赦なくフィエブレに倒される騎士が、エレヒルにも見えるのに…
 まだ遠くて助けられない。

 悔しさでエレヒルは、ギリギリと歯ぎしりをした。


 騎士を倒したフィエブレは向きを変えて、速足で歩きだす。

 その先には…
 ヨロヨロとふらつきながら、懸命に逃げるジュピアの姿があった。

<頑張れジュピア!! もう少しだ、頑張れジュピア!! ジュピア!!>
 
 走る馬に負担をかけないよう…
 腰を上げて馬の背から尻を浮かせた状態のまま、あぶみに掛けた足だけでバランスを取り、エレヒルは腰に下げた剣を抜く。

<もう少し!! もう少しでフィエブレに届く!! もう少しだ!!!>

 ついにジュピアがフィエブレに捕まり、引き倒されて足で踏みつけられた。

<許さない!! 許さないぞ、フィエブレ―――ッ!!!>



 フィエブレは剣を両手で掴み、ジュピアの恐怖を煽るように胸の上で垂直になるよう構える。






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