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番外編 ~悪夢の世界で…
101話 騎士団長フィエブレ3 エレヒルside
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従者が淹れたお茶を飲み終え、エレヒルはティーカップを受け皿に載せてローテーブルの上にカチッ… と陶器が擦れる音を立てて戻すと、チラリッ… と向かい側に座るフィエブレの顔を見た。
執務室へ入った時よりも、お茶を飲んで少しは落ち着きを取り戻したのか…
フィエブレもお茶を飲み終えたティーカップを、ローテーブルに置いた受け皿の上へ静かに載せた。
「私の話というのは、騎士団で雇っている下働きのジュピアのことだ」
「ジュピア? あの、男爵家の息子のことなら… 借金の返済のためにどうしても雇ってやって欲しいと泣きつかれて仕方なく雇ったが…」
フィエブレはどことなく気まずそうにエレヒルから視線を逸らした。
<気まずくて当然だな! 貴族の子供を雇って、その子が成人したら騎士たちの性欲を満たすために使おうなどと、ゲスな考えが有ったのだから! カナルからこの話を聞いて即刻、対処しなかった私にも非はあるが…>
フィエブレの従者イロに、さりげなくエレヒルがその話を知っているかとたずねると、顔を曇らせて答えた。
『フィエブレ様は焦っておられるのです… 実力主義の騎士たちの中には新任の騎士団長を未だに認めていない者が多く、命令に背きはしないけれど、嫌われる一方で、苦肉の策であのようにオメガの子を雇って…』
自分を良く思わない、部下の騎士たちに対して、フィエブレはオメガのジュピアを使い、媚びを売ろうとしていたのだ。
『アルファの騎士で未婚の者たちは、みな性欲処理に娼館を使いますが、病気の無い安全な娼館は、金がかかりますから』
ジュピアを娶る前は、エレヒルも娼館の世話になっていたから、騎士たちの事情は良く理解できる。
<だがそれとこれとは別だ!!>
要は娼婦を雇えば良いのだが、ジュピアと娼婦では払う報酬のケタが違うから、安い下働きの少年をフィエブレは雇い入れることにしたのだろう。
「あの子は私の妻にしたから、ジュピアに関しての雇用契約書は私が保管する、お前もそのつもりでいてくれ」
視線を逸らしたフィエブレから、一瞬も目を離さずエレヒルは淡々と命令した。
騎士団の経費はエンペサル侯爵家から出ているのだから、その辺は侯爵のエレヒルが自由に出来る。
「何だって?! あのガキを妻だと?! 妻と言ったのか?! 冗談だろう?!」
ずっと視線を逸らしていたフィエブレは、ギョッ… と眼を剥き、エレヒルをマジマジと見つめた。
「いや、本当だ! 数日前に発情したあの子と偶然出会って、私の番にした… 今日の朝、神殿で婚姻の儀式も行った」
「なっ!! あんな下働きの子供を…っ?! お前は気は確かなのか?! あんな借金まみれのガキ… たかが男爵家の子では、何の利益も無いでは無いか!!」
まるで…
この世で最も愚かな人間を見たと言いたげに、フィエブレはエレヒルに暴言を吐いた。
「口を慎めフィエブレ! ジュピアはすでにエンペサル侯爵夫人だぞ?! 私の妻への無礼な口の利き方は、今後一切許さない!!」
それまで幼馴染だからと、フィエブレの無礼を黙って聞き流して来たエレヒルは、エンペサル侯爵の威厳を持って、目の前の元友人を威圧し怒鳴りつけた。
「なっ…!」
成人してからエレヒルに、一度も威嚇されたことなど無かったフィエブレは、言葉を失い顔色を変える。
自分の主人であっても、年下の弟弟子だと軽く見て、エレヒルの温情にフィエブレは図々しく甘えていたのだ。
いくら親しい仲でも、越えてはいけない主従の境界を、子供の頃からの関係を持ち出し、フィエブレはすでに越えていた。
