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番外編 ~悪夢の世界で…
98話 ジュピア2 ジュピアside
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この世で最も美しい人は誰? と、誰かに質問されたら迷わずジュピアは、勿論カナル様です! と胸を張って答えられるほど…
初めて会った時、ジュピアはカナルの美貌に興奮を覚える。
騎士団長の奥方カナルは、月光のような淡い金の髪に、優しい灰色の瞳をした繊細な美しさを持つ、オメガの男性だった。
<今まで僕は、こんなに綺麗な人を見たことがないよ!! おなじオメガでも僕の平凡な茶色の髪に、くすんだ金の瞳とは大違いだよね!! やっぱり僕はベータなのかも?>
『ジュピア、君はオメガなんだって?』
『はい、カナル様』
『そうか… 発情期はどうしているの?』
『僕はまだ経験したことが無いので』
『おやおや… でも、身体が小さくて痩せているから、成長が遅れているだけかも知れないね』
『このまま発情が来なければ良いと、願っているのですが』
『うん… でもね、僕の抑制剤をあげるから、もしもの時は使うようにね? その時は遠慮なく言うのだよ? 発情期は自分では制御できないから、騎士団の騎士はアルファばかりだし、本当にそうなったらとても危険なんだ、良いねジュピア?』
『でも、良いのですか? 抑制剤はとても、高価だと聞いております! そのようなお薬を、僕が頂いて本当によろしいのですか?』
『君は僕の大切な友人だからね、こんな時は助け合わないと!』
『ありがとうございます!! カナル様!! 本当にありがとうございます!!』
<わぁっ! カナル様は容姿だけでなく、心も本当に優しくて美しい人だ!! このお方に仕えられて、僕は本当に嬉しいよ!!>
カナルが妊娠したと分かった時は、ジュピアも飛び上がって喜び、一緒に嬉し涙を流した。
<なのに… カナル様は流産してしまった! もっと僕がカナル様のことを見ていれば!! もっと気遣っていれば!! カナル様のためにもっと出来ることが、たくさんあったはずなのに! 僕が目を離した隙に、たった一人で死んでしまった! >
悪いことは続けて来るもので…
ジュピアの発情期が始まってしまった。
カナルに貰った抑制剤で押さえながら、最初の時は使用人頭に助けてもらい、騎士たちとあまり接点の無い仕事をすることで、何とかしのいだ。
だが、カナルに貰った抑制剤を、最初の発情期で全部使い切ってしまい、高価な抑制剤を買うことも出来ず…
二度目の発情期をジュピアは誤魔化すことが出来なくなってしまった。
(下働きの給金は、叔父の借金に当てられているため、ジュピアの手には入らない)
<抑制剤を使わないと、発情期がこんなに苦しいなんて! 楽にしてくれるなら、誰でも良いと縋ってしまいそうな自分が嫌だ!! カナル様が僕を大切な友人と言ってくれたのに… 僕はそんな尻軽になるぐらいなら、死んだ方がマシだよ! カナル様が恥かしいと思うような友人にはなりたくない!!>
自分で強い欲望を何とかしようと、ジュピアは優しいカナルが命を捨てた湖へ来たのだ。
<カナル様!! どうか僕に発情期を乗り切る力を下さい! カナル様! カナル様―――ッ!!>
何度も、何度も…
ジュピアはカナルに祈りながら、自慰をして発情の熱を開放した。
「ジュピア?!」
「・・・っ?!」
名前を呼ばれてジュピアが顔を上げると、そこには…
エンペサル侯爵エレヒルが立っていた。
初めて会った時、ジュピアはカナルの美貌に興奮を覚える。
騎士団長の奥方カナルは、月光のような淡い金の髪に、優しい灰色の瞳をした繊細な美しさを持つ、オメガの男性だった。
<今まで僕は、こんなに綺麗な人を見たことがないよ!! おなじオメガでも僕の平凡な茶色の髪に、くすんだ金の瞳とは大違いだよね!! やっぱり僕はベータなのかも?>
『ジュピア、君はオメガなんだって?』
『はい、カナル様』
『そうか… 発情期はどうしているの?』
『僕はまだ経験したことが無いので』
『おやおや… でも、身体が小さくて痩せているから、成長が遅れているだけかも知れないね』
『このまま発情が来なければ良いと、願っているのですが』
『うん… でもね、僕の抑制剤をあげるから、もしもの時は使うようにね? その時は遠慮なく言うのだよ? 発情期は自分では制御できないから、騎士団の騎士はアルファばかりだし、本当にそうなったらとても危険なんだ、良いねジュピア?』
『でも、良いのですか? 抑制剤はとても、高価だと聞いております! そのようなお薬を、僕が頂いて本当によろしいのですか?』
『君は僕の大切な友人だからね、こんな時は助け合わないと!』
『ありがとうございます!! カナル様!! 本当にありがとうございます!!』
<わぁっ! カナル様は容姿だけでなく、心も本当に優しくて美しい人だ!! このお方に仕えられて、僕は本当に嬉しいよ!!>
カナルが妊娠したと分かった時は、ジュピアも飛び上がって喜び、一緒に嬉し涙を流した。
<なのに… カナル様は流産してしまった! もっと僕がカナル様のことを見ていれば!! もっと気遣っていれば!! カナル様のためにもっと出来ることが、たくさんあったはずなのに! 僕が目を離した隙に、たった一人で死んでしまった! >
悪いことは続けて来るもので…
ジュピアの発情期が始まってしまった。
カナルに貰った抑制剤で押さえながら、最初の時は使用人頭に助けてもらい、騎士たちとあまり接点の無い仕事をすることで、何とかしのいだ。
だが、カナルに貰った抑制剤を、最初の発情期で全部使い切ってしまい、高価な抑制剤を買うことも出来ず…
二度目の発情期をジュピアは誤魔化すことが出来なくなってしまった。
(下働きの給金は、叔父の借金に当てられているため、ジュピアの手には入らない)
<抑制剤を使わないと、発情期がこんなに苦しいなんて! 楽にしてくれるなら、誰でも良いと縋ってしまいそうな自分が嫌だ!! カナル様が僕を大切な友人と言ってくれたのに… 僕はそんな尻軽になるぐらいなら、死んだ方がマシだよ! カナル様が恥かしいと思うような友人にはなりたくない!!>
自分で強い欲望を何とかしようと、ジュピアは優しいカナルが命を捨てた湖へ来たのだ。
<カナル様!! どうか僕に発情期を乗り切る力を下さい! カナル様! カナル様―――ッ!!>
何度も、何度も…
ジュピアはカナルに祈りながら、自慰をして発情の熱を開放した。
「ジュピア?!」
「・・・っ?!」
名前を呼ばれてジュピアが顔を上げると、そこには…
エンペサル侯爵エレヒルが立っていた。
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