側妃候補は精霊つきオメガ

金剛@キット

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番外編 ~悪夢の世界で…

103話 深夜の新妻 エレヒルside

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 エンペサル侯爵邸の執務室で、深夜になってもまだ、エレヒルが騎士団の帳簿を調べ続けていると、廊下側から扉を叩く音が室内に響く。

「・・・・・・」
 エレヒルが帳簿から視線を上げて扉を見ると…

 扉が開き、サラサラとした茶色の髪と、アンティークの工芸品のような、深みのある金色の瞳を持つ、エレヒルの新妻ジュピアが顔を見せた。


「旦那様、遅くまで大変ですね… お疲れではないですか? お茶を用意したので、一緒に飲みましょう?」

 今朝、エンペサル侯爵夫人になったばかりのジュピアが、おずおずと遠慮しながらティーセットを持って、執務室へ入って来た。


「何だジュピア! まだ眠っていなかったのか?!」
 ずっと帳簿を睨み続けたせいで、眉間にシワを寄せていたエレヒルの顔に、明るい笑みがあふれる。

「はい! 何だか一人だと、ベッドがとても大きく感じてしまい… 落ち着かなくて」
 仕事の邪魔ではないか? と心配しながら執務室を訪ねたジュピアは、エレヒルの嬉しそうな姿を見て…
 不安そうだった顔に、パァ~ッ… と花が咲いたような笑顔が浮かぶ。
 
「ふふふっ… ジュピアは私が隣にいないと、寂しくて眠れないと言いたいのだな?! 気が利かなくて悪かった!」
 急いでエレヒルは執務机から立ち上がり…
 ソファセットのローテーブルに、ティーセットを順番に並べるジュピアの背後に立つ。

「あの夜から、ずっと一緒に眠っているから… 旦那様がお忙しいのは分かっているのですが… すみません! ああ、もう! 子供っぽくて恥ずかしいですっ!」
 可愛らしくポッ… と頬を染めながら、ジュピアは手際良くカップにお茶を注いで、ポットをトレイに戻す。


「いや! 良く考えてみれば… 今夜は結婚初夜なのに、妻を一人にして執務室に籠って仕事をしている私がいけないのだ! なんて無粋な夫なのだろうな… ジュピアがここに来るまで、すっかり頭から抜け落ちていたよ!」 

 ジュピアの細い腰を引き寄せギュッ… と抱きしめ…
 エレヒルだけが感知できる、芳しい香りを放つ項にチュッとキスをして、甘えるように鼻をこすりつけた。


「あっ…! だめっ、旦那様! また発情しちゃうよぉ!」
 オメガの性感帯である項に愛撫をされ、ジュピアは小さな声で甘い抗議をする。

「いくらでも発情すれば良いさ! それだけ私はジュピアを可愛がれるからな?」
 キュッ… とジュピアの項を噛んで、さらにエレヒルは愛撫の手を強める。

「あっんんっ! ダメだよ旦那様ぁ… ああっ…んん…っ! せっかく淹れた美味しいお茶が冷めてしまうから~! ねぇ、一緒に飲みましょう? このお茶すごく、すごく! 高いお茶なんだからぁ~! あ… あんっ…だめだってばぁ~! 旦那さまったらぁ~!!」

 ジュピアは華奢な手を伸ばして、項に噛みついた夫の頬をなでなでと撫でた。

「んん? そうか? 仕方ないなぁ… 奥様の命令には逆らえないからなぁ…」
 エレヒルは噛み痕がいくつも残る、スベスベの項を放し、もう一度チュッ… とキスを落とすと…

「んんんっ…!」
 ブルッ… とジュピアが身体を震わせた。

「ジュピア、本当に止めても良かったのか?」
 ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべ、エレヒルはジュピアの耳に囁く。

「お… お茶を飲んでから、もう一度今のをお願いします、旦那様!」


「ふふふっ… なら、早くお茶を飲み終えないとな!」 

 素直に欲望を口に出すジュピアが…
 エレヒルは可愛くて仕方がなかった。



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今回の名前はスペイン語にお世話になりました。カナル→運河、国王ボルカン→火山、姉エリダ→傷、元夫フィエブレ→熱、兄エレヒル→選ぶ、ルイナス公爵→遺跡、宰相パラグアス→傘、正妃ディアレア→下痢、補佐官ベンタナ→窓、叔父インセンディオ→火事、 ○ ○ やっぱり外国語の響きは面白いですね( ´∀` )
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