「・・・・・・」
<そしてもう一つ、フィエブレを問い詰めたいことがあるが… それは調査をしてからにしよう!>
これまでとは違って容赦のない鋭い視線で、エレヒルはフィエブレを睨んだ。
執務室へ入った時よりも、お茶を飲んで少しは落ち着きを取り戻したのか…
フィエブレもお茶を飲み終えたティーカップを、ローテーブルに置いた受け皿の上へ静かに載せた。
「私の話というのは、騎士団で雇っている下働きのジュピアのことだ」
「ジュピア? あの、男爵家の息子のことなら… 借金の返済のためにどうしても雇ってやって欲しいと泣きつかれて仕方なく雇ったが…」
フィエブレはどことなく気まずそうにエレヒルから視線を逸らした。
<気まずくて当然だな! 貴族の子供を雇って、その子が成人したら騎士たちの性欲を満たすために使おうなどと、ゲスな考えが有ったのだから! カナルからこの話を聞いて即刻、対処しなかった私にも非はあるが…>
フィエブレの従者イロに、さりげなくエレヒルがその話を知っているかとたずねると、顔を曇らせて答えた。
『フィエブレ様は焦っておられるのです… 実力主義の騎士たちの中には新任の騎士団長を未だに認めていない者が多く、命令に背きはしないけれど、嫌われる一方で、苦肉の策であのようにオメガの子を雇って…』
自分を良く思わない、部下の騎士たちに対して、フィエブレはオメガのジュピアを使い、媚びを売ろうとしていたのだ。
『アルファの騎士で未婚の者たちは、みな性欲処理に娼館を使いますが、病気の無い安全な娼館は、金がかかりますから』
ジュピアを娶る前は、エレヒルも娼館の世話になっていたから、騎士たちの事情は良く理解できる。
<だがそれとこれとは別だ!!>
要は娼婦を雇えば良いのだが、ジュピアと娼婦では払う報酬のケタが違うから、安い下働きの少年をフィエブレは雇い入れることにしたのだろう。
「あの子は私の妻にしたから、ジュピアに関しての雇用契約書は私が保管する、お前もそのつもりでいてくれ」
視線を逸らしたフィエブレから、一瞬も目を離さずエレヒルは淡々と命令した。
騎士団の経費はエンペサル侯爵家から出ているのだから、その辺は侯爵のエレヒルが自由に出来る。
「何だって?! あのガキを妻だと?! 妻と言ったのか?! 冗談だろう?!」
ずっと視線を逸らしていたフィエブレは、ギョッ… と眼を剥き、エレヒルをマジマジと見つめた。
「いや、本当だ! 数日前に発情したあの子と偶然出会って、私の番にした… 今日の朝、神殿で婚姻の儀式も行った」
「なっ!! あんな下働きの子供を…っ?! お前は気は確かなのか?! あんな借金まみれのガキ… たかが男爵家の子では、何の利益も無いでは無いか!!」
まるで…
この世で最も愚かな人間を見たと言いたげに、フィエブレはエレヒルに暴言を吐いた。
「口を慎めフィエブレ! ジュピアはすでにエンペサル侯爵夫人だぞ?! 私の妻への無礼な口の利き方は、今後一切許さない!!」
それまで幼馴染だからと、フィエブレの無礼を黙って聞き流して来たエレヒルは、エンペサル侯爵の威厳を持って、目の前の元友人を威圧し怒鳴りつけた。
「なっ…!」
成人してからエレヒルに、一度も威嚇されたことなど無かったフィエブレは、言葉を失い顔色を変える。
自分の主人であっても、年下の弟弟子だと軽く見て、エレヒルの温情にフィエブレは図々しく甘えていたのだ。
いくら親しい仲でも、越えてはいけない主従の境界を、子供の頃からの関係を持ち出し、フィエブレはすでに越えていた。
「・・・・・・」
<そしてもう一つ、フィエブレを問い詰めたいことがあるが… それは調査をしてからにしよう!>
これまでとは違って容赦のない鋭い視線で、エレヒルはフィエブレを睨んだ。
